619 ボックス席について
いつもお読みくださりありがとうございます!
新システムの誤字脱字にて報告して下さる読者様、こちらにてお礼申し上げます!
話数字数多くてなかなか見返す時間を取れないので、本当に本当に助かっています。
読者の皆様にもご迷惑をおかけして申し訳ありません。
それでもなんとかコツコツ執筆も修正も頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願い致します!
「兄上に話したのですか?」
「断られた。個人で保有するボックス席は関係者の予約で埋まっている。四席の場合は第三予約になってしまうらしい」
王太子は王族席で観覧できるが、個人でもボックス席を購入している。
アイギスが年間を通して自由に利用できるボックス席を確保するのであれば、王太子に頼むのが手っ取り早い。
しかし、王太子のボックス席は友人だけでなく王太子の側近や王太子府関係者も利用するため、年間を通してほぼ予約が埋まっている状態だった。
「エゼルバード王子に話を通し、別のボックスを探した方がいいと言われた」
「そうでしたか」
兄から来た話ということであれば、エゼルバードとしても考えたい。
しかし、年間を通してという条件は極めて難しく、その上四席。
身分的にも良いほうの席でなければ名誉に関わるというのも注意しなくてはならない。
「一応はこちらでも探してはいるのだが、同じ席で毎回というのは難しい。親しくない者とのやり取りで揉めたくもない。無料の招待だと思っていたが、あとから招待名目で有料の席だとわかった。それならいらないと伝えると、迷惑料を払えと言われたことがあった」
「誰に言われたのですか?」
「イーストランドだ。クオンが解決してくれた」
「あの件は貴方でしたか」
兄の友人が無料の招待と招待名目の有料席とのやり取りで揉めてしまったという話をエゼルバードは聞いていた。
年間予約の席を購入できる者は限られているため、より多くの人々が芸術鑑賞をするための転売行為については暗黙の了解になっている。
しかし、そのせいで問題が発生するのはよくない。
他国の重要人物との間で問題が起きれば外交的な問題に発展する恐れもある。
特殊な事情がある場合のみ、エゼルバードが介入してでもうまく解決するようにしていた。
「国立歌劇場で探してみるのはどうですか?」
「王立歌劇場のほうがいい」
「残念ですが、個人的な利用の手配はご自身でなんとかしていただくしかありません」
「現在の座席保有者の情報を開示して貰うことは可能だろうか? 私が留学していた頃の保有者は知っているのだが、一部変わったと聞いた」
「兄上はなんと?」
「自分で調べろと言われた。ヘンデルにも頼んだが、それこそ有料だと言われた」
エゼルバードは心の中でヘンデルに呆れた。
「私に頼むと高くつきますが?」
「そんな気はしていたが、相手による。貸し借りを理由に会えるのはいい」
アイギスは抜け目がなかった。
普通は相手に借りを作りたくない、貸し付けたいと思う。
しかし、アイギスは借りを作ることも活用する。
社交術や交渉術を得意とするアイギスだからこその考えだった。
「さすがといいたいところですが、イーストランドとの一件を考えると、私との取引は控えた方がよさそうです」
「あれは私が直接交渉したわけではない。最後まで代理の者が当事者ということにした」
「ですが、実際は違ったわけです。代理の者であっても、トラブルは歓迎できません。私の管轄する場所では特に。別の場所にしてください」
「わかった。この件は大人しく引き下がる」
アイギスはあっさりと引き下がった。
それは交渉における引き際を心得ているということだった。
「ヘンデルに有料でリストを貰い、ついでにシャルゴットの席を手配して貰えばいいのでは?」
「シャルゴットの席は位置が悪い。二階ならともかく、三階と一階は位置による」
「アイギス大公子は留学されている際に友人やコネを多く作られたはず。何とかできるのでは?」
「場所や座席数を選ぶとハードルが上がる。だが、ラダマンティス公がいる間はなんとかなりそうだ」
それはつまり、ラダマンティス公のコネで座席を確保できるということ。
「レーベルオードの座席ですね?」
エゼルバードは直感でわかった。





