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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第一章 召使編
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72 コーヒータイム



 執務室にいたエゼルバードは書類を見ることにうんざりしていた。


「ロジャー、次のデートはいつですか?」

「誰のだ?」

「貴方のです。いつリーナと会うのですか?」

「情報収集はしただろう? 追加でしろというなら連絡するが?」


 ロジャーがリーナを呼び出して話をしたのは、エゼルバードの命令だった。


「兄上や側近の動きはどうですか?」

「リーナに関してはない。私とリーナが会ったことを知らないようだ」

「野放しにしていると?」

「そう思える」


 エゼルバードは少し考えると、別のことを尋ねた。


「例の件は調べているのでしょうね? まだ報告がきていません」

「情報不足だ。追加の指示も出している」

「レイフィールの件ですが、どうしましょうか?」


 後宮内の違反行為を見つけた件で、王太子側から話があった。


「例の件では第三王子の力が必要になる。不仲は困る」

「では、容認してもいいと思っているのですね?」

「第三王子の予算だろうが軍の予算だろうが関係ない」

「新しいのが飲みたいです」


 ロジャーはお茶のセットがあるワゴンへ向かった。


 王族の執務室に入れる侍従はいない。


 お茶出しをするのは側近の仕事の一つだった。


「コーヒーが飲みたいです」

「先に言え」


 ロジャーはティーカップを下げ、別のカップにコーヒーを用意した。


「私も飲みたい」

「勝手に飲めばいいでしょう」


 ロジャーはカップに自分のコーヒーを注ぐと、砂糖を多く入れた。


「入れ過ぎでは?」

「眠い時はコーヒーの方がいい」


 ロジャーは甘党。


 苦みのあるコーヒーを飲む時には、大量の砂糖が必須だった。


「睡眠時間は取りなさい。ロジャーが倒れたら困ります」

「私がいなくてもセブンが引き継ぐ」

「セブンの淹れるお茶やコーヒーは不味いのです」

「ライアンは?」

「同じです」

「ジェイルは?」

「上達しません」


 エゼルバードの側近は優秀だが、高位の貴族だけに自分でお茶出しをする必要性がなかった。


 エゼルバードの側近になって初めて侍従や召使いの代わりに自分でお茶出しをこなさなくてはならなくなり、ロジャー以外については技能に対する向上心がなかった。


「ロジャーの技能が一流過ぎて、誰も勝てませんからね」


 ロジャーは博識でこだわり派。


 そのお茶出し技能は本職である侍従よりも優れていた。


「今夜の予定は?」

「観劇だ」

「気が乗りません」

「情報収集のためだ。明日は病院の視察がある。明後日は夜会だ」

「女性付きですか?」

「当然だ」

「苦みが増します」


 エゼルバードの気分はコーヒーの味を変えるほど悪化した。


 毎日のように予定があるのは嫌だった。自由な気がしない。


 正式な執務を担当していなくても、王子として活動するのは結局のところ執務と同じようなものだった。


 友人であり部下であり手駒でもある女性を伴うのも面倒でしかない。


「孤児院や慈善活動の情報は女性からの方が入手しやすい。飴を与えなければ動かない者ばかりなのは知っているだろう?」


 エゼルバードのために動く男性たちは無償でも友情や家のためだと感じて動く。


 だが、女性にはそのような気持ちが少ない。


 友人以上になりたい者や結婚で出ることになる家のことは関係ないと思う者もいる。


 だからこそ、有償でなければ動かなかった。


「早く発表したいのですが?」

「万全を期した方がいい。後宮の件が片付かなければ、第三王子も動きにくい」

「仕方がありません。兄上に免じてレイフィールには一時的に花を贈りましょう。すぐに私の番になりますが」

「確認する。後宮における撞球の間及び喫煙の間における違反者、関連する軍の予算に関しては第三王子の手柄として認め、全面的に協力をする。こちらの見返りは求めない」

「今だけです。いずれは別件で協力してもらいます」

「ヘンデルからの問い合わせもある。国王の側近たちの勢力を削ぐのに利用するかどうか聞かれたが?」

「この程度のことで解雇はできません。焦りは禁物です。どうせ国王が引退すればいなくなります」


 エゼルバードはよりも先に訪れる未来の方が気になった。


「この件を片付けるのです。でなければ、私の出番になりません」

「わかった」


 ロジャーはカップに残っていたコーヒーを飲み干した。



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