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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編

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520 入宮に備えて

 レーベルオード伯爵からの話が終わると、次はパスカルからの入宮に関する説明になった。


 入宮する際は保護者である父親レーベルオード伯爵も同行するが、パスカルは兄としてではなく、王太子の側近としての同行になる。これはより長い時間リーナに同行するための処置であり、兄としての同行ができないということではない。


 道路の渋滞、野次馬を避けるために王宮に向かい、王太子に謁見。王太子と軽い朝食を取った後は後宮に移動する。


 リーナの入宮は側妃候補としてだが、王太子の寵愛する女性が後宮に入るともいえる。そこで、後宮関係者との顔合わせを兼ねた出迎えとしての入宮式を行うことになっている。


 入宮式の後は今後についての説明があり、それが終わると部屋に案内される。


 昼食は自室、午後は後宮内の施設等の案内。


 夜は王宮に向かい、王太子と夕食。後宮に戻った後は就寝になる。


「土曜日は一日中予定が組まれているから大変だけど、日曜日はゆっくりできるよ」

「日曜日の予定はどうなっているのですか?」

「今のところ何もないかな」

「私は勉強をしにいくはずです。なのに、勉強の予定はないのですか?」


 リーナの真面目さをパスカルは好ましく思いつつ苦笑した。


「側妃候補としての授業は月曜日からだ。土曜日は予定が多いから、日曜はゆっくりと休養しておけばいい」

「そうですか」

「それから、リリーナ=エーメルとして後宮で働いていたことだけど」


 パスカルは父親の方に視線を向けた後、もう一度リーナに戻した。


「これまでは絶対に秘密にするようにと言われていたね?」

「はい」


 リーナは国の素性に関する調査でリリーナ=エーメルだと判明し、後宮で侍女見習いとして働いていた時期がある。


「今後は秘密にしなくてもよくなった」

「えっ?」


 リーナは驚きつつ確認した。


「では、リリーナ=エーメルではないかと聞かれた場合、一時期はそうだったと答えてもいいのですか?」

「嘘をつく必要はない。リーナは国の素性調査でリリーナ=エーメルであることが判明したと言われた。だから、本来の素性リリーナ=エーメルに戻り、後宮の侍女見習いとして働いていた。そうだね?」

「そうです」


 リーナはパスカルの説明通りだと思いながら頷いた。


「でも、後宮華の会で問題が起きた。リーナはその問題に巻き込まれてしまったせいで、一時的に保護されることになったね?」

「はい」


 リーナは侍女見習いが参加する借り物競争に出場した際、王族と書かれたカードを引いてしまった。


 他の者達のカードには王族の物と書かれており、リーナのカードも恐らくは王族の物と書かれるはずが、アクシデントによって王族しか書かれなかったのだと思われた。


 この件は後宮の不手際、処罰することになったものの、リーナは自分の番号が書かれたカードの内容を見て、その指示通りにしただけであるため、処罰対象にはならなかった。


 但し、どのような経緯でこのような問題が起きたのか調査をするための尋問を受け、更には後宮の不手際に関する重要証人として保護されることになった。


「保護期間中にリーナのことが調べられた。その結果、リリーナ=エーメルだという国の調査に間違いがあることが判明し、リーナは以前の素性に戻ることになってしまった。王太子殿下は国の調査ミスに対する保証として僕をリーナの後見人にし、リーナは第四王子殿下の侍女として働くことになった。間違っていないかな?」

「間違っていません」

「その後、父上はリーナを養女に迎えることにした。その方がしっかりと面倒を見ることができるし、保護できる。リーナはレーベルオード伯爵家の養女の手続きをして、リーナ=レーベルオードになった。これも大丈夫かな?」

「はい。大丈夫です」


 リーナはしっかりと確かめるように頷いた。


「ミレニアスから帰国後、リーナはレーベルオード伯爵家の養女として正式にデビューすることになった。更に王太子殿下の命令により、側妃候補として入宮することになった。そうだね?」

「そうです」


 リーナが頷くと、パスカルも頷いた。


「じゃあ、問題ない。これが事実であり、正当な説明だ。どうしても必要な時は、今の説明をすればいい。大丈夫だね?」

「大丈夫だと思いますけれど……うまく言えるかどうか不安です」

「多分だけど、わざわざ説明する必要はほとんどないと思うよ。素性調査書に載っている」

「素性調査書ですか?」

「リーナ=レーベルオードに関する素性調査書はあちこちにある。王太子府にもあるけれど、国王府や王子府、宰相府にもあるだろうし、後宮にもある。だから、そう言った場所で働いている上位の役職についている者達は知っているはずだ。ただ、インヴァネス大公夫妻の行方不明の娘であることは国家機密になる。ミレニアス王家も否定する方針だ。そのことについては秘密にしなければならない。別の者が話してしまった場合も、リーナからは何も言わないこと。自分からは何も言えないことになっていると答えればいい。わかったかな?」

「はい」

「父上も気を付けて下さい。一部の者が探りを入れているとか」

「手は打ってある。公安を動かした」


 内務省には国内における治安維持を担当する部門がある。その中にあるのが公安で、国家体制の維持、公共の安全を確保するための調査活動及び防止活動などを行っている。


 基本的に公安が動くのは国や王家を守るためであり、内務大臣や内務省高官などを守るためではない。むしろ、そのような命令をするのは権限を不当に行使していると見なされる可能性があった。


「公安を? 大丈夫なのですか?」

「問題ない。レーベルオードは王太子殿下の意向に添う形で守られるだけに過ぎない」


 リーナは王太子に寵愛されている。しかも、入宮するということは側妃になる可能性が高い。


 リーナやその実家であるレーベルオード伯爵家が様々に攻撃、誹謗中傷される可能性もまた高く、そのことが原因で王太子にも悪影響が出るかもしれない。そこで、公安は王太子のためにレーベルオードを守ることにしたというわけだ。


「内務省の身内ということもあるのでは?」

「それを言うのであれば、公安局長に貸しがあるせいでもある」

「父上はやたらとあちこちに貸しつけているようです。何か特別なことをしているのですか?」


 父親は息子の疑問に対する答えを教えた。


「私はこれまでにかなりの内示を辞退してきた。そのおかげで、今の役職につけた者達が大勢いる。公安局長もその一人だ。私に感謝するのは当然だろう」

「わかりやすくはありますが、内務大臣はそれでいいと?」

「万能な者を自らの手駒として使える。他の者達に対しても、何かあれば役職から引きずり落し、私を後任にするという牽制にもなる。どう転んでも不利益にはならない」

「内務大臣も父上をうまく活用しているわけですね」

「宰相と仲がいいだけあって狡猾だからな」

「父上もかなりの狡猾さです」

「その表現は正しくない。優秀だと評するべきだ。特に娘の前では」


 父親の言葉に息子はすぐに同意を示した。


「褒める言葉を間違えました。申し訳ありません」


 パスカルが謝罪の言葉を述べたため、この件についての話は終了した。



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