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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第六章 候補編
563/1357

563 学習室(三)

 部屋には側妃候補とペネロペだけになる。


 ペネロペは大きく深呼吸すると、側妃候補全員を見渡した後に言った。


「それでは……すでにご存じの方もいるとは思いますが、側妃候補教育の基本事項について説明します」


 まず、授業があるのは平日の午前中と午後。土日、祝日、特別な公式行事の日の授業はなく、休みになる。


 授業のある日は朝九時、学習室に集合する。時計の音が鳴り終わる前に学習室の自分の席に座っておく。


 最初は朝礼があり、担任であるペネロペが出欠の確認や当日通達をする。


 朝礼が終わると最初の授業、一時限目が始まる。


 授業は科目に応じて学習室ではなく、別の部屋で行うこともある。その場合、授業の開始時間までに部屋を移動しておく。


 後宮外で行われる授業もある。その場合は事前に何時にどこに集合するのかといった詳細が通達される。


「では、授業の時間割表を配りますので確認して下さい」


 リーナは時間割を見た。細かい授業のスケジュールが記入されている。


 平日の九時から九時十五分は朝礼。その後に一時限目の授業が四十五分。十時から十時半まで休憩。十時半から二時限目、十一時十五分からの三時限目は連続して行われる。


 十二時から十四時までの二時間は昼食。移動や着替え等の時間も含まれる。


 十四時から四時限目。十四時四十五分から十五時四十五分までの一時間はお茶休憩。


 十五時四十五分から十六時半までが五時限目。十五分の休憩と夕礼があり、十七時に終了する。


 沢山勉強しているようにも思えるが、休憩時間が多い。


 二と三時限目の間にはないが、それ以外の合間には必ず休憩時間がある。しかも、午前中の休みは最長三十分、昼食は二時間、午後のお茶休憩は一時間もある。


 休憩時間が非常に長いせいで、授業が終わる時間が遅くなっているようにも思えた。


「平日は九時から十七時まで授業等の予定があります。出席は強制ではありませんが、休む際は私まで連絡して下さい。遅刻と早退もできます。その際も必ず私の方まで連絡して下さい。でないと安否を確かめるため、後宮の警備に通報しなければならなくなります。おおごとにしないためにも、ご注意いただきたいと思います」


ペネロペは時間割表を手に取ると、リーナ達の方へ向かって見せるようにした。


「こちらを見ればどのようなことを勉強するのかわかるとは思うのですが、作法、歴史、社会、音楽、国語、数学、体育、保健、更に選択科目一、二、三の合計十一科目について勉強致します。選択科目につきましては、学びたいものを三つ選んでいただきます。では、選択科目の書類を配ります」


 新たに配られた書類を見たリーナはじっくりと内容を確認した。


 書類には選択科目が多数記載されている。その中から三つを選び、希望書に記入して提出する。


 但し、完全に自由に選択できるわけではない。


 選択科目は選択一、選択二、選択三の三グループに分けられており、各グループの中から一つずつ選ばなければならない。


 例え、選択一から三つ希望したくても一つしか希望できない。選択二と選択三からそれぞれもう一つずつ選ぶことになる。


 また、選択内容が一部変更になったため、新しい入宮者以外の者達も全員希望を出し直すことになった。


「すぐに選ぶ必要はありません。よく考えて希望の科目と名前を用紙に記入し、水曜日の朝礼時に提出して下さい。人数が少ないので希望通りになるかとは思いますが、何らかの事由によっては再考を求める可能性もあります。また、欠席される場合であっても、こちらの書類は必ず提出して下さい。今週の五時限目はありませんので、選択科目は来週の月曜から、それまでに結果を通知します」


 ペネロペは側妃候補達の服装を注視しながら言った。


「それと服装に関してですが、華美に装う必要はありません。今日は初顔合わせということもあり、各自相応のドレスを着用されていることかと思うのですが、普段の授業はもっと控えめで構いません」


 ペネロペはより細かい説明を始めた。


 体育の授業は基本的にダンスの練習になるため、動きやすい服装で参加する。昼食の時間が多く設けられているのは、ダンスがしやすいドレスや靴への着替えを考慮しているためだった。


 作法の授業では扇のような小物を使用することもある。しかし、授業に使用する小物を始め、様々な教材等は全て後宮側が用意するため、個人で用意したものを持って来る必要はない。むしろ、個人の所有物を持参して使用することはできない。


