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 スライムちゃんたちのゼリー塗りたくり作戦はばっちり完了。

 壁の強化も設定し終わった。


 いよいよ内装。ダンジョン内部の作成だ。

 魔王城はとりあえず後でもいいから置いておこう。

 それよりも先に入り口部分の部屋をどうにかする必要がある。

 ダンジョンも魔王城も広いとはいえ、モンスターも罠もないただの部屋ばかりだったらあっという間にたどり着かれちゃうからね。


 私は人間だけど女の子だから、女がいるぞげへへへへっていう変態に捕まったら何をされるかわかったもんじゃないし。

 丁重に扱われても、それはそれで困るけどね。

 情が湧いたら滅ぼしにくいでしょ?

 さすがに親しくなった人間をどうにかできるほど私も薄情じゃないよ。


 それに何より、侵入者にいちいち対応しなくちゃならないのもだるいし、面倒だし。

 人間を滅ぼすにしても、やっぱり私生活は安全で平和なものがいいもんね。

 だから、極力魔王城にはたどり着かれないようにしなくちゃ。


 マップで入り口を確認。

 東西南北の4か所の他に、東北、東南、西南、西北の合計8か所、入り口はある。

 どこから手を付けようかなと考え、ショルダーバッグを漁る。

 創造魔法入門の本を取り出し、ぱらぱらとめくる。


「……あ、あった」


 さっきの召喚魔法を使った時の事を反省し、玉座に座ったままで行う。

 片手に本を持ち、片手は何かを(すく)うような形にする。


「我が望む。惑わし誘うその小さな姿を現世へと現せ、“万物創造(クリエイト)”」


 最終的に“万物創造(クリエイト)”って付けるなら、前の呪文いらないんじゃないかな。

 でも本には必須って書いてあるんだよね。

 よくあるスキル方式みたいなので、呪文短縮とか詠唱破棄とかないのかな。


 詠唱が終わると、掬う形で固定した手の10センチ上くらいに小さな魔方陣が現れた。

 そこから小さな四角いもの――サイコロが1個現れ、手のひらの上に転がる。


「迷った時は運試し!」


 本をバッグにしまい、メモ帳とペンを取り出す。

 入り口は8か所なので、どうしようかなと考えてから、書き出した。



 1回目、1・3・5、東西南北。2・4・6、東南、東北、西南、西北。

 2回目、1・3・5、東、西(東南、西南)2・4・6、南、北(西南、東北)

