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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第七章 婚約者編

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742 午後は三人で

 昼食後、ベルは用事があるために退出した。


 そのため、午後はリーナ、カミーラ、ラブの三人で過ごすことになった。


「午後はどのような予定があるのでしょうか? 何も聞いていないのですが……」

「カタログショッピングよ!」

「お取り寄せ、とも言います」


 買い物の仕方は様々だ。


 一般的には欲しい品物が売っていそうな店に行って買う。パンが欲しいのであればパン屋に行くということだ。


 しかし、リーナは王太子の妻になる。自由に外出することは難しいため、買い物をする方法が限られる。


 そこで、裕福あるいは忙しい者達が利用するカタログショッピングという方法をリーナに紹介し、自分が欲しいものを気軽に購入する経験を積むという勉強をすることが説明された。


「気軽に?」


 リーナは眉をひそめた。


「それはできません。私の自由になるお金があるとしても、それは基本的にクオン様のお金です。無駄遣いはできません。必要なものは揃えていただいているので、わざわざ買い物をする必要はないと思います」

「それじゃ駄目なのよ! 自分で買い物をする経験が増えないじゃない!」

「経験を増やすためのものですので」


 二人はリーナに無駄遣いを推奨しているわけではない。


 様々な手段を駆使することによってより的確なものを探す重要性、リーナの嗜好を周囲の者達が知るための情報収集に協力して欲しいなどの理由が挙げられる。


 結局、カタログを見るだけで本当に買い物をする必要はないとわかったため、リーナは午後の勉強内容を承諾した。


「じゃ、早速用意をさせないとね!」


 すでに様々なカタログは用意させている。但し、ラブやカミーラが持って来たものは侍女達が昼間までに検分し、問題がないことを確認しておくことになっていた。


 呼び鈴を鳴らして侍女を呼ぶ。すぐに大量のカタログが用意された。


「これ……全部ですか?!」


 リーナは唖然とした。


 様々なカタログがあるとは思っていたが、積み上げられたカタログの数はどう考えても百冊以上だった。


「有名なものしかないわよ」

「信用度も重視しています。カタログといっても同業者が多くいるので、事前にある程度の選別はしています」


 リーナは渡されたカタログを開いた途端、目を見開いた。


「きっと役に立つわよ。お茶会を開く時とか」

「いつも用意されるものばかりでは飽きるかもしれません。また、どのようなものがあるのかという勉強にもなります」

「てっきりドレスとか宝飾品のようなものだと思いました」


 そういった商品のカタログも当然のごとくあるが、今回用意されたものは全て菓子のカタログばかりだった。


「値段を見るとわかるけれど、平民に人気の店のもあるのよ!」

「カタログを扱う商会が様々な商品を紹介しつつまとめて要望を受け付ける場合と、菓子屋が直接取り寄せに対応している場合があります。同じ商品が数冊のカタログに記載されていることもあります」

「カタログにしかない商品もあるのよ!」

「カタログ専用品と言います。コラボ製品などもあります。どこから取り寄せるかで値段が変わることもありますが、基本的には送料や包装代によるものです」

「楽しい勉強になりそうです!」


 リーナは嬉しそうにカタログを見始めた。


 やっぱりお菓子で正解ね!


 ドレスなどのカタログにしなくて正解でした。


 ラブとカミーラは頷き合った。


 これはリーナが楽しく勉強できるようにという配慮だけではない。


 婚姻日が近づくストレスからマリッジブルーになるのを予防するためでもある。


 そして、月明会が密かに計画している催しのためでもあった。


「気になるものがあれば教えて下さい。食べてみたいと思うものや、どんな菓子なのかよくわからないというようなものでも構いません」

「リーナ様がカタログを見てどんな風に思ったのかも知りたいかも?」


 カタログには商品の絵と共に簡単に説明文が乗っている。それを見ればどんな菓子なのかはある程度予想できる。


 しかし、カタログは当然のことながら購買意欲をそそるようなことだけが載っている。実際に取りよせてみると、思っていたのとは違うという場合もある。


「こちらのカタログは凄いですね。絵がとても綺麗です!」


 リーナが今見ているのはチョコレートのカタログだった。


 そのため、リーナはチョコレートの絵が描いてあると思ったが、実際にはチョコレートがお茶のセットなど共にテーブルの上に盛り付けられている絵が載っていた。


「こちらはチョコレートを単にお皿に並べるだけではなく、三角錐になるように積み上げています!」


 二人はカタログの絵を確認した。


「よくある盛り付けですが、高すぎます」

「これは下の端から適当に抜いて、誰が崩すか楽しむ系ね」

「えっ、そういう趣向が?」

「ラブが勝手にそう思っているだけです」

「まあ、これは食べるというよりは鑑賞用でしょ。こっちのトレーにもチョコレートが並んでいるでしょ?」

「そうですね」


 三角錐の形に積み上げられたチョコレートはテーブルの中央にあるが、その周辺にはお茶のセットや小皿、カトラリーと共にトレーがあり、そこにもチョコレートが盛り付けられていた。


「このトレーのチョコレートは三角錐のチョコレートと同じね。テーブルの中央にこんな大きいのがあっても取りにくいじゃない? だから、食べるのはこっちのトレーから取るのよ」

「凄いですね! 絵から様々なことを読み取ってしまうなんて……まるでお茶会の教科書のようです!」

「お茶会なんかに出ていると自然に身につく知識だけど。というか、それに合ってない絵だったら、このカタログの評価は悪くなるわね。参考にならない絵を載せるのは、見た目だけで騙しているのと同じだわ!」

「デコレーションの仕方やどの食事を取るべきかなどは、実際に様々な催しなどに出席しなければ、なかなか経験は積みにくいかもしれません」

「私も出席して経験を積みたいですけれど……きっと、難しいですよね」

「別に出席すればいいじゃない?」

「側妃になれば、それこそ招待状が多数来ます。興味があるものに顔を出せばいいだけのように思います」

「外出の許可が出るでしょうか?」

「場所次第じゃない」

「全く外出ができないわけではありません」

「内緒で出かければいいのよ。私なんか親の許可を貰わないで外出するなんてしょっちゅうよ!」

「そういう方法もありますね……」


 そうは言ったものの、リーナはクオンの許可を得ずに外出するつもりは毛頭なかった。


「ラブの言うことは無視して構いません。そのような方法を取れば、後で叱責されることになります。問題を起こさないためには、しっかりとルールを守ることが重要です。そもそも、侍女達や護衛騎士達全員の目を誤魔化して外出するのは不可能です」

「外出の許可は取るのよ。庭園に行くとか、イレビオール伯爵家に行くとかね。でも、実際は別の場所に行くわけよ!」


 ラブの狡賢さにカミーラは呆れた。


「リーナ様に教えるべきことではありません!」

「反面教師にしてくれてもいいけど?」

「カタログはまだ多くあります。そちらで勉強して下さい。絵もいいですが、興味がある商品、菓子を教えて下さい」

「わかりました」


 リーナはカタログに視線を移し、特殊な勉強を楽しむことにした。



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