 原則として学習室へ来る際の手荷物は認めない。ハンカチや鍵など、どうしても所持する必要があるもののみ、ポケットに入れて持ち込むことができる。


 勿論、刃物、武器、それに類する危険物の持ち込みは不可。ペンやハサミ等の文具や護身用の何かであっても同じく。どうしてもという場合は許可を得る必要がある。


 帽子、手袋の常時着用は認めない。また、肌を露出するような衣装も避ける。


「次に呼称についての説明です。授業を受けられる九時から十七時までの間は学校に通っているのと同じとお考え下さい。授業をする者は教師や講師になり、側妃候補の方々は生徒や受講者という立場になります。生徒は身分や出自を誇示するような言動は控えて下さい。また、生徒として教師の意見を尊重して下さい」


 どれほど出自の身分が高くあっても、学校に通っている間は教師や生徒であることが優先される。


 そのため、教師は生徒が高貴な身分でも遠慮なく意見や注意をすることができ、それを不敬だと咎めることはできない。また、生徒は教師に対して自身との身分差等を誇示するような言動は控える。


 こういった独自のルールから、呼称は一律同じになる。


 教師や講師の呼称は名前に先生、生徒はファーストネームに様をつける。


 元の出自に関係なく互いを尊重するという意味合いの敬称であるため、公爵令嬢が男爵令嬢を呼ぶ場合であっても様をつける。


 リーナの場合はリーナ様と呼ばれることになり、レーベルオード伯爵令嬢とは呼ばれない。


 これは後宮内における側妃候補のルールであるため、後宮外においては出自や身分を重視した呼称で問題ない。


「身分や呼称の件では多くのトラブルが発生していました。各自ルールを留意し、間違いのないようにされて下さい」


 ペネロペは説明が終わると白い封筒を配った。


「こちらの封筒に今説明したことが書かれた書類が入っています。細かい説明もあるかと思いますので、持ち帰った後でよく読み、確認して下さい。取りあえず、ここまでで何か質問がある方は手を挙げて下さい」


 一斉に側妃候補達が手を揚げた。


「では、リーナ様からどうぞ」


 早速リーナは質問した。


「時間割表にある休憩についての質問です。休憩時間はどこで休憩するのでしょうか? 休憩室があるのでしょうか? それとも自室でしょうか?」


 リーナの質問に身構えていたペネロペはやや意外だというような表情をしながら答えた。


「休憩室はありません。基本は自室で休憩して昼食などを取っていただきます」

「でも、短い休憩もあります。その場合、自室に戻る時間がないと思うのですが」

「昼食とお茶休憩以外は学習室で休憩されて下さい。また、控室には侍女がいますし、廊下を出てすぐのところに化粧室もございます。休憩時間に利用し、授業中の利用、途中退席は極力控えるようにしていただきたく思います」

「わかりました」

「他に質問はありますか?」

「選択科目についても聞いていいでしょうか?」

「どうぞ遠慮なく」

「自習というのがあります。これは学習室に本などを持ち込んで勉強するのでしょうか?」


 ペネロペは自習についての説明をしていなかったことに気が付いた。


「いいえ。自習というのはご自身の部屋で勉強するということです。どのような勉強をするのかは自由になります」

「自由? 何でもいいのでしょうか?」

「そうです。ですので、自室で本を読んだり、参考書などを見て勉強をしたり、ご自身で決めた勉強をして下さい。夕礼には出席していただきたいのですが、不調等の理由がある場合は侍女をよこしてください。連絡事項を侍女に通達します」


 自習にすると、四時限目が終わる十四時四十五分から休憩が終わる十六時四十五分までの二時間は自室で過ごすことができる。


 以前は側妃候補の多くが自習を選び、部屋でゆっくりとくつろいでいた。


「質問は終わりでしょうか?」

「もう一つあります。外国語とあるのですが、これは何語のことでしょうか?」


 ペネロペはそれかと思いながら答えた。


「何語でも構いません。外国語を選ばれた場合、どの国の言葉を学びたいのかも記入して下さい。外国語に決定した場合は、その言語を教える講師を手配します」

「例えばミレニアス語と希望を書けば、ミレニアス語を学べるということでしょうか?」

「基本的にはそうなります。リーナ様はミレニアス語に興味がおありなのでしょうか?」


 リーナは即答した。


「いいえ。ただ、ミレニアスの文化とか伝統とか、別のことについて学べるのであればいいとは思います。そういったことは学べるのでしょうか? つまり、その言語を使用する国のことについてです」

「習うのはあくまでも言語だけです。それ以外のことについては学べません」

「そうですか」


 リーナの本当の出自はミレニアス。だからこそ、ミレニアスについて知りたくはある。


 しかし、あくまでも学べるのは言語であって、それ以外のことではないということを確認した。


「では、別の質問がある方は手を挙げて下さい」


 リーナ以外の候補者達が手を挙げる。


 ペネロペは順番に相手を指名し、その質問に答えた。


 リーナは他の者達の質問とその答えを聞きつつも、どの選択科目を選ぶべきかに頭を悩ませていた。



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