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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第七章 婚約者編

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689 リーナとラブの話(二)

「ここだけの話にして欲しいのですけれど、年齢が上の女性が多くて……」

「ああ、そこは重要。やっぱり同世代が多いグループがいいわよね」


 リーナが気にする部分は誰もが気にする部分だ。普通だとラブは思った。


「若い女性がいないわけではないのです。ただ、イレビオール伯爵令嬢達のように準会員みたいなのです。役員や正会員はもっと年齢が上の方ばかりで……でも、私は側妃なので準会員ではなく会員とか役員とかにならないといけないみたいなので……」


 ラブは頷いた。


「まあ、そうよね。それが普通よ」

「昼食会の時、食後は役員、正会員、準会員に部屋を分かれて過ごしました。そうなると私は準会員の方と過ごせないかもしれません。つまり、同じ年代位の若い女性です」

「自分の母親位の女性達に囲まれちゃいそうね」

「そうなのです。勉強のためとはいえ不安です。それに、若い年齢の正会員はとても少ないらしいです。格式があるので、若いと認められにくいとか。私と同じ位の年齢で正会員はほとんどいないらしいです。多くの方が母親からいずれ正会員の権利を受け継ぐつもりなので、無理して高額な入会金を別に支払ってまで、正会員になる気がないらしいです……」


 またもやラブは頷いた。まったくもって普通だ。こそこそ話す意味もないほどに。


「あるある。古くて伝統のあるグループほど、そういう感じなのよ。母親が正会員、娘は準会員。いずれ、娘が母親から受け継いで正会員になるってわけ。そうすれば高額な入会金は免除。親族の女性一人だけが受け継げる身分と権利だから、爵位みたいなものね。だから、絶対に娘に受け継ぎたい、欲しい、手放したくないと思う女性達が多いのよ。そのせいで問題も起きるの。自分の実の娘に譲るか、息子の嫁に譲るか。普通の跡継ぎ争いと一緒よ」

「なるほど! 確かにそんな風に考えることもできますね!」


 リーナはわかりやすい例えだと思った。


「カミーラやベルが話し相手だと、青玉会がいいっていうに決まってるでしょうね」

「社交グループの話をすると、必ず最後は勉強のために青玉会に入るのが簡単だという話になって……嫌というほどではないのですが、不安な点もありますし、色々もっと知りたいというか、検討したいというか」

「無理して入ることないわ。あそこ、正会員の個人財産や年収がそれなりにないと駄目でしょ?」

「そうですね」


 そのこともリーナは悩んでいた。自分には個人財産も年収もない。お金があるとしてもお小遣いだ。


 準会員はそれでもいい。だが、正会員は自分名義の財産や年収が必要になる。しかも、目安は数百万ギール。


 青玉会に入るために、個人財産と年収が数百万ギール欲しいなどといえるわけがない。


「そのことで、家族と揉めることもあるらしいわ。青玉会は女性の自立を応援しているのに、その女性が自立していないのはおかしい、両親や夫のお金で活動するのはどうかって思う人達が多いのよ。それで正会員は個人財産や年収をできるだけ増やすように指導されるわけ。でも、そういうのが嫌って人達もいるのよね。単に受け継いだ権利だけでいい。財産は増やさなくていい。お金を稼ぐのは逆に淑女のたしなみじゃない。個人財産がいくらあるのか他人に教えたくないとかね」


 個人財産や年収などの条件は高額な年会費を払い続けることを証明するためだと説明されている。


 そのことにリーナは何の疑問も感じなかったが、ラブの意見を聞くと考え方が変わった。


 誰でも個人的な意見や事情がある。説明されたことについて、青玉会に所属する全員が納得していること、賛同していること、全く同じように考えているとは言えないのではないかと思えた。


「女性が自分でお金を稼いだり支払ったりするのを嫌がる男性もいるの。体裁が悪いってね。別に個人財産や年収がなくても、自由に使えるお金が沢山あるならいいじゃないかとか。特に、青玉会に入るために個人財産が欲しいって言われて親や夫が激怒することが多いらしいわ。数百万ギール必要だもの。それに入会金と年会費。他にもお金がかかるし」

