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 ぱちり、と目を開ける。

 昔から寝起きは良い方で、頭が寝たままという事は滅多にない。


 起き上がり周囲を確認すれば、予想通り骨組みは完成していた。

 見渡す限りの土の壁とそれに沿って大小さまざまな建物が建つ。所々、建物も土壁もない場所があるが、それはそういう風になれと念じていたものなので、特に問題はない。


 そして何より私が座っているこの場所。


 天に届きそうなくらいに高い尖塔が四方にあり、荘厳かつどこか恐ろしい雰囲気を持った洋風の巨大なお城。

 ガーゴイルと呼ばれる魔物を模った像が見守る鋼の扉の前にある跳ね橋の下にある深い堀が城を囲むように作られている。その底には水ではなく、鋭く太い、ランスと呼ばれる槍のような大きな棘が空に向かって生えている。落ちたらまず命はないだろう。

 いかにもな雰囲気でいて、全力で邪悪さを主張してくるこの素晴らしさ。


 そんなお城の中心。

 念じた通りに作られていれば、玉座から出る事の出来るバルコニー。

 そこに私は居るのである。


「魔法すごい」


 自称神様さすが神様。

 本気で滅ぼしたいのね人間を。


 自称神様の本気度を感じたので、私は続けて内装にも取り掛かる事にした。

 バルコニーから城の中へ入る。

 そこはちゃんと私が念じた通りに玉座の間になっていた。

 絨毯や窓ガラスの類はないが、角の生えた髑髏(どくろ)が右側の肘置きの上に乗っている玉座と、一定間隔で壁際に並ぶ甲冑がいかにもな雰囲気を出している。


 私は玉座に座って部屋を満足するまで眺めた。

 それから、魔法の鞄に手をつっこみ、神様にもらった魔法の水晶を取り出した。

 成人女性のこぶし大の大きさで、無色透明。どこから見ても綺麗な円に見える球である。


 どこに設置しようかなと周囲を見回し、肘置きの上の髑髏と目が合った。

 なんとなく水晶を髑髏に近づける。


 水晶が光り、物理法則なんて最初からなかったと言わんばかりに個体であった水晶は液体になり、けれど床へとは零れることはなく、一滴残らず髑髏の中へと入っていった。

 髑髏が光り、空洞だった眼窩に赤い炎のような光が灯る。

 それがますます魔王のような邪悪さに磨きがかかったように見え、私はとても満足した。

 右手を髑髏の上へと置く。


『フィールドを設定します』


 どこからともなく音声が聞こえ、これは同じファンタジーではあってもどちらかと言えばSFの類なのかと少し残念な気持ちになった。

 どうせなら妖精のような如何にもファンタジーな生き物にアナウンスしてもらいたかった。

 ちなみに音声に性別があるかどうかはわからないが、女性っぽい声である。


『拠点“魔王城”を中心に、迷宮(ダンジョン)“古代遺跡”の範囲設定が完了しました

 管理者は“アサコ・アサクラ”に設定されています

 各部屋及び通路の設定をする場合には管理画面より移動してください

 眷属及び下僕を設定・召喚する場合には管理画面より設定した後、召喚及び捕獲してください』


 つまり管理画面からゲームのように罠や魔物、ついでに家具みたいな備品も設定できるって事だ。

 わかりやすいが、ファンタジー感がどんどん減っていく。


 でも人間を滅ぼすまではがんばらないといけないのだから、このくらい簡単な方がいいかもしれない。

 短期的なものならややこしくても楽しいけど、長期的なものがややこしいと新鮮味がなくなるほどにやる気がなくなっていくだろう。

 その事で自称神様も苦労しているんだろうなぁと、同情だけしておいた。

 実際そうであるかどうかは知らない。聞いていないのだから、当然だろう。


 まあ、任された以上はきちんとやろう。


 私は髑髏に手を置いたまま管理画面を開き、さてどうしようかと考えた。

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