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Re:start ーもう一つの世界で罪滅ぼしをー  作者: ちゅうりん
転生編
10/10

動き出した歯車

夢を見ていたんだと思う。 理解ができない内容の。 それでいてとても悲しい夢を。


黒髪ロング?の女の子、 俺よりもふた回り程度小さいだろうか。 その子が泣きながらも笑っていて、こちらに手を差し伸べている。 でもその手を握ってあげられないのだ。 握ろうと手を伸ばすとそれに合わせるかの如く、後ろに下がっていくのだ。

彼女は笑いながら最後にこう言った。

「私を見つけてね、主人様、いいえシオ。」


この言葉で目が覚めた。 そこには一度は見た天上が広がっていた。


「…俺の部屋か。 ん?」


目が覚めたとはいえ、まだ視界ははっきりしていない。 しかし左手に何か温かくて柔らかい何かが握られている。


「………あんたねぇ」


目を開けると先程荒野で戦っていた別嬪さんがいて、俺の左手はその子の胸に真っ直ぐ伸びていた。


「色々と二度目だn」


俺は不本意な形で再び夢の世界へと旅立った。






どの位時間が経っただろう。 俺は重たい体をベットから起こし、目を擦りながら酒場いっかいへと足を進めた。


「…なんであの子いたんだろう?」


なんて事を考えていると酒場に着いた。


「おっ! 起きたかおっぱい星人!」

「聞いたよ〜。 胸揉みしだいたってぇ?」

「暗そうな奴だと思ってたがやる事はやってんだなぁおっぱい星人!」


全く、ひどい言われようだ。 揉みしだいたのは確かだが、俺は作戦の一環で劣情で動いた訳では決してない。 少しはあったけど。 だって男だもん☆


「いや、あれは作戦で決していやらしい思いがあった訳では」


「言い訳なら本人にしてあげなさいな」


笑いながら女将さんに言われた。 女将さんとはここ一階こと酒場の女将さんだ。 いい顔立ちだが体のほうが大き… 昔は美人だったんだろう。 昔は。

それより本人? やっぱりここにいるのかと女将さんの首が指す方を向くと、機嫌悪そうにこちらを睨むあの子がいた。


「や、やぁ。 昨日ぶりだねぇ…」


自分でも酷い苦笑いだと感じるほどの苦笑いをしながら喋りかけた。


「おいおい、朝一おっぱい揉んだだろがよー」

「そうだぞおっぱい星人〜!」


周りうるせぇ!! 昼? 夕方?そんなの知らんが酒回りすぎだくそ親父ども! 折角隠蔽しようとしたのによ。


周りの煽りを聞き、さらに腹を立てたのかもうこちらには目すら合わせてくれなくなった。


仕方ないか。


「ちょっと失礼!」


俺は彼女の腕を掴むと、強引に自分の部屋まで連れて行った。


「ちょっ! どういうつもりよ!!」


部屋に入り腕の掴む力を緩めた直後、彼女は腕を振りほどきながらこう言った。


「本当に申し訳ない!」


俺は今まで生きてきた人生で最高の土下座をした。


「さっき酒場で言ったけど劣情とかで動いた訳じゃなくて作戦でやったことなんだ。 言い訳になってない事も分かってるけど自分の意思に反して行った事だとだけ分かって欲しい。」


「…知ってる。 セルジオ?から聞いた。」


「な、なら!」


ギロっと音が鳴るぐらいの迫力で睨んだ後、彼女は許すかと言わんばかりそっぽを向いた。


「許してもらえないみたいだねシオ。」


とても笑顔のセルジオがドアから部屋に入ってきた。

こいつ大事な時にどこ行ってやがった。 後で説教しなきゃ。


「…シオ? 調味料なのあんた?」


「ははは、よく言われる、よ」


え? なんで塩の存在を知ってる。 俺がしらないだけでこの世界にも塩は存在するのか? でもミサガ村での買い出しでそんな存在見たことも…

ミサガ村。 嫌なことを思い出してしまった。


「あぁ、名乗るのが遅れたわね。 私はセツナ」


「え、セ、セツナかぁ。 いい名前だね」


やべ、動揺がもろにでちまった。


「何がいい名前よ。 じゃあ用は済んだみたいだし帰るわ。 じゃあねおっぱい星人」


当てつけのようにドアを強く締め、セツナは何処かに行った。

それより、さっきの件は近々遠回しに聞いてみないとな。


そこで俺は体の違いに気づいた。 視力も元に戻っており、傷も完治していた。

きっとセルジオだろう。


「体、ありがとな。」


「? あぁ目の事か。 どう致しまして。」


目のことって事は体はセルジオじゃないってことか。 まさかって事はないだろうしな。


「疲れてるみたいだね。 下行くと多分絡まれるから僕ご飯持ってきてあげるよ。」


頼むと言うと笑顔見せ、セルジオは酒場に向かった。


昨日のこと、今日のことを思い出す。

まず切姫。 誰も使いこなせない理由が分かった。 これは危険だ。 瘴気に呑まれたことはまだ無いけど、呑まれたらどうなるか分からない。 早く使いこなせるようにならないと。

次に目だ。 セルジオの言う通り、諸刃の剣だ。 使えば強い、でも視力低下は思ってる以上に早くて、失明も頭に入れておかないと。 これの何もしてない状態からの限界の回数も計算しないと。

最後に夢に出てきた女の子だ。 主人様と呼んだのだ。 何故か近いようで近くない存在のような気がしてならない。 いつか会えるだろう。 きっと。 その時は手、握ってあげたいな。


そんな事を考えていると、下から近づく足音が聞こえてきた。 きっとセルジオだろう。 夢以外の件は飯を食いながらでもセルジオに聞いてみよう。

やる事は沢山ある。 そうだ、沢山あるのだ。

俺はこの世界で生きるのだ。 人をやめて人殺しになり、自殺して。 もう一つの世界で目覚めて再び人殺しになった。 悪人を裁くため命を奪い、罪滅ぼしをする。 この行為の何処にも正義は存在しない。 命を奪う行為は等しく皆悪なのだ。 正義というものは存在しない。 この世界は、いやあっちの世界もそうか。


〈世界は悪で溢れている〉




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これは罪を受け入れ、悪となって悪を裁く少年の物語。










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