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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第七章 婚約者編

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676 それぞれの仮装

 二蝶会の仮装舞踏会当日。


 リーナは白いドレスと金色のティアラ。手には鳥の羽の飾りがついた白い扇を持っている。白鳥姫の仮装だった。


 仮装舞踏会とはいっても、場所が王立歌劇場なだけに、ドレスコードやマナー等の制限がある。


 安全上や警備上の問題から完全に顔や体を隠すようなマスクや着ぐるみなどは禁止されており、オペラやバレエ、有名な文学作品に登場するような人物の仮装をする。


 二蝶会の主催だけに舞踏会であることが優先されるため、凝った仮装は必要ない。


 また、奇抜すぎる衣装や露出度が高すぎる衣装は禁止。但し、肌色の生地やレースを利用している場合は問題ない。露出度が高いかどうかはあくまでも素肌の面積で判断されることになっていた。


「これをつけてね」


 ベルはリーナとラブ、パスカルに目元だけを隠す小ぶりな仮面を渡した。


 蝶のデザインになっており、二蝶会の関係者であることを示すものだった。


 ベルは実行委員会の者がつける灰色で、他の者達は特別関係者が着用する銀の縁取りつきだった。


「リーナちゃんの仮装は白鳥姫?」


 ヘンデルの質問にリーナは頷いた。


「そうです。とても簡単な仮装なので、多くの女性がするとか」

「ラブちゃんは黒鳥姫?」

「当然よ」


 ラブは黒いドレスと豪華なティアラを着用しているだけ。


 ウェストランドの色は黒のため、黒のドレスはふんだんにある。勿論、豪華なティアラも。


「仲間内で同じ作品を共有するのは普通でしょう?」


 仮装をする際、仲間内で同じ作品の役柄から振り分けるというのはよくある。


 リーナ達は『白鳥姫と金の王子』の物語から仮装を選んだ。


「カミーラは? 白鳥姫のライバルの一人?」

「いいえ。白鳥姫の侍女です。いざという時は身代わりを務めるほどの側近ということで、あえて白いドレスにしています」


 カミーラも白いドレスだが、ティアラは銀色。やはり白い羽根飾りのついた扇を持っていた。


「設定が細かいな。もしかして、パスカルが王子で俺は悪役?」

「正解よ!」

「正解です」


 ヘンデルは妹達から黒い正装をするように言われていた。


 仕事に忙しく、仮装舞踏会が平日の夜ということもあり、何も考えずに要求通りの装いをした。


 対してパスカルは白の正装。これも要求だということは知っていたが、やはり特には考えていなかった。


「酷いなあ」

「ただの仮装です」

「そうそう。男性のほとんどは黒か白の正装じゃないの」


 男性は正装をするだけで多くの作品の登場人物に該当する装いになれる。


 適当な人物の仮装だといえばいいだけで済むため、非常に簡単だった。


「お兄様が金の王子役だと、王太子殿下に怒られるわよ? 絶対に偽物だって」

「レーベルオード子爵はリーナ様の兄君だからこそ許されます」

「見た目が王子様っぽいし」


 ヘンデルは反論できなかった。


「……せめて金の王子の友人その一とか。リアル設定だしね?」

「そのままでも通用します。お好きなように説明なさってください」

「悪役の方がメジャーだけどね」

「王子の取り巻きだとしたら、レーベルオード子爵と上下逆転で笑えるわ!」


 そう言いつつ、すでにラブは笑っていた。


「まあ、悪役でいいかな」


 ヘンデルは悪役設定を受け入れた。




 その後、簡単な説明が行われた。


 王立歌劇場へは一台の馬車で行く。正面玄関は混み合うため、別の出入口を利用する。


 リーナはあくまでも勉強のための見学でダンスは踊らない。


 リーナの側には必ず誰かが一緒にいること。絶対に一人にはしない。


 ラブは未成年のため、成人の誰かが一人ついている必要があることも改めて伝えられた。


「ボックス席は関係者の席で埋めてあるから、貸し切り状態よ。でも、ボックスを間違えたり、空席を貸して欲しいといって他の者が来るかもしれないから注意してね。私はほとんどボックス内にいられないのよね。会場内で問題が起きていないか見回る役なのよ」


 通常は実行委員会の者達だけで催しをするため、他の会員は純粋に催しを楽しんでいればいい。


 しかし、今回はあまりにも一般の参加者が多いことから、すべての会員が実行委員会の手伝いをすることになっていた。


 ベルは特別関係者用の仮面やボックス席の事前手配をしており、リーナに合わせて早めに帰宅することも希望したため、その分多くの手伝いをしなければならなかった。


「あぶれている男性達をダンスに誘うのも役目なのよね……」

「私はリーナ様とずっと一緒にいるわ。お兄様にも大人しくしているように言われているから丁度良いのよね」


 ラブは未成年であるために一人では出歩けないことになっている。


 それを利用してずっとリーナと一緒にいるつもりだった。


 リーナはパスカルがいてくれることを嬉しく思ったが、心配にもなった。


「お兄様、ボックス席にいてくれるのは嬉しいのですが、遠慮はしないでください。いずれは結婚するはずです。素敵な女性を探すためにも、ダンスをした方がいいですよね?」


 全員の視線がパスカルに向けられた。


「心配しなくても大丈夫だよ。来年には第四王子が成人することもあってかなり忙しい。結婚はまだ先かな。上司が王族だけに、仕事を優先するのが当然だ」


 王族に仕えている者は、その仕事に支障をきたすようなことを避けないといけない。


 プライベートの充実や婚活も大切だが、そのせいで仕事に支障をきたしてはならないというのは、王族付きの侍女だったリーナにも理解できることだった。


「わかりました。でも、凄く良さそうな人を見つけたら、遠慮なく声をかけに行ってくださいね」

「大丈夫だよ。リーナ以上に魅力的な女性は世界中を探してもいない」

「なんとなくですが、アイギス様のようなセリフです」


 リーナはデーウェンの大公子を思い出した。とにかく女性を褒めまくる、お世辞をいうというイメージがしっかりと定着していた。


「お世辞じゃないよ。僕は心からリーナを愛しているからね。兄から見て妹が世界で一番可愛いのは当然のことじゃないか」

「羨ましいわ。お兄様は絶対にそんなこと言わないもの」


 ラブが羨ましそうに言うと、カミーラ達も同意するように頷いた。


「うちの兄とは全然違います」

「本当に。こういうところで差がついているわ」


 ヘンデルは苦笑するしかない。


「俺の愛は結構重いよ? それでも欲しいの?」

「遠慮します」

「やめとくわ!」


 妹達は即答した。


「じゃ、そろそろ行こうか」


 リーナ達は王立歌劇場に向かった。


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