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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第六章 候補編

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562 学習室(二)

「レーベルオード伯爵令嬢の席は教壇前の中央。私はその右、ベルは左、後ろはゼファード侯爵令嬢になります。わからないことがあれば私やベルに何でもおっしゃって下さい。私達は王太子殿下とレーベルオード伯爵が認めた正式な学友ですから」


 カミーラはことさら正式な学友という言葉を強調した。


 カミーラ達はリーナに友人になるよう申し込んだものの、レーベルオード伯爵の許可がなければ友人になれない。


 そこでアリシアは王宮に戻るとすぐに王太子に伝え、王太子はパスカルが判断できることなのかどうかを確認した。


 パスカルによれば、この決定はレーベルオード伯爵家としての判断のため、当主の判断を仰ぐ必要があり、自分に決定権はないと答えた。


 すぐにレーベルオード伯爵が呼び出され、王太子、レーベルオード伯爵、パスカルの三人で話し合い、リーナ自身が友人とすべきかどうかを判断できるだけの猶予期間が必要不可欠という認識で一致した。


 その結果、リーナの友人としてすぐに認めることはできないものの、リーナを守る立場であるカミーラ達の優位性を確保すべく、王太子及びレーベルオード伯爵家公認の学友として認めることになった。


 学友と友人は同じではない。学友とはあくまでも学校や勉強を通して親しくするという限定的な意味がある。つまり、個人的な趣向や付き合いを含めるような友人ではない。


 とはいえ、リーナの保護者である父親、また、恋人である王太子が正式に認めた学友という部分は重要で、単に同じ側妃候補として学ぶだけの者達との差はかなりのものだった。


 リーナは自分の席だと言われた教壇前、中央にある席に座った。


 とてもいい席だわ。


 授業内容を聞き逃すことも、黒板に書かれた重要なものを見逃すこともなさそうだとリーナは思った。


 しかし、気になることがある。


 机や椅子の周辺を確認するリーナを見て、カミーラが声をかけた。


「どうなさいました?」

「ちょっと気になることがあって……」

「どのようなことでしょう?」

「授業を受けるのに教科書もノートも筆記具もありません。持参するようにとは聞いていないので、用意されているのだと思っていました。でも、この机には引き出しなどもないようですし、どうしてそういったものがないのかと気になって……もしかして、話を聞くだけでいいのでしょうか?」


 リーナの言葉は、授業を受ける意欲が高く、事前に準備や確認をしておこうと思ったからこそ気になったことだった。


 カミーラは噂通り真面目な性格だと思いながら答えた。


「教科書は授業の際に配られるそうです。筆記具は危険なため、テスト以外では基本的に使用しません」

「えっ?」


 リーナは驚いた。


「使用しないのですか? しかも、危険だからですか?」

「そうです」


 カミーラはより詳しく説明した。


「ペンは先が尖っているため、刃物や武器のような危険物の扱いになります。学習室にそういったものを持ち込むには許可が必要です。側妃候補というだけでは許可がありません。私やベル、ゼファード侯爵令嬢は事前に許可をいただいておりますので持ち込めます」

「私も筆記具が欲しいです。授業を受けるのであれば、絶対に必要だと思います。メモを取ったりしたいですし……メモ用紙の持ち込みも駄目なのでしょうか?」

「ノートやメモ用紙も許可制です。危険物を隠せるようなものは持参できません。許可のない者は、何も持たない状態で学習室に来ることになります」

「王太子殿下の許可を貰えばいいのでしょうか?」

「そうです」

「わかりました。後で聞いてみます」

「また何か気になることがあれば、遠慮なくお聞きください」

「ありがとうございます。イレビオール伯爵令嬢」

「カミーラとお呼び下さい。妹もイレビオール伯爵令嬢ですので被ります」

「わかりました」


 カミーラ自身も入宮したばかりではあるため、知らないことは多くある。だが、事前に兄やアリシアに確認していたからこそ、リーナの質問に答えることができた。


 早速自分が役に立つ存在であることを披露できたカミーラは満足そうに微笑みながら、わざとらしく以前からいる候補者達の方に視線を向けた。


 それは自分がリーナの味方であり、優位な立場であることを示すためだった。




 九時をあらわす時計が鳴った。


 学習室のドアが開き、一列になった状態で多くの者達が入室した。


「側妃候補の方々、おはようございます。改めてご挨拶させていただきますが、後宮長を務めるジョゼフ=ラーフォルズと申します」


 講義の初日、後宮の代表として最初に挨拶をしたのは後宮長だった。


「この度、新しい側妃候補が入宮されました。そのため、授業は全て最初からに戻ります」


 すでに何年もいる側妃候補達は予期していたことだけに何も言わなかったが、喜んでいる者はいない。


 これまでも追加で側妃候補が入宮するたび、進んでいた授業は全て最初からになった。


 古くからいる側妃候補ほど同じ授業を幾度となく受ける羽目になり、うんざりしていたのは言うまでもない。


 だからこそ、最初の方は大人しく授業に出ているものの、新しい候補が入宮した途端、同じ授業を繰り返し受ける必要性を感じないと考え、仮病などを理由に欠席する者達が続出していた。


「また、新しい教育係についても変更があります。これまでは教育管理部の者達が担当していましたが、今後は王宮の担当者が三名加わることになりました。ノア=カームヴェレック公爵、グエス=ファフニール伯爵、トマス=ローウェン卿です。では、代表としてカームヴェレック公爵よりお言葉を頂きます」


 紹介されたカームヴェレック公爵は柔らかい笑みを浮かべながら挨拶をした。


「私はノア=カームヴェレック。公爵位を頂いている。この度、王太子殿下にとって非常に重要な女性が入宮された。そこで、後宮においてどのような教育がされるのかを詳しく確認し、報告することになった。基本的には教育管理部とのやり取りにはなるものの、側妃候補の方々との面談や授業の見学等も予定しているため、私達の顔と名前を覚えておいて貰いたい」


 ノアの挨拶を聞いた後宮長は眉をひそめて尋ねた。


「授業を見に来るのですか?」

「何か問題が?」

「基本的に授業は女性のみが受けることになっております。そのため、教育官や講師等もほぼ女性です。男性が立ち入るのは歓迎できません」

「では、王太子殿下にその件をご報告し、どのように対応すべきか確認しよう。だが、王立歌劇場などでの課外授業等もある。一般の者達と一緒になるようなものであれば問題ないのではないか?」

「後宮の敷地外に関しては問題ありません」

「わかった。では、そういった授業を活用する方針で行こう」


 後宮長は頷くと、後宮の教育管理部の責任者である部長、副部長、教育係を紹介した。


 その後になってようやく学習室の担任の紹介になる。


「第一学習室の担任をしておりますペネロペ=ヴァンケッタと申します。どうぞよろしくお願い致します」

「では、この後はこの者より基本的な説明を受け、その後、初授業を受けていただくことになりますのでよろしくお願い致します」


 後宮長は一礼すると、教育管理部や王宮の担当者達と共に部屋を出て行った。



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