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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第一章 召使編
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78 孤児院の不正



 第三王子レイフィールが指揮する後宮の違反者事件が収束後。


 王族会議において新しい問題が発覚したことを第二王子エゼルバードが報告した。


「孤児院の助成金に関連した不正が見つかりました」


 孤児院の多くは運営が厳しいため、国から助成金を貰っている。


 助成金をもらうのはさまざまな条件を満たさなければならないにもかかわらず、条件を満たしていない孤児院も申請しており、不正受給していることが判明した。


「しかも、組織的な犯罪に関与している可能性もわかりました。職業訓練及び就職紹介を隠れ蓑にした未成年の人身売買です」


 孤児には両親がいない。


 だからこそ孤児院が引き取り、両親の代わりに保護者となって孤児の権利を守らなければならないというのに、その力を悪用している孤児院が見つかった。


 未成年の孤児に早い段階から花街や傭兵団への就職しかないと言い聞かせ、実際にそういった方面へ就職させるだけでなく、対価として寄付金を得ている。


 しかも、その寄付金は孤児院職員の賞与になっている。


 このような実態を考えると、孤児院が国の助成金を活用して孤児を娼婦や兵士にするために育て、高く売っているのと同じだと考えることができる。


「この件はすぐに対処しなければなりません。福祉は私の担当ですので、正式な権限を認めてください」


 エゼルバードは特別対策本部を立ち上げ、国内の孤児院を調査、違反者と犯罪者の逮捕、処罰、不正の撲滅を主張した。


「わかった。正式な権限を認める」


 この件はエゼルバードに任せることになった。





 王族会議の後、クオンはエゼルバードを自分の執務室に同行させた。


「私の注意を無視したな?」

「何のことですか?」


 エゼルバードはとぼけた。


「孤児院だ。リーナから聞いたのだろう?」

「そうです」

「近づくなと言ったはずだ!」

「私が約束したのはリーナを恋人や側妃にしないことです。そういった意味では手を出しませんが、それ以外のことについては同意していません。それに近づいたのは私ではなくロジャーです。個人的に気に入ったらしく、デートに誘ったようです」

「デートだと?」

 

 どう考えても言い訳。自分では動かずに側近に指示を出しただけだとクオンは思った。


「リーナに会うのであれば、孤児院の生活について聞いておくようにとは言いました。私は福祉も担当しています。国の支援がしっかり届いているか確認しておきたかったのです」


 リーナから孤児院の話を聞いたロジャーは驚いた。


 生活環境も教育支援も国の基準を満たしているとは思えない。


 不正の気配を感じたロジャーはすぐにリーナのいた孤児院について調査したことをエゼルバードは説明した。


「調査の結果はさきほど発表した通りです。リーナから話を聞いたおかげです。多くの孤児たちが不当な扱いをされていることに気づけて良かったではありませんか」


 クオンはどうしようもなく胸が苦しくなった。


 王太子の重責をこなせるよう猛勉強した。国民を導く良き国王になれるように努力した。


 終わらない執務の日々を重ねても、国民を守るためだと自分に言い聞かせていた。


 だというのに、全然できていない。


 リーナのような孤児がいる。


 他者に騙され、搾取され、抗うことができずにいる者が大勢いることがわかった。


「私は良い事をしているはずです。褒めてくださらないのですか? 私は約束を破ってはいません。兄上との約束を破るわけがありません」


 肯定も否定もない。


 クオンは黙っていた。


「兄上はリーナを庇護するようなことをいっていましたが、本当に庇護する気があるのでしょうか? 無防備そのものです。ロジャーは簡単にリーナとデートすることができました」


 エゼルバードは兄の反応を見るが、変化はなかった。


「リーナを悪用する気はありません。リーナの育った環境、日々の生活、何気ない話によって見聞を広めたいだけです。兄上はどうなのですか? 教えてください」


 やはり、クオンからの答えはない。


「リーナは兄上の調査員なのでしょうか?」

「違う」


 ようやく答えがかえってきた。


「本当は私にも言いにくい特別な関係なのでは?」

「違う」

「では、私の部下が個人的に交流を深めたいことについて口を出すのはおかしいと思います。平民の孤児である召使いが高位の貴族に気に入られたのです。幸運では?」

「本気だとは思えない」

「兄上はリーナの保護者ではありません。赤の他人です」


 クオンは言い返せない。


 私の勝ちですよ。兄上。


 エゼルバードは勝利を確信した。


 だがしかし。


 赤の他人か……。


 クオンは別の手を打つことにした。


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