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旅立ち

旅立ちの準備ができた。

嵐の前の静けさを感じながら・・・。

歩きながらふと思う。

ギルドに行って仕事を受けた際、もし仮に自分以外が取っていたらどうしていたのだろうか。

本来の目的である俺を殺すことはできない・・・ということは、もう受注済だとか剥がし忘れだとかで断っていたのだろう。

そういうことが対応できるには、あの受付もしくはギルド関係者がグルになっていないとできない。


「あいつもグルか・・・最初から嵌められていたのか・・・」

淡い好意を持っていた気持ちもどこかに消え去り、落胆する。

どうせ少しばかりの金をもらい、バイトの気持ちでは図ったのだろう。真意がどうだとかということは、この際どうでもいい、とりあえずこの街のギルドには近寄れないということだけが明白なのである。


しばらく歩き、街に戻ってきた。

普段通りの態度で、普段通りに家に帰り、普段通りを装った。

自室で、旅のための支度をする。ランプ、オイル、着替え、石鹸、あるだけの通貨、食器、ナタ、長物のナイフ・・・・持っていくもので後悔してはならないが、持ち出し過ぎても移動に弊害を生じさせる。塩梅を見て考えなければならない。


「基本現地調達だな。街を転々とするか、はたまた違う街で定住するか・・・。」

そうボヤキながら身支度を整える。すると、今まで冷静をまがりなりにも固定させていた杭のような心のしびれが、ふとゆるんだのを感じた。

なぜ俺はこんな目に会っているのだ。ただ単に成人の儀で蟲使いと言われただけで、なぜ殺されなければならない。愛する両親、憎めない友達、お世話になった先生、愛着のある風土をなぜ捨てなければならない。俺が何をしたというのだ。わけのわからない小石につまずいたと思ったら、どうすることもできない奈落に突然落ちたようなものである。

ただただ漠然とした世の不条理を恨み、心を潰していく。

だが、何があろうとも、もう選択肢はないのである。今は逃げて生き延びるしかない。いつかの復讐のために、今は・・・。


「持っていくものは、こんなものか。」

おそらく足りないであろうが、できる限り持ってく荷物を厳選して、詰め込んだ。

真夜中の出発に向け、地図を広げ、行く先を考える。


この世界には、6つの大国が存在する。

中央に腐海と呼ばれる大森林を構え、その周囲にそれぞれ国が位置しており、

ここレアオ王国は、南東に位置する国である。

腐海から見て、南にはトート神を崇めるシェイド王国。ここは、黒魔導を生業とした国家である。

南西には、ハトホル神を崇めるインリークオ王国。同様に魔導国家であるが、シェイド王国とは真逆の白魔道を修めている。この2国はいざこざが絶えず、入国には厳しい審査がある。

東には、アンク王国。ここはネイト神を崇めており、多くの剛の者と呼ばれる戦士を有している。国としては軍事政権であるが、安定が続いており、昨今人口の増加・経済の発展が著しい。

北にはプタハ神を崇めるペトタヘフ王国がある。ここは製鉄業が盛んであり、技術立国であることから、需要と供給上アンク王国との国交が盛んである。

最後に、北西に存在するエムデン王国が存在する。ここは、アメン神を崇めていること以外情報が無い。基本的には教義として、他国との積極的な関わりを拒否しており、謎が多い国である。

これら6つの大国の他、辺境には有象無象の小規模国家等もあるが、現れては消えを繰り返すため、情報はほぼ無い。

こういった状況の中、いざこざを避けたいため、入国の厳しいシェイド王国に逃げることは選択肢から消す。となると、アンク王国を目指すのが、安全ではないだろうか。


「アンク王国を目指すか。その後、今後の行末を考えよう。同じようにギルドでの仕事をこなすか、はたまた違う何かか・・・?」


そうこう考えているうち、日が消え、黒の帳をおろしたかのように、あたり一面が包まれていた。

もう夜も更けた。そろそろ頃合いか。

月の大部分が雲に覆われ、明かりを閉ざし、それはまるで自身の逃走を助けてくれる準備ができたと無言で訴えているかのようである。


「さあ行こう。」

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