表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

 これでスライムちゃんの食事事情は大丈夫だよね。

 おどろおどろしい空気(オーラ)を放つ魔素溜りを背に、私は頷いた。


 という事で、次。

 ダンジョン西入口付近の内装に取り掛かる。

 ジャングル風にすると決めたけど、その範囲はどうしようかな。

 マップ上でのマス目で区切られた――今マップ上で拡大し表示されている範囲を作ってしまえば、余程の強い人がこなければしばらくは大丈夫かな。


 まずは範囲を選択して、オプションという項目を選ぶ。

 その中に気候、天気、地形、状態というのがあるので設定する。


 専門家ではないから詳しい事とかはわからないけど、熱帯地方って乾季と雨季で分れてはいるけど、ジャングルは雨が多いイメージだから湿度も高いだろうし。

 赤道に近い場所だった気がするから、気温も高いんじゃないかな。


 地形もよくわからないけど、平野って平たい地面って事だよね。よくわかんないけど、山の上って涼しいからジャングルには合わないだろうし、平野で問題ないよね。

 モンスターたちも水を飲むだろうから、川とか湖も必要かな。


 状態って何だろうと思ったら、どうもフィールドの名前やモンスターの自動召喚の設定らしい。

 フィールドの名前を設定すると同時範囲の名前との位置を交換でき、モンスターが減りすぎると自動で召喚して補充してくれるのだそうだ。

 あと何か異常……、たとえば侵入者がジャングルを焼き払おうとしたり魔物数が召喚に追いつかなくなったり、何かがあれば自動で対処できるようにもできるし、それを私が気付けるようにもできるらしい。

 常に数を意識しなくていいって管理がラクでいいね。

 フィールドの交換もいざという時に交換したら、侵入者を混乱させたところを狙って倒せそう。

 何かあってそのまま魔王城まで来られても困るから、自動対処はもちろんオンだけどアラームも付けよう。



 気候……雨量多め、湿度高め、気温高め

 天気……気候設定に基づき自動で変動される

 地形……平野(川湖、有)

 状態……名前:“ジャングル西口”

      生物管理:自動補充(魔物優先)

      異常情報:自動対処(アラーム有)



 設定を見直す。細かい数字を設定しなくていいのがラクでいい。

 問題はなさそうなので、決定。

 すると、マップの色が変わり、その右上に“ジャングル西口”と設定した名前が表示された。


 名前の横にはてなマークもあり、それを選択すると別窓が出現。

 今設定した内容と、今現在のそのフィールド内での天気や魔物や植物の数等の情報が表示された。

 魔法なのか科学なのか段々よくわからなくなってきたけど、科学も突き詰めれば魔法と似たようなものになるって昔誰かが言ってた気がする。

 だから、魔法も突き詰めれば科学と似たような感じになるんだろう。納得。


 ちなみに現在の“ジャングル西口”の天気は晴れ、魔物を含めた動植物の数はもちろん0。

 侵入者もいないし、フィールド異常は何もない。


 下地はできたから、次は植物だね。

 何がいいかな。

 管理画面から植物のデータを見る。

 思っていたよりもそのデータ量は多く、全部見るのは無理かなって思った。

 スクロールするにしても横のスクロールバーが見えない程小さいくらいに種類があるとは思わなかった。


『検索範囲を設定しますか』


 どうしたものかと迷ったら、画面にポンっとそう表示される。

 設定できるならばと私が頷くと、画面が勝手に動き始めた。


『検索範囲の設定を行います

  参照データ:通常植物、魔性植物、精神植物、神聖植物

  設定マップ:“ジャングル西口”

  設定情報 :熱帯雨林気候ダンジョン


 熱帯雨林気候に対応した植物を検索します

  ………………OK


 ジャングル西口に生息可能な魔性植物を検索します

  ………………OK


 現在の管理者が育成可能な精神植物・神聖植物を検索します

  ……………OK


 全ての検索が完了しました』



 私の考えに応じて自動検索も可能とか、もう現代科学を超えてるね!

 よく考えたらこれって私がいなくてもさ、このシステムさえあれば人間を簡単に滅ぼせるんじゃないのかな。

 でもそうしないで私に頼んだって事は、何かしらの制限があったり?