 3回目、1・3・5、残った2つの上記左側。2・4・6、残った2つの上記右側。



 これでだいたい似たような確率になるかな。

 私は玉座から降りて振り返り、玉座の上でサイコロを転がした。



 1回目、1。

 東、西、南、北のどれか。



 2回目、1。

 東か西の、どちらか。



 3回目、4。

 メモの右側だから、西。



 という事で、西の入り口から作る事に決定。


 サイコロを鞄へ入れて、玉座へと座りなおす。

 マップを西側へとスライドさせ、西の入り口一帯を拡大した。


 何をしてもいいって事は、特にこれと言った指針もないって事だ。

 管理画面と自称神様にもらった本の何冊かを見比べて出来る事を調べていく。

 でもそれとは別になんかこう、指針が欲しい。

 人間を滅ぼすっていうのも指針だけど、少し大きいからイメージし難いのだ。


 何かいいものはないかなーと考えている時、管理画面の左下隅にちらちらと見えているカメラのようなマークに気が付いた。

 もしやと思い、それを選択してみる。

 マップとは別に新しい画面が開かれ、そこにはジャングルのような景色の映像が流されていた。


 カメラ(魔法なのでカメラなんてものはないかもしれないが)の角度や高さを変更してみたり、他の位置(北や南の入り口マップ)でも表示されるのかを検証してみたり。

 一通り思いついた事をやってみて、最初に映像として張り出された景色は西の入り口付近の、ダンジョンの外の景色である事がわかった。


 緑や黄色の葉が生い茂る人の胴くらいの太さの木々がたくさん生えている。

 高さはおそらく二階建ての日本家屋と同じくらいだろうか。

 目測なので間違っている可能性もあるが、比べるものが私のダンジョンくらいしかないので意味がない。

 何しろダンジョンの壁はそれらの木々を軽く超え、木々の高さを倍にした所で到達できない程に高いものであるのだから。

 簡単に乗り越えられないように高さもそれなりにしたから、そんなものだろう。


 森とかジャングルとか、そんな感じかな。

 森にしては若い木ばかりで樹齢の経った立派な樹がないようだった。

 映像をよく見るとあちらこちらに色とりどりのカラフルな果物が生っているのが見える。

 蔦が木々に絡まり、果物よりもカラフルで目の痛くなるような配色の鳥が巣作りしているのも見えた。


 ジャングルっぽい。

 ジャングルといえば、雨季と乾季? 砂漠と密林があって昼夜の寒暖の差が激しいとか。

 動物は…イメージからするとサルやヒョウみたいな感じかな。

 熊や狼は寒い地方のイメージがあるけど……夜が寒いなら有りか。


 私はもう一度サイコロを取り出した。

 1・2・3が出たらジャングル風、4・5・6が出たら砂漠風にしようと思う。


 目を閉じ、手と手の間にサイコロを入れよーく振る。

 心の中で10数えたところでサイコロを外へと転がした。


 床へ転がっていったサイコロを追いかけ、止まった目を見れば2であった。

 2はジャングル風だ。


 となるとまずはジャングルっぽい植物を選ぶところからはじめるべきだろう。

 モンスターや罠も重要だが、侵入者がいない時はモンスターはそこで暮らすのだし。


 そういえばスライムちゃんたちの普段の食事はどうしたらいいのかな。

 うっかり考えてなかったけど、結構重要な問題じゃない?

 召喚魔法で生餌を出すとか、創造魔法で作るのもありだとは思うけど、数が数だもん。


 髑髏をいじって管理画面から魔物のデータを呼び出す。

 よくある質問という項目があるので、ためしにそれを呼び出してみる。

 誰がいつ質問したのかわからないが、思っていたよりもたくさんの項目があったので、調べたい事が載っていそうなタイトルのものを探してスクロール。

 ……あった。



『Q.モンスターを召喚しすぎてしまいました。餌が足りません。どうしたらいいですか?


 A.肉食モンスターならば生餌を召喚しましょう。今後の事も考えるなら、生餌にするモンスターを飼育し増やして餌とした方がいいでしょう。どこかへ狩りへ行って捕まえてくるのでももちろん大丈夫です。


 草食モンスターならば牧草地を作りましょう。創造魔法を使ってもいいですし、召喚魔法で魔性植物を召喚して育成するのもオススメです。お好きな方を試してみてください。


 雑食モンスターの場合は生餌でも牧草地でもどちらでも問題はありません。また、人類種が食べるような食事を作って与えてみるのも面白いでしょう。


 不定形モンスターの場合、種類によっては肉食だったり草食だったりしますが、それらを用意できなくても問題はありません。彼らは魔素溜りから生まれる事が多いので、魔素があれば餓死する事はないでしょう。ダンジョンがあれば魔素は足りるはずですが、不安があるなら魔素溜りを作る事をオススメします』



 スライムちゃんたちは不定形モンスターである。

 そしてここはダンジョン。

 大丈夫かなと考え、けれど召喚した数が数なので不安があった。

 よくある質問の答えの通り、魔素溜りを作っておくのがいいかもしれない。

 でも魔素溜りって何だろう?


 よくある質問をさらにスクロールして調べようとして、手が止まる。

 答えを探す必要がなくなったからだ。


『魔素溜りを作成しますか?はい / いいえ』


 私はもちろん、はいを選ぶ。

 作りたいと思ったら作ってくれるんだから、やっぱり便利だわ。


『作成場所を選択してください』


 作成場所?

 魔素はよくわからないけど、魔素溜りからモンスターが生まれる事もあるんだよね?

 それなら、上空や水中じゃなくて、床がある場所がいいかな。

 あとスライムちゃんたちはダンジョン全体の外壁に居るから、ダンジョンの中心付近である方がいいだろう。


 ダンジョンの中心と言えば、魔王城。

 魔王城の中心と言えば……ここか!


 魔王城は居住スペースにしたかったんだけどな。

 他に良さそうな場所は……でも玉座の間ならそれっぽい?

 ゲームでもよく、魔王の部屋はよくわからない力の渦とか圧力(プレッシャー)とか空気とか出てるもんね。

 そう考えたら玉座の間はピッタリなのかな。


 魔素溜りを玉座の間の玉座の後ろに出来るように設定する。

 すると部屋の空気が玉座を中心にして渦巻くように動き始めた。

 飛ばされる程ではないが、髪型が崩れるくらいには強めの風に、私は頭を押さえた。

 カツラではないが、髪を縛っていないので髪が顔面を撫でていくのがくすぐったくて、かゆくて嫌だったのだ。


 そうして5分くらいした後、風は治まった。

 玉座の後ろを振り返るように覗き込んで見る。

 濃い紫色と紺色を混ぜたような不思議な球状になるように動き続ける渦が出来ていた。

 色もそうだが、漏れ出る空気のようなものもどことなく毒々しい感じがする。

 後光ならぬ、恐ろしげな空気(色付き)発生器だと言われても私は納得できる。


 なかなかにラスボス感漂う玉座になった気がして嬉しくなった。

 スライムちゃんたちのご飯の為に作ったものであっただけに、なんとなく得した気持ちになれたのだ。

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