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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第六章 候補編

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605 社交の授業



 火曜日と金曜の五時限目は選択科目。


 社交の授業を希望していたのはリーナ、カミーラ、セレスティア、ユーフェミニアの四人だった。


 授業が行われるのは第一学習室の隣にある第二学習室で、教壇の前には四角いテーブルがあり、二席が並んで対面するような座席になっている。


 座席は通常の身分の序列順。


 ファーンベルク公爵令嬢のセレスティア、リーデスラー侯爵令嬢のユーフェミニア、イレビオール伯爵令嬢カミーラ、そして最下位の席がレーベルオード伯爵令嬢リーナの席だった。


 初めての授業、講師が何人もいることもあって、リーナは非常に緊張していた。


「皆様、こんにちは。私は社交の授業を担当するモルガナです」


 名乗った講師は年配の女性で、非常に厳しそうな人物に見えた。


「社交の授業には常時講師が四人つきますが、基本的には私の方からお話します。後の三人は授業を客観的に観察しながら皆様の社交の仕方に関する問題点を発見したり、評価等をしたりする役目になります。ですので、この者達には話しかけないように。部屋にはいないと思ってください」


 教壇側にある席に座っていた講師達が立ち上がり、順番に挨拶をした。


「では、どのような授業なのかを簡単に説明します」


 社交の授業は社交に必須な技能、主に話術の向上を目的としている。


 状況に合わせた会話を適切にするということはわかっても、講師が例として上げた対応ばかりをするわけにはいかない。


 授業では毎回提示されるテーマや教材を元に、生徒全員で話し合って話術を磨く。


 どのように話すのか、対応するのかは自由だ。


 次回の授業の時に、前回の授業の評価がどうだったか、問題点や改善点などを指摘した評価表が渡される。


 それを参考にしてより社交術、話術の向上に各自努めるということが説明された。


「難しく考える必要はありません。おしゃべりを楽しめばいいだけです」


 モルガナは説明後、早速教材を配った。


「今日はこちらに書かれている記事がテーマです」


 配られたのはエルグラードで発行される貴族新聞で、トップ記事の部分が黒い枠で囲まれていた。


「こちらはエルグラードで最も多くの発行部数を誇る貴族新聞です。月曜日に発行されたもので、一面のトップは土曜日の舞踏会についての記事でした。黒枠で囲まれている部分を読み、その内容について自由に会話をしていただきます。では」


 モルガナはリーナに視線を移した。


「リーナ様、他の方々に聞こえるように黒枠内の記事を読み上げてください。座ったままで構いません」

「はい」


 リーナは黒枠内に書かれている記事を読み上げた。


「では、身分の序列が高い方から記事についての感想を述べてください。リーナ様が感想を言い終えた後は自由に話してください。生徒同士で歓談するということです」


 講師の指示により、まずはセレスティアが感想を述べた。


「舞踏会が無事終わってなによりですわ。でも、私達が接待役を務めたということは載っていませんでしたわね。後ろの方になってしまいましたわ」


 セレスティアは授業が始まる前に同じ新聞を読んでおり、別の面に接待役についての記事が載っていることを把握していた。


 そのことを感想に盛り込み、加点を狙う気だった。


「新聞ではセカンドワルツとサードワルツを務めた者も接待役に含めていました。あの者達はダンスだけ。接待役のリボンブローチもつけていないというのにおかしいですわ。新聞の記事を鵜呑みにするのは間違いだとわかりますわね」


 ユーフェミニアも同じく新聞を読んでいることがわかる感想を述べた。


「個人名が載っていたのは三名だけでした。ですが、最も重要なのはトップ記事で強調されたこと、舞踏会によって両国の友好が更に強まったことと輸入に関する事柄でしょう。細かい交渉はこれからですので、ますます注目されますわね」


 カミーラもやはり新聞をすでに読んでいると思われる感想だった。


 次はリーナの番。


 リーナも新聞は読んでいる。貴族新聞だけで大衆紙、社交雑誌なども空いている時間にできるだけ目を通していた。


 しかし、普段は聞き役が多く、自ら話す機会はあまりない。


 じっくり考える時間があるわけではなく、全員が自分の発言に注目していることもあって緊張してしまった。


「舞踏会が……無事終わって良かったです。そのことが新聞で伝えられたので、多くの国民が安心したと思います」


 リーナの感想は無難だった。しかも、前半はセレスティアとほぼ同じ。


 他の者と同じような感想が駄目だということではないが、オリジナリティーが減ってしまう。


 加点要素が少ないのは明らか。


 それを察したカミーラは、自由な会話の時間になったとしてすぐに口を開いた。


「さすがリーナ様ですわ。国民が安心することが非常に重要であることを理解されています。エルグラードとデーウェンの友好が国民全体に与える影響を考慮するだけでなく、お優しいお人柄が溢れ出ておりますわ。大変感服致しました。四つの感想の中で最も王族妃らしい発言はリーナ様の感想でしょう」


 カミーラはリーナが非常に重要な言葉を使ったことに気づいていた。


 それは国民という言葉だ。


 エルグラードで最高部数を誇る貴族新聞、しかもトップ記事だけに読者や目にとめる者は非常に多い。


 そのような人々が安心した。酔い方向に捉えただろうということだ。


 自分や周囲のことに限ったことではなく、非常に大きな観点からの考察。それは王族妃として相応しい。


 講師達はリーナの感想に加点要素を見出した。



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