 たとえば神様世界にも法律みたいなのがあって、それを守らないと神様であっても逮捕されちゃうとか。

 そう考えると神様も人間もさほど変わらないのかなって思っちゃうのは、さすがに罰当たりか。


 なんやかんかと考えながら、私は自動検索によって数の減ったデータ一覧をスクロールする。

 名前は全て日本語表記で、その横に樹木草花蔦蔓みたいな植物の育成形態と、通常植物や魔性・精神・神聖植物等の区分など、が簡単に書かれていた。

 便利でわかりやすいといえばわかりやすい。でもなー。


「ちょっと面倒かもー」


 条件で絞ってくれたとは言え、それでもこの量。

 スクロールバーが見えないレベルから米粒レベルにまで大きくなったとはいえ、多いんだよね。

 植物学者じゃないから、どれがどう影響したりとか、魔物にとっていいのかとか、わからないんだよ。


 これ全部採用とかできないのかな。


『エラー。フィールド範囲が狭すぎます』


 ふと思った事に5秒と待たずに答えが画面に表示される。

 これってもしかしなくても、私の考えがシステムに見抜かれていたり?


『システム稼働から6時間経過しました

 管理者との同調率は最大に設定されています

 システム作業の効率化の為、この設定は操作する事ができません』


 そんな難しい事を言われてもわからないんだけど、とにかく考えは筒抜けでその設定はいじれないって事でいいのかな。

 まあ、筒抜けても大したこと考えているわけじゃないし、便利だし、問題ないか。


 話を戻してとりあえず、絞ってもらった植物全部を植えるにはジャングル西口は狭いって事だよね。

 もう少し条件を絞ってみようか。

 何がいいかな。


 西口の外カメラ(と呼ぶことにした)を操作し、ダンジョンの外の映像を眺める。

 カラフルな極彩色の鳥が巣作りしている他は……、宝石のような虫やステンドグラスのようなきれいな模様の蝶が見えた。

 虫もいたなとと思って目を凝らしてみれば、木の枝に擬態している細い虫や落ち葉のような模様の虫もいた。

 他に何かいないかなと思ってカメラの動かせる範囲を酌まなく見るが、獣のような動物はいるように見えない。

 夜行性という可能性もあるのでいないと断言はできないけど。


 夜行性のネコやイタチみたいな小動物っぽいモンスターっているのかな。

 もちろん、ジャングルで生息可能な種類で。


『検索します………OK

 該当する魔物の一覧を表示します』


 考えた事に即座に対応してくれるシステム。

 ラクでいいけど、そのうちダメ人間になりそうな気もする。


 私は表示されたモンスター一覧を眺める。

 小動物っぽいのは思ったより少ない。



 レインズキャット。

 どんな気候・地形にも適応する事ができるイエネコによくにた身体を持つモンスター。

 毛の長さや、体の大きさは住み着いている場所によって変わる。

 小さいものはドブネズミよりも小さく人類種の幼体のこぶしよりも小さい。

 大きいものは人類種の住む平均的な家よりも大きくなる。

 雑食であり人に懐くことは稀である。

 過去、数多くの人類種の調教師が調教(テイム)に挑戦したがその全てが食い殺され、死亡した。

 肉食。


 どんな場所でも適応できるのはいいね。

 ダンジョンに合った大きさがどのくらいかはわからないけど、そこそこ広いから大丈夫だろう。

 人に懐くことが稀で調教(テイム)に挑戦した全調教師が食い殺されたのはちょっとこわいけど、人間を襲ってもらわないとだからそのくらいでちょうどいいんじゃないかな。人間に懐かれても困るし。

 私も人間だけど、神様にもらった召喚で呼べば私は襲われないはずだし、言うことも聞いてくれるはずだから、大丈夫だろう。

 採用(仮)って事で、次。



 トリトナールキャット。

 小型で、地中に穴を掘って住む。温暖な地域を好むが、極寒の地での生息例もある。

 音に敏感で、攻撃に転じるまでは逃げ続ける。その為、遭遇する事が難しい。

 臆病だが、一度攻撃を始めると相手が死亡するまで攻撃を止めない。その状態になると自らが死亡する事になったとしても逃げる事はしない為、調教したい場合は攻撃をさせないように気を付ける事。

 攻撃方法は爪や牙によるものはもちろん、口から毛玉のようなものを敵へと吐き出すという独特なものもある。その吐き出された物体は敵に触れた瞬間に爆発する為、わざと怒らせてその物質を吐かせ、触らないように採取して武器の代わりに使う者も存在する。

 好物は魔性植物の根っこと生肉。雑食。


 小型なのかーって和んだところで目に入った「爆発する」の文字。

 物騒だな!?

