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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第七章 婚約者編

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666 購買部への意見

「今回、王宮の購買部を見てまわれたことで、色々なことがわかりました」

「それについても率直な感想を聞きたい」

「まず、便利です。お仕事がしやすくなると思いました」


 クオンは頷いた。


「そのためにあるものだ。効果があると思ったわけだな?」

「はい。それに、低価格で良心的です。何種類もあるので選べます。後宮は高額商品しかなかったので、余計に素晴らしいと思いました。例えばですが、裕福な者は後宮の購買部、さほど裕福ではない者は王宮の購買部を利用するということであればわかります。でも、そうではありません。裕福度に関係なく勤務先で決まってしまいます。一部の者達は両方使えますが、後宮にはもっと低額の品、王宮には高額でも利用者が望むものがあってもいいのかもしれません」

「品揃えの金額設定に偏りがあるということだな?」

「種類もです。後宮の方は利用者がほぼ女性です。なので女性用品が充実しています。王宮の方は女性用品が少ないかもしれません」

「王宮にいる者の多くは男性だ。男性優先になるのは仕方がないようにも思える」

「人数を考えるとそうです。でも、女性用品を買うために遠い購買部に行かなければなりません。男性は衣類にポケットが多くついています。でも、女性は違います。ポケットに多くの物を常備して移動できません。急に何か必要になって購買部で購入したくても置いていない、遠い購買部に行かないといけないのは困る気がします。その点は不便です」


 生理用品とかがあるのは女性用の購買部だけだし。


 リーナは心の中で思った。


「具体的にはどのような品だ?」

「……色々です」

「わかりにくい」


 リーナは困った。かなり。


「……トイレと同じです。急に使用したくなったとします。でも、王宮には男性が多いので、男性トイレばかりがあります。女性トイレが少ないため、遠くまで行かないといけません。仕事中ですし、女性は移動時間がかかります。困るに決まっています。なので、人数差をそのまま施設数に反映するのが最も適切ではないかもしれません。トイレは男女各自の専用トイレを同数、あるいは不公平や不便過ぎることがないように考慮して設置する必要があると思います。男女兼用の個室のみのトイレを設置するとか、貴人用はそうです。購買部も同じです。男性用の品揃えの購買部が多いのはどうかと思います」


 クオンは少し考えた後に答えた。


「……男性専用の購買部の方が多いかどうかはわからない。文具や一般の購買部は男女兼用ではないか?」

「普通に考えればそうです。でも、男性優先の品揃えだと思います」

「なぜだ?」

「それは女性優先の品揃えを知っているからです。例えばペンです。男性は黒や青を好むでしょう。でも、女性なら赤とかピンクを好みます。ペンの種類は多くても、黒ばかりです。赤もありますけれど、赤いインク用です」

「……外装のことであれば、黒でも赤でも男女兼用ではないか?」

「でも、男性は黒インクを黒のペンに、赤インクを赤いペンに入れることができます。女性が赤のペンに黒のインクをいれると、赤のインクは黒のペンにいれる選択しかしにくいです。ピンクのペンがあれば、それにいれることができます。女性にはそのような選択の幅がありません」


 わからないでもないが、重要度は相当低いとクオンは感じた。


「メモ用紙も白が圧倒的です。あっても黄色。ピンクがありません」

「別にピンクでなくてもいいのではないか?」

「女性のメモだと判別しやすくなりますし、男性からは違和感のある色なので、見分けやすくなります。注意することを赤ペンで書くように、メモも特別注意するもの、急ぐものなどを色分けするのは有効です。ピンクでなくても、数色あった方がいいと思います。女性用の購買部には数種類ありますが、他の購買部にはありませんでした」

「なるほど。色分けするのを好むのが女性だとしても、男性にとっても活用できることではある」


 クオンはまたしても重要度が低いとは思うものの、一定の益はあることを認めた。


「サイズの規格も男性優先です。大きいものが多いです」

「大は小を兼ねるからではないか?」

「一般の購買部に手袋が売っていました。高級品を触ったりする時とか、指紋をつけないために使用するごく普通の白い手袋です。男性サイズだけでした。女性ではぶかぶかです。女性用の購買部に行かないと、小さいサイズがありません。ぶかぶかの手袋では仕事はしにくいかもしれません。掃除は女性が担当します。その際、ぶかぶかの手袋のせいで高価な物を落としたら大変です。複数サイズ置くべきでは?」

