序章-03 目覚めたら異世界
とりあえず一度切ります。
続きは明日の予定です。
「………て。」
「……お…て。」
「お!き!て!よ!」
ドンッ!グハッ!
はっ!お腹に猛烈な衝撃と痛みを感じて飛び起きた僕が最初に見たものは怒りながらこちらを睨んでるつもりみたいな表情の千嘉だった。
「あれ…ここは?」
「よくわかんない。ちかがおきたらみんなねててだれもおきてくれないし、ひまだったの。だからまちくたびれちゃっておねえちゃんをおこそうとおもっておなかたたいちゃった。ごめんなさい。」
「いや、うん。ちょっと驚いただけだから大丈夫だよ。それよりここどこだろう?兄さんはどこ?」
そこは僕たちが通ってる中学校の体育館ぐらいの広さがある石畳の床の部屋だった。地面にはよくわからない模様?みたいな物が描いてあり、さっきまでお店にいた人々があちらこちらに倒れていた。その中に兄さんが倒れてるのを見つけた瞬間、急いで駆け寄ろうとすると自分でも驚くくらいのスピードが出てしまって兄さんの側で止まろうとするも止まらず派手に壁に体当たりをしてようやく止まれた。
「うぅ〜イタタタタ。なんで軽く走り出しただけなのにこんなに早く走れちゃったんだろう。」
痛む身体を摩りつつ兄さんの様子を調べると、息はしており、気を失ってるだけなのがわかると凄く安心した。
兄さんを起そうとする時に悪戯心が芽生えて仕掛けてみた。
「ねぇ兄さん起きて。ねぇ、起きてってば。起きないとみんなの前で熱いキスしちゃうよ?」
すると兄さんはゆっくりと瞼を開けて辺りを見回した後、僕に視線を合わせると気分が悪そうに何回か瞬きをして頭を抑えながら身体を起こし聞いてきた。残念。もう少し寝ててくれても良かったのに。せっかくのキスチャンスが。
「…ここは?」
「兄さんおはよう。ここはわからないけど、お店で気を失った後ここに全員移動したみたいよ。僕は千嘉に起こしてもらったよ。他の皆はまだ起きてきて無いね。」
「そうか。じゃぁとりあえず倒れてる人達を起こすぞ。現状の把握はそれからだ。」
三人で手分けをして倒れてる人達を介抱して起こしていると父さんも母さんも起きてきた。
母さんは相変わらずどうしましょーとか言ってるけど、まぁこの反応は突然何か起こった時の何時もの反応だから大丈夫でしょ。
父さんは兄さんと同じように周りを見渡した後、床や壁を触りつつ何かを調べていた。
他の人も大体似たような反応だ。まぁ、そっちはどうでも良いけど。
「あれ?あっちの壁に扉みたいな感じで色が違う部分があるね。でも、これは…凄く大きい扉なのかな?」
そこにあった両開き扉の様な部分は大体高さ六メートル、横幅五メートルはあるようなとても大きな扉で、しかも材質は多分石か何かでとても重く僕の力じゃ開けそうに無いくらいだった。
そんな扉を見ながらどうやって開ける物かと考えているとその扉が突然ゆっくりと開き始めた。
「!?」
なにが起こっても良いように、僕は千嘉を抱きかかえて兄さん達がいる隣まで慌てて移動した。なんだか素早く動けるのでとっさに動けた。
扉の向こう側の空間はどうやら屋外みたいで、火のような灯りが揺らめく様な光り方をしている。
やがて巨大な扉はゆっくりと確実に、そして完全に開いた。
扉が開き終わるとそこから沢山の西洋風の鎧に身を包んだ騎士と言われても納得する出で立ちの人達が部屋に入ってきて、扉の左右に整列した。
「国王陛下ご来訪!」
いきなりとてつもない大声で騎士の誰かが叫ぶ。
え?国王陛下?そんなもの現代日本にいるわけないのに、この人達可哀想な頭の人なの?