 あとわざと怒らせて爆破物を採取する人って鬼畜。

 相手が死ぬか自分が死ぬかするまで攻撃を止めないってわかっているだろうに。

 こういうのを見ると人間は滅ぼすべきだって思うね。私も人間だけど。

 ……保留で。



 ブラックタイガー。

 黒い虎。ただし大きさは人類種の成人男性の親指程度。

 亜熱帯の水辺を好む。肉食。

 一般的なイエネコの幼体のふりをして知的生命に取り入り、住処へ連れて行かれた所で住民を捕食する。

 大国では暗殺にこの魔物が使われる事がある。


 エビかよって思ったけど、エビではないらしい。

 サイズはエビっぽいけど。

 ダンジョンから連れて行かれる事が前提なのはちょっと問題。

 暗殺に使われることがあるって事は、それなりに調教(テイム)成功例が多いって事だよね。

 調教(テイム)されたら逆にこちらが捕食されそうだから、却下かな。



 カメレオンウィーズル。

 小型だが非常に凶暴な性格で、肉食。イタチに近い姿を持つ。

 カメレオンのように毛皮を変色させて身を隠す。

 自分より大きな獲物も単独で狩ってしまう強さがある。

 群れないのが救いではあるが、狙われたらまず逃げられない。


 毛皮がカメレオンのように変色するって、どんな構造しているんだろう。

 でも身を隠せて、強いっていうのはいいね。

 侵入者を狩れるくらい強いのかはわからないけど、採用(仮)。次。



 メイメイウィーズル。

 小型で温和な性格をしたイタチ系の魔物。雑食で何でも食べる。

 寒い地域を好むが、亜熱帯地域や砂漠地帯でも目撃例がある為、温度の変化には強いと思われる。

 人類種の住む土地にも住み着いており、ゴミや畑を荒らす厄介者としてよく討伐依頼が出されている。

 愛玩動物(ペット)としてもそこそこ人気。


 日本のカラスやハクビシン問題を思い出してしまった。

 ペットとして人気ってことは、ペットにしたはいいけど逃げられて野生化とか?

 どこの世界も変わらないのね。

 でもペットが欲しい訳じゃないから今回は見送りかな。



 ムニレイズマウス。

 別名、毒取りネズミ。雑食。

 適応力、繁殖力が共に強く、その血肉は一般的な毒のほとんどを解毒してくれる。

 肉食ペットの生餌や薬の素材として人気。

 ただ、ムニレイズマウスを増やし過ぎた上に逃げられて、食物庫を全て食い荒らされた者も少なくない。

 雄雌を分けていても、雄のみなら雄の中の1体が雌になり、雌のみなら雌の中の1体が雄になる。

 その為、繁殖を目的にしない場合は1体ずつ個別に飼育する必要がある。


 そうか肉食のモンスターたちを入れたら捕食されるモンスターも入れないとか。

 ご飯は大事だもんね。

 適応力はもちろんだけど、繁殖力が強いのもいいね。

 自動管理設定を少し変えれば増えすぎるって事もないだろうし、これは採用かな。



 ムニノイズマウス。

 別名、猛毒ネズミ。雑食。

 適応力、繁殖力が共に強く、その血肉は猛毒を含んでいる為に忌避されるが、エリクサーの素材のひとつでもある。

 毒抜きをしたムニノイズマウスの干し肉は珍味として知られている。

 姿がムニレイズマウスと似ている為、間違えて捕獲していく例が絶えない。

 一部の魔物はムニノイズマウスを好んで食べる。


 名前もムニレイズマウスとそっくりでややこしいね。誰が付けたんだ。

 エリクサーの素材になるっていうのは魅力的だけど、猛毒……でもムニレイズマウスとセットで召喚すればなんとかなるかな。どうだろ?

 とりあえずこれは保留ね。



 ――て、これで終わりか。

 1・2・3………7種類。思っていたより少ないね。

 モンスター限定ならそんなものなのかな。

 飼育していけばそこから亜種や特異種、進化種なんかも生まれる事があるらしいし。


 却下の2種類は置いといて、保留の2種類はどうしようかな。

 他に鳥や虫のモンスターも召喚する予定だけど、それでも3種類じゃ少しさみしい気がする。

 5種類採用でいこうか。

 猛毒ネズミはちょっと不安だけど、毒取りネズミも一緒だから大丈夫でしょ、たぶん。


 そうと決まったら召喚だけど、その前に設定を少しいじって“自動補充(魔物優先)”を“自動補充(魔物優先/上限有効)”に変更する。

 上限有効というものを付けておくとそれぞれの設定した数を越えた時点で自動でシステムが越えた分を狩りとって素材として管理や保存をしてくれるのだそうだ。

 これがあれば猛毒ネズミの増えすぎに怯える事はない。


 管理画面から採用した魔物を登録する。

 けれど今回はすぐには召喚はしない。

 まだ植物の選択が終わっていないからね。

 魔物をある程度選んだ今なら、もう少し検索結果を絞れる。


 あ、でもその前にご飯かな。

 集中していたから時間なんて忘れていたけど、前にご飯食べてから6時間以上は経過しているみたいだし。

 私はいそいそと魔法のトレーを取り出し、今度は何を食べようかなと考えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