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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第七章 婚約者編

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764 三次会

 いつもありがとうございます!

 事前に少しだけネタバレします。

 三次会は酔っ払い多数。(上半身だけ)脱ぐゲームもあり、友人達が騒ぐ内容です。

 宜しくお願い致します。

 いよいよ三次会である。


 残っているのは約三十名。


 二次会の会場は広すぎることもあり、別の小さな部屋に移動することになった。


「疲れた?」


 ヘンデルがクオンに尋ねた。体調不良になっていないかどうかの確認は重要だった。


「疲れていないはずがない。皆も同じではないか? 無理をする必要はない。遠慮なく休めばいい。そのための部屋はあるのだろう?」

「なくはない」


 ヘンデルが控えめに答えるが、すぐにリアムがその背中をバシバシと叩いた。


「必要ない、少なくとも俺はな! 全然元気だぜ!」

「貴重な機会だからな」

「この日のために執務室に籠って執務を片付けまくった」

「同じく」

「できるだけ早く出発するために頑張った」

「責任取れ!」

「そうだ!」

「ギブアップするには早過ぎる!」

「三次会を一番楽しみにして来たんだ!」


 友人達は極めて元気だった。興奮し、酔っぱらってもいる。


 三次会の部屋はこれまでとは違い、床に座る形式だった。


 敷物の上にはクッションが多数用意され、疲れた者はそのまま寝転んでしまえるようにもなっていた。


「座敷スタイルか」

「テーブルとイスにすると席が離れやすいからねえ。酔い潰れたらその場で寝れる」


 主役であるクオンを中心にして円を描くように詰め詰め状態で座る。


 まずは乾杯からだ。


「クオンと三次会に乾杯!」

「乾杯!」


 グラスの中身を飲み干すと、早速友人達は遠慮なく話し始めた。


「このメンバーでの飲み会は本当に久しぶりだな」

「確かに」

「最近は何もなかったからな」

「ないなあ」

「久々だなあ」

「だが、かなりまともだった」


 幹事ではない者の中には、余興内容等をほとんど知らない者達もいた。


「俺も思った」

「クオンへの配慮はあると思った。一般的に行われるような内容だと嫌がりそうだからな」

「主役が欠席では意味がない」

「参加優先!」

「実を言うと、女子禁制と聞いてがっかりした」


 中途半端に情報を知り、落胆していた者もいた。


「俺も」

「エルグラード中の美女達が集められてもおかしくなかった」

「そうだな」

「踊りの余興は驚いた。なぜ女性がいるのかと思った」

「思った思った」

「女装というのは意外だった」

「ネタバレしなければ全然わからなかった」

「女子禁制は参加者のことで、余興者のこととは思っていなかった」

「接客係も全員男性ばかりだったな」

「整った顔立ちの者が多かった」

「エルグラード中から美しい男性を集めたのか?」

「笑える!」

「ウケる!」

「まあ、一番美しい男性はエゼルバード王子かもしれないが」

「言えてる」

「セイフリード王子は二番か?」

「いつの間にか成長していた」

「美少年だった」

「エゼルバード王子に似ている気がする」

「間違いなく美青年になるな!」


 笑い合い、酒を飲みながらの会話が続く。


 だが、このまま夜が更けていくことを許さない者がいた。


「幹事通達だ! 余興をするぞ!」


 リアムが手を叩きながら叫んだ。


「お前が三次会の幹事かよ!」

「一番の適役だな!」

「際どいのはやめておけよ!」

「クオンを怒らせるなよ!」


 友人達は拍手をしながら応じた。


「大丈夫だ。じゃんけんゲームだからな!」


 じゃんけんゲームとは、東の国から伝わった『じゃんけん』をすることにより、その勝敗に応じて何かをするという余興だ。


 一般的には勝った者が好きなことをする。あるいは負けた者がペナルティ要素のあることをするといったルールが多い。


 だが、ここに集まっている者達は一般人でもなければ、一般的な感覚を持ち合わせているとも言いにくかった。


「それかー!」

「やっぱり来たぞー!」

「リアムはじゃんけんが好きだからなあ」

「脱ぎたいだけだろう」

「変わってないなあ」


 リアムは露出狂ではない。ただ、日頃から訓練している自らの筋肉や肉体美に自信があり、見せびらかしたいだけだ。


 自らの筋肉や肉体美に自信があるのはリアムだけではない。同じように筋肉や肉体美を自慢したい者や面白がって参加する者もいる。


 全員で何かをしたり場を盛り上げたりするにも丁度いいため、非常に親しい友人達だけの飲み会では定番化している余興だった。


「夏ならともかく冬なんだが」

「しかも、夜中だ」


 乗り気の者もいれば、乗り気ではない者もいた。


「もっと酒を飲んで熱くなれ! そうすれば脱ぎたくなる!」

「じゃあ飲むか」

「飲め飲め!」

「無理はするなよ」

「それも大切だな」

「リアムは相変わらずだな」

「学生の頃を思い出す」

「リアムらしくていい」

「正直、安心した」

「むしろ、変わらなくていいのか?」

「もう三十だしなあ」