僕がそんな哀れむような考えでいたら、扉から今度は黄金色を基調とした宝石が散りばめられた服と王冠を身につけた、ふっくらした白い髭のおじさんとローブを纏ってフードを被った女の人が入ってきた。ローブ姿からして女の人の方は小さな女の子がテレビで見るようなアニメのプリなんとかみたいな感じ。白い髭のおじさんはあぁ、なるほどという言葉が思わず出てきそうだった。多分この人が国王陛下なんだろうね。王冠とか初めて見るけどあれは頭が重そうだね。
うっかり前かがみになったら落ちちゃうんじゃないかな。それを防ぐのにあごひもとか締めてたらシュールだー。とか思ってたら本当にあごひも締めてて吹き出しそうになった。危ない。
「この者らが今回呼んだ者達なのか?意外に頼りなさそうな者達ばかりじゃな。」
「はっ、伝承にあります通りのやり方を行いましたなれば、異世界より呼び出した者達に相違無いと思われます。特に私が感知出来る者で数人が中々の魔力を秘めておりますので鑑定結果が楽しみであります。」
「まぁよい、全て貴様に任せる。しっかり鍛えてやれ。」
そう言って国王陛下さんは立ち去ってしまった。
きっと忙しい身分の人なんだろう。多分。
女の人の方はここに残るようだ。なにか説明してくれるのかな?それにしても声が美人な感じがする。列年齢も二十代ぐらいかな?
「さて、状況が分からない者達が殆どでしょう。これより私から説明させて頂きます。まずは私はドニール王国の筆頭魔術師のマリーナ=ベルゼルと申します。
そして先ほどまでいらした方がこの国の国王陛下であらせられるフィン=アウルグスト=ドニール十三世国王陛下です。」
「は?魔術師?国王陛下?そんなもの日本にはいないだろう!」
誰かが即反論している。声の主はお店の店長さんだった。凄く怒りが伝わってくる感じがする。そりゃそうだろうね、いきなり自分のお店で誘拐されて突拍子も無い事を言われたんだもん。
「その辺りもご説明させて頂きますので最後までお聞きください。この世界とあなたがたの世界は全く違う世界となっております。私達は古より伝わる異世界召喚の儀式を行い、異世界の方々の貴方達を呼び出しました。そして皆様が選ばれた理由は私達が魔力と呼んでいるモノが非常に多く持たれている方が居た場所を中心にして近くの方にも一緒に来て頂きました。誠に申し訳無いのですが元の世界に戻るには召喚の儀式で設定された条件を満たさねばなりません。」
「勝手に連れて来て、帰さないとか何様だよ!早く俺たちを家に帰せ!」
さっき言い返した店長さんがまた反論している。うん…男の人が怒るのは怖い。なんだか嫌な予感がしてきた。
「…また貴方ですか、しかたありません。とその前に。」
マリーナと名乗る女の人が懐に手を入れて何かを取り出した。ん?眼鏡?マリーナは取り出した眼鏡を掛けると
店長さんを少し見ている。
「念のために鑑定眼鏡で見て見ましたが、能力は平民と大して変わらず、ユニークスキルも無くめぼしいスキルも無い。やはりオマケはオマケといった所ですか。」
「このクソアマ!黙って聞いてれば人のことボロクソに言いやがって!ブン殴ってやる!オラァァ!」
店長さんがマリーナに殴りかかったと思ってたら、その前に周囲の騎士が動いた。
次の瞬間、店長さんの胸から槍が生えていた。
「店長!」
うわっ、槍が刺さった箇所から血が凄く吹き出してる。店長さんは口をパクパクさせて倒れ込んだ。もう瞬きをしてない、どう見ても死んでるよ。千嘉の目をとっさに塞いだので千嘉は見てないはずなのがせめてものの救いか。兄さんを見ると真っ青な顔色だ。多分僕も同じ色をしているんだろうな。他の人達も声も出せない様だ。店員の女の人は嘔吐してる。
「皆様。この様に邪魔立てする方は排除させて頂きますのでご注意ください。そして説明を聞いてもらった後、私達に協力して頂けたら身の安全と環境は保証致します。そして勘違いしてる様ですがこれは強制なので拒否権は有りません。拒否される方は素質次第で殺します。良くて自由意思のない操り人形になって頂きます。」
ヤバい。まじでこの人達ヤバい。
ご覧いただきありがとうございましたです。
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