「えっ?!」


 リーナは驚いた。


「私が聞いた話では入会金と年会費は高いものの、払ってしまえば他のお金はかからないという話でした。なのに、他にもお金がかかるのですか?」

「当たり前でしょ!」


 ラブは呆れるように言った。


「それは単純に青玉会に払うお金の話。でも、実際に活動をすれば、個人で担当になったことは全部個人負担よ」

「個人で担当になったこと、ですか?」


 リーナは眉をひそめた。わからない。そんな説明は聞いていなかった。


「グループに入って活動するっていうことは、お金を払って終わりじゃないの。自分で何かしらの行動をする必要があるわけ。例えば、情報を集めるために雑誌を沢山買って持って来る担当になれば、その雑誌代は担当者が払うのよ。侍女や召使に必要なものを買いに行かせたとしても、費用は個人で負担だし、持って行くのも自分よ。だって、侍女や召使は会員じゃないもの。部屋の中に入れないわ。経費として申請すれば、雑誌代を青玉会が出してくれるわけじゃないってこと」

「なるほど……」

「後はおしゃれ代。毎回同じドレスで行けるわけないでしょ? 活動に参加するほど、ドレス代がかかるわ。勿論、小物とか宝飾品とか、靴にバッグ帽子。身分が高い女性ほどお洒落にお金を使うから大変よ。グループの催しにみすぼらしい格好をしていったら、大恥かいちゃうわ。退会するしかなくなることもあるわよ。そういうのは王宮の夜会や社交界のルールと同じ。青玉会なら正装の催しも結構あるわよ。当然だけど、ただの外出着より正装用のドレスの方が高いわよね? お金がかかるってこと。細かく上げたらきりがないわ!」


 リーナは黙り込んだ。


 確かに外出するのであれば、外出用のドレスが必要になる。外出回数が多いほど、ドレスも多く必要になるのだ。それ以外の小物、宝飾品、靴、バッグ、帽子、手袋も。とにかくお金がかかることは間違いない。


 ラブに言われるまで全く気付かなかった。カミーラ達も教えてくれなかった。やはり、様々な情報を集めてよく検討しなければとリーナは思った。


「ありがとうございます。おかげで色々わかりました。もっと社交グループについて勉強しないといけないですね。じゃないと、入会するのは難しそうです」

「自分で主催すれば好きにできるわよ。会費も自由。服装もね。毎回同じドレスってルールにしちゃうとか。いわゆる制服よ」


 リーナは驚いた。


 まさか、社交グループに制服着用ルールを作ることなど考えてもいなかった。制服といえば召使や侍女、侍従、騎士、警備などの職業的な衣装だと思っていた。


「それならお洒落代はおさえられそうです。でも、主催するのはすでにあるグループに入会するよりもお金がかかると聞きました」

「そんなことないわ。自分の手腕とか、運営方式次第よ。会員という名の友人達とおしゃべりしながらお茶を飲むだけのグループだってあるんだから。友人と遊んでくるというと外出を反対されるしお小遣いもくれないから、社交グループの活動をしてくるって言うだけの話。そうすれば外出することを反対されないし、活動費としてお小遣いも貰えるわ」

「……狡いですけど、利口ですね」

「ホテルやレストランを使ったら必ず割り勘か自分の分だけ払う方式にすればいいし。他にも会員の屋敷で持ち回りにすれば、他の会員の時は無料。自分の時だけ全員分負担。でも、両親に客がいっぱいくるからお茶と美味しいお菓子の用意をしておいてっていうだけ。小遣いを使う必要もなくて簡単でしょ?」


 リーナは驚いた。ラブは頭がいい。社交グループについて様々なことを知っているとも。


「凄いです……そんな方法もあるのですね!」

「全然普通。みんな知っていることよ」

「みんな……」

「そういうのは学校に通っていると自然とわかるわ。友達、先生、上級生も教えてくれるわね。私でよければ教えてあげるわよ」

「本当ですか?!」

「じゃあ、明日でもいい? 日曜日だし、役に立ちそうな本を持って行くわ」

「わかりました!」

「じゃ、ブドウを探しましょ。時間がなくなっちゃうわ」

「そうですね!」


 リーナはラブと話したおかげで、心が驚くほど軽くなったような気がした。



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