「……ふむ」


 わからないでもないが、やはり重要度は低いとしか言いようがなかった。


「一般用の購買部には男性向けの雑誌が多くありました。女性向けの雑誌は少なかったです」

「女性向けの雑誌が売れてしまってなかったのかもしれない」

「成人男性向けと思われる雑誌も堂々と売っていました。露出度の高い衣装を着た女性の絵が表紙の雑誌です」

「……気づかなかった」

「女性も利用することに対して気を遣っていない証拠です。せめて、目立たない所に置くべきでは?」

「……そうかもしれない」


 クオンは反論しなかった。指摘されている商品を考えると、反論しない方がいいと感じたのもある。


 しかし、頭の中では男性優位の品揃えという言い方もできるが、そもそも購買部の者達に男性が多いため、女性利用者への配慮が足りない可能性も考えた。


「それから、支店の番号からすると、王宮の購買部の支店数は多そうです」

「そうだろう」

「沢山あった方が遠くの購買部に行かなくていいので便利というのはわかります。でも、多すぎるのは無駄です。適切な数かどうかしっかりと調べるべきでは? どんどん追加しただけだと、きっと多すぎます」

「必要だと思われるからこそ追加するのではないか?」

「そうだとは思います。でも、売り場が狭いので、置ける品数には限りがある支店も多くあるはずです。だったら、ある程度は数を減らし、一店舗の面積を広げて品数を豊富にした方がいい気がします」

「それはわかる。だが、王宮内にスペースが確保できないからこそ、狭い売り場になるのではないか?」

「でも、王族の部屋から一番近い場所で二十七です。あちこち作って、ようやく王族の部屋の側にも作ることになったのだと思われます。そう思うと、なんだか多すぎる気がします。普通なら、王族に仕える方々が最も忙しそうなので、その方々のための支店はもっと最初の方に設置することを考えると思うのです。ちゃんと考えて設置しているのか疑問です」


 リーナの考え方は確かにおかしくはない。だが、クオンなりの考えもあった。


「王宮の購買部は低価格のものが多い。下位の者が欲しがるものだからこそ、王族付きの者が欲しがるものが少ない可能性もある」

「そうですけど、そもそもは王宮の備品です。王宮の備品が安いなら、王宮の者達は皆それを使っているはずです。品揃えについても、一部の者というよりは全員が希望するようなものがいいというようなことを言っていた気がします」

「確かにそうかもしれない」

「最初に見た場所の文具と、二番目に見た場所の文具の品揃えも基本的なところは一緒です。王族付きの者達が利用するところの方が特化しているせいか品数が豊富でしたけど、高い商品が優先されているわけではなく、安いものがちゃんとありました。王族付きの者だって、安い物の方がいいかもしれません」


 クオンは考え込んだ。確かに様々なことが考えられる。


 リーナの率直な意見に対し、クオンなりの解説はできる。但し、あくまでも推測だ。


 購買部の内情を詳しく知っているわけではない。むしろ、自分が使用する施設ではないため、興味がなかった。


 だが、クオンの使用するものがないわけではない。


 ヘンデルが持って来る文具は基本的に購買部のものだ。王族用の立派な文具はあるのだが、重要書類用にしている。


 単にメモを取る時や書類の添削に使用するものは安いペンや紙でも問題ないため、官僚が使用するような品をクオンも使用している。その方が経費削減になると思っている。


 また、ヘンデルのおかげで新製品についても情報も知ることができるようになった。昔はひたすら用意されたものを使うというだけで、性能の説明はなかった。


 王宮の購買部では新素材を使った商品や高機能品などが国内で最初に研究に協力するという名目で試験的に出回る。


 商品化がかなり決まった段階になると、検査系試用品などとしてより具体的な調査をするべく、一般販売予定価格よりも安い価格で手に入れることもできる。


 そういった意味で、王宮の購買部はエルグラードで最もいち早く新素材品や高機能品が出回り、手に入る場所でもあることがわかった。


 様々な新技術は国家的な機密であり、財産でもある。そして、王宮は守秘義務という壁で厳しく守られている。


 だからこそ、研究段階や一般販売前でも国家機密や国家財産になりえる研究や技術に関わることができる特殊な場所でもあるのだ。


 クオンは贅沢だという後宮の購買部が気になっていたが、王宮の購買部に関しても様々に考えるべきことがあるのかもしれないと感じた。


「……今回は王宮内の施設である購買部を一緒に見て回ったが、新しい発見ができたように思う。楽しめた。このように話し合えるのも非常にいい。また、機会があったら一緒に見に行きたい」

「そうですね。また、購買部にお買い物に行きたいです」


 王宮内にある購買部以外の場所にいくつもりだったが、クオンは別のことを口にした。




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