 仕事、結婚、子供など、人生が様々に変化していく年頃だ。


「三次会は本気の無礼講だ! じゃんけん勝負に負けたやつは男らしく脱ぐルールにする。まあ、いつも通りだな」


 じゃんけんをして負けた者は身に着けているものの中から一つ選んで外していく。


 基本的には上半身に身に着けているものが対象になる。イヤリング、指輪、ペンダント、メガネといったアクセサリーでもいい。


 誰か一人が上半身を露出させたらゲームオーバーになる。


 また、判別しにくいものは全員で話し合って有効かどうかを決める。


「今夜の主役はクオンだ。何かあるか?」


 主役はルールの追加や改変に伴う特権を持つ。


 自分に都合のいいルールにできるが、多くを要求することはできない。


「勝ち抜けにする」


 全員で何度もじゃんけんをするのではなく、勝った者は勝負から抜け、負けた者だけで次のじゃんけんに挑むルールだ。


「初戦で私はグーを出す。主役である私に勝つことは許されない」

「それで終わりか?」

「こうなることを見越して何か用意して来た者は今のうちに身につけろ。ズボンのポケットの中身を上着のポケットに入れ直しても構わない」


 どっと笑いが起きる中、リカルドがポケットから指輪を取り出した。


 一気に注目が集まり、興奮度も異常に高まった。


「出たーーーーっ!」

「魔王の指輪だっ!」

「懐かしい!」


 学生時代、リカルドは一度だけ最後まで残り、『敗者の中の敗者』という称号を得てしまった。


 それをきっかけにリカルドは守りの指輪と称するものを持参し、じゃんけんゲームの時だけつけるようになった。


「今回は炎の守りか」


 宝石の色で判別している。


「浄化の守りではなかったか?」


 うろ覚えである。


「神が世界の闇を払うために使ったんだっけな?」


 どこかのファンタジーに出てきそうな内容だ。


「違う。神が愚かな人間と世界を焼き払う炎を封じた指輪だ」


 正解に近い。ほんの少しだが。


「聖典最終章、黙示禄、世界の終焉と最後の審判における聖なる炎の浄化をあらわす指輪だ」


 守りの指輪はフローレン王国に伝わる聖典の内容をイメージして作られた王家の秘宝だ。


 中央にあしらわれたレッドダイヤモンドは尋常ではないほど大きい。まさに伝説級といってもおかしくない指輪だった。


 王家の秘宝を友人達に見せびらかすだけでもかなりのことだが、そもそも国外に持ち出すこと自体がありえない。


 フローレン王太子だからではなく、リカルドだからこそ可能なことだった。


「この指輪に秘められし聖なる炎の力でお前達を薙ぎ払ってやろう!」

「カッコいいっっ!」

「魔王っぽい!」

「まじリスペクト!」


 大興奮する者達もいれば、苦笑する者達もいる。


「リカルドも相変わらずだな」

「全て計算している」

「面白ければ、誰も反対しない」

「堂々と保身アイテムをつけ、場を盛り上げる。一石二鳥だ」

「それも聖なる炎の力だな!」

「魔王だな!」

「ますますリスペクト!」


 酔っ払いのノリはすこぶるいい。


「準備はいいな? やるぞーーーーっ!」


 楽しい会話は一旦そこまでになる。


「いくぞっ! クオンはグー! じゃんけんぽーーーーんっっ!」


 すでにいい大人である者達は学生だった頃のように元気よく叫んだ。


 クオンは予告通りグーを出した。それ以外の者達は全員チョキだ。


「裏切り者はいなかった」


 パーとグーを出す者のことだ。


 三種類が揃っている場合はあいこになり、やり直しになってしまう。


「俺達はまぎれもなく強い友情で結ばれている!」

「敗者は男らしく脱げ!」

「勝者クオンに上着を捧げろー!」


 立ち上がったリアムはそう叫びながら上着を脱いだ。


 上着につけたカフスやポケットに入れたものも一緒になくなる。


 ルールでは一つを外すということになっているが、一セットとして扱っても違和感がないものについては任意の判断で構わない。


「クオンに捧げるなら上着しかないな」

「乗せられてやるか!」

「酒を飲んだせいで暑い。むしろ、上着を脱ぎたい」


 リアムに賛同して同じく上着を脱ぐ者達が続出する。


 わざと自分のアイテムを少なくし、他者とのアイテム差を設ける任意のハンディキャップでもある。


「無難にカフスにする」

「私はイヤリングからにすると決めている。片方ずつだが」

「招待状」

「上着のポケットに入れていないと駄目だぞ」

「ズボンのポケットは駄目だ」

「当然だ。わかっている」


 対象物を一つ選んで外せばいい。単純だ。何にするかで迷う者はいない。


 潔さが男らしさの証明になっている。


 あくまでも男らしさや気概を競うゲームであり、誰かを辱め、あざ笑うような趣向ではない。


「次いくぞー! じゃんけーんぽーんっ!」


 クオン以外の者達によるじゃんけん勝負が始まった。




 何度もじゃんけん勝負が行われ続けた。


 その結果、


「俺が敗者の中の敗者だっ!」


 リアムは叫びながらシャツを脱いだ。


「執務ばっかりで訓練をサボっている者は、俺の割れに割れた腹筋をよーく見て反省しろっ!」


 友人達は苦笑しながらリアムに拍手を贈り、見事に割れた腹筋を褒め称えた。



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