第三話・・・すごいですね!
空が赤色に染まっている
山の間から太陽の光があふれ出てくる
ミアより早く起きたみたいだ
昨日店を開いてある程度の収益は得た
今日は依頼を済ませるとするか
「ミア、朝だぞ、起きろー」
「んんー」
「ほら!体起こして、支度するぞ!」
「まだ早いですしぃーもっと寝かして下さぁーぃ」
そう言ってミアは毛布に潜り込む
「俺が五つ数える間に起きなければ...強硬策にでる」
「好きにしてください...私は寝ます...」
「一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、よし」
無理やり毛布を剥ぐ
「やめてくださいー!」
「今日は依頼を済ませるぞ」
「や、やらないとだめですか...?」
上目で見ないでくれ...
「やらなきゃいけないんだ」
「うぅ...」
ミアはしぶしぶ準備を始め
弓を持って弦の調子を確かめる
予想以上に弓に慣れている
「誰に習ったんだ?弓の扱いは」
「父です、小さいころから教えてもらってました」
「お父さんは何してたんだ?」
「森番です。村の中で一番弓が上手いっていわれてましたね」
そういうわけだったのか
弓の使い方は俺が教えるまでもなさそうだ
教えるのは魔物の狩り方だけだな
ここからウィルトシュヴィーンのいる森まで馬で行けばすぐだ
「ミア、馬は乗ったことないよな」
「はい、森に居ると乗る必要がないので」
「俺の後ろにつかまって乗れ、揺れるぞ」
「あっ、うーん」
登るのに苦戦している
初めてなら無理もないか
「ほら、持ち上げてやる」
軽いな、鞍によじ登ってストンと座る
「あ、ありがとうございます...」
「しっかりつかまれ!行くぞ!」
トーストローザヴァエド
魔物がよく出現する森だ
ウィルトシュヴィーンも出るだろう
「降りれるか?」
「揺れてたのでクラクラします...」
「足反対側にかけられるか?」
「は、はい...ん...ひゃ!」
鞍に引っかかって馬から落ちる
「おっと!大丈夫か?」
なんとかキャッチしたが、危なっかしいな
「すみません...ありがとうございます...」
「酔いは醒めたか?」
「はい、なんとか」
少しふらつきながら答えた
「狩る前の準備体操だ、あの木、撃ってみろ」
ミアは無言で弓を構え、放った
矢は見事に木に刺さった
「なかなかだな!」
「いや...それほどでも...」
「よし!じゃあ行くか、ついてこい」
「...はい」
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「ミア、見えるか?あれだ」
トーストローザヴァエドの盛り上がった背が見える
体長は...五メートルくらいか...
まるで山が動いているようだ
「あ...あれを討伐するんですか?」
「安心しろ、その弓なら撃ちぬける」
ミアは弓を構える
「大丈夫なんですか...?」
「大丈夫だ、自信を持て」
ミアは矢を放った
緊張のせいか矢は大きく外れた
『フゴッフゴッ』
気づかれたか
「あ...アーベルさん、どうすれば...?」
物凄い勢いで突進してきた
ここは私の剣で仕留めるしかなさそうだ
「ミア!伏せてろ!」
剣を抜き突進してくる魔物に振りかざす
その一撃で五メートルもの巨体が倒れた
「すごいですね!」
「ミア、大丈夫だったか?」
「はい、大丈夫です。すみません、私があそこで仕留めていれば...」
申し訳なさそうにこちらを見る
「全く問題ない、また練習してこうならないようにすればいいさ」
「緊張してしまって...」
「また依頼を受けてくる、何回か狩っていれば緊張もしなくなる」
「またですか...それで、その魔物はどうするんですか?」
「解体して持ち帰る。見ない方がいいだろう。後ろを向いていた方がいい」
「えぇ...はい...」
ミアは後ろを向く、さて、始めるか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うぅ...」
「ほら、ここに足かけて」
相変わらず馬酔いが激しいな
「今日のご飯は何ですか?」
「今日の晩ご飯はパンとトーストローザヴァエドの肉、肉の味付けは...胡椒もあればいいんだが馬鹿みたいに高いからな、塩だけだ」
「お肉ですか!いいですね!」
「肉には目がないな、ミアは」
「はい!だって美味しいんですもん!昨日の牛肉が美味しかったので今日の肉も美味しいはずです!」
もう何を言ってるのか分からないな...
薪で焼かれている肉をミアは目を輝かせながら見つめる
「まだ焼けないんですか?」
「そう焦るな、ほら、焼けたぞ」
「わぁ!いただきまーす!」
ミアは物凄い勢いで肉に噛り付く
「どうだ?美味いか?」
「最っ高です!塩だけの素朴な味付けが肉の味を引き立ててます!それに...」
ミアの話はそれから延々と続いた
「こんなこと聞いていいのかと思いますが、アーベルさんって昔何かあったんですか?その...いっつも鎧を着ている理由とかその剣とか」
唐突な質問だ、ここでなんと返すべきか
答えるか?断るか?
「あ...やっぱりいいです。ごめんなさい...」
「いや、話そう」
「あ、はい」
「この鎧を着る前の話だ。昔、邪龍討伐の依頼を受けたんだ、当時いた五人の仲間とな...俺達は邪龍のいる洞窟についた。龍は待っていた、龍族の知能は人族の何百倍もある。奴は俺達が来ることを分かっていたのだ。奴は黒い火を吹き仲間の一人を一瞬にして灰にしたんだ。そこから激戦が始まった。ふと周りを見たら戦っているのは俺だけになっていた。俺はもう体力の限界だった、奴も同じだったようだ。俺の渾身の一振りで倒れた。しかし、奴は自らの滅びと同時に俺を殺そうとした。火を吹かれたんだ、大やけどを負った。俺はなんとか街に帰って倒れた。そこから俺は治療を受けたらしい。起きた後、治癒術師に聞いたら『死体を復活させたみたいだ』なんて言われた。完全に治癒はできなかったらしく、俺は包帯まみれになった。包帯まみれの男が街を歩いてたら明らかに不気味だろ?鎧を着ていた方が自然だ。そこで俺は倒した龍を回収しに行ってその素材で鎧を作ってこの傷が治るまで脱がないことを決めたんだ」
「そんなことがあったんですね...」
ミアは静かにそう言った
昔のことを思い出すのは久しぶりだ
邪龍と戦った話は今まで誰にも話したことは無かった
辛い思い出だ
「この剣はな、邪龍と戦った後に手に入れたんだ。これは魔剣だ。邪龍の洞窟で見つけた、仲間の骨を拾いに行った時だ。拾い終わった後に洞窟に入ってみたんだ。魔剣は洞窟の奥に転がっていた。俺はただの剣だと思ってなんのためらいもなく拾った。その剣は触れた瞬間俺を呪ったんだ。この剣は血を吸う、俺の呪いはその剣で血を吸わなければ死ぬというものだ、その代わりこの剣は物凄い力を持っている。殺せない魔物はいないんじゃないか?この剣が折れれば俺も死ぬ。俺とこの剣は不離一体の関係だな」
ミアはしばらく黙り込んで
「すみません...こんな話をさせてしまって」
申し訳なさそうにそう言った
「問題ないさ、晩ご飯も食べたし、今日はもう寝ようか」
そう言って宿舎に向かおうとしたとき
ミアは俺の腕をつかんだ。そして隣に座るよう合図をする
「温もりを感じれば辛い気持ちは薄れると母が言ってました。鎧越しでも伝わるはずです」
そう言ってミアは寄り添ってきた
不思議だ...心が軽くなっていく
「ありがとう、ミア」
そうして一日はゆっくりと終わった




