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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編

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503 入宮発表

 月曜日。


 王太子の強い要望により、レーベルオード伯爵令嬢が側妃候補として後宮に入ることを王太子府は正式に発表した。


 国王府も後宮に関する事項として、側妃候補が増えることを発表した。


 土曜日の音楽会に招待されていた者達のほとんどが、レーベルオード伯爵令嬢の入宮を予想したものの、側妃ではなく候補という発表にも驚いた。


 しかし、候補という部分を考えれば考えるほど、王太子は単に女性に夢中になって冷静さを失っているわけではない、慎重でじっくり考慮する王太子らしいと人々を納得させた。


 連日、王太子府はレーベルオード伯爵令嬢の入宮に関する内容を発表した。


 ただの候補とはいってもすでに王太子はレーベルオード伯爵令嬢と面識があり、高い評価をしているだけでなく寵愛の印として特別な指輪を与えている。


 特別な配慮がされるのは当然で、レーベルオード伯爵令嬢に対する言動には慎重を期さなければならない。でなければ、王太子への敬意を払わない者として処罰の対象になる。


 また、レーベルオード伯爵令嬢の身の安全を考慮し、同行する世話役の数を増やすだけでなく、身辺警護のために第一王子騎士団の護衛騎士が二十四時間警護をすることなども明らかになった。


 レーベルオード伯爵令嬢が王太子の特別な女性であることは疑いようもない。


 貴族どころか国民全てが王太子とレーベルオード伯爵令嬢の今後、更には実家であるレーベルオード伯爵家の動向に注目することになった。




 レーベルオード伯爵家は一気に多忙になった。


 仮面舞踏会が終わり、音楽会も終わった。


 ひと段落ついたはずだというのに、入宮の通達があった。


 しかも、入宮日は次の土曜日。あまりにも早いとしかいいようがない。


 リーナの入宮は以前からわかっていたため、これまでにも準備はしてきた。


 だが、より具体的な仕事が増えた。


 リーナの荷物は全て後宮に到着後に検分され、危険物などが混入されていないかを調べられる。


 土曜日になる前に荷物を送って検分を済ませておかないと、リーナは到着早々送ったものを使用できず困ることになりかねない。


 但し、リーナの身の回りに関するものは王太子の方でも用意しているため、必要ないものもある。


 用意されているものはかぶらないように持って行くものから外し、できるだけ荷物を少なくまとめておかなければならない。


 一番の問題は人選だ。


 リーナの後宮に同行する者達を選び、経歴書や身上調査書等を王太子府に送り、同行者としての後宮入りに問題がないかを確認して許可を貰う必要がある。


 それだけではない。屋敷にはレーベルオード伯爵令嬢の入宮を祝うカード、花、贈り物などが大量に届いている。それにも対応しなければならない。


 リーナは残された日々で自分のできることをしようと思っていたが、多忙なレーベルオード伯爵家の状況を放っておけるわけもなく、贈り物に関する仕事の手伝いをしながら過ごしていた。




 そして、水曜日。


 レーベルオード伯爵家に一人の女性が訪れた。


 その女性の名前はミネット。


 レーベルオード伯爵家の親族であるマーカスの娘であり、マリウスとは双子の妹だった。


 マーカスは音楽会の後、領地に戻る予定だったが、リーナの入宮が近日中であることがわかったため、多忙な伯爵家を手伝うべく滞在を伸ばしていた。


 ミネットが自分からレーベルオード伯爵家に来たのは、驚くべきこととしかいいようがなかった。


「私はレーベルオード伯爵閣下の恩情により、かろうじて生きながらえている身。レーベルオード伯爵家に養女を迎えられたことに対し、何もしないままではいけないと思い、お祝いの言葉を申し上げに参上致しました。父親と共に参上すべきところ、自らの処遇を深く考慮し、領地から出ることに悩んだ結果、遅くなってしまったことを大変申し訳なく思っておりますと共に深く謝罪申し上げます」


 ミネットは一族の長であるレーベルオード伯爵と面会した。


 そして、レーベルオード伯爵家への祝いの言葉と到着が遅くなったことを詫びた。


 ミネットがわざわざ領地から来たのは、レーベルオード伯爵令嬢となった者がどのような女性なのか、どうしても知りたかったからだった。


 ミネットは特別な恩情処置により、リーナとの面会を許された。


「リーナ様、ご紹介致します。妹のミネットです。レーベルオード伯爵領に住んでいますが、リーナ様にお祝いの言葉を申し上げるため王都に来ました」


 兄のマリウスが面会の際に同行した。


 ミネットは丁寧かつ基本通りの挨拶をした。


「ミネット・レーベルオードです。リーナ様とご面会できましたことに感謝すると共に、レーベルオード伯爵家の養女になられましたことをお祝い申し上げます」


 妹の挨拶を聞き、マリウスは目を細めた。


 心から祝うとしなかった部分が、ミネットの本心をあらわしている。


 しかし、何も言わずに状況を見守ることにした。


「初めまして。リーナです。マリウスに妹がいるということは聞いていましたが、領地に住んでいるため、会う機会がないかもしれないと思っていました。会えて嬉しいです。王都にようこそ」


 ミネットは父親のマーカスに共に王都に向かうかどうかを尋ねられたが、体調を崩していたため、領地に留まったことを説明した。


 しかし、やはりこのままではいけないと感じ王都に来たことも。


「そうでしたか。病を抱えるのは辛いことです。体調には気を付けて下さい。無理をしないように」

「ありがとうございます」


 面会はこれで終わりのはずだった。


 しかし、マリウスはこの後に予定されているリーナの付き添いとしてミネットの同行を願い出た。


「レーベルオード伯爵領から到着したばかりで疲れているはずです。ゆっくり休んで貰った方がいいのでは?」


 リーナの優しさが溢れる言葉にマリウスは微笑んだが、妹を休ませることに同意はしなかった。


「大丈夫です。リーナ様は忙しいため、妹のために貴重なお時間をいただくわけにはいきません。私も何かと忙しいので、妹に構う時間を取れません。ですので、同行させた方が何かと都合がいいのです」

「ミネットはどう思いますか? 遠慮なく答えて下さい。ゆっくり部屋で休みたいですか? それとも同行しますか?」

「同行させていただきたく存じます。領地にいる者達も、レーベルオード伯爵家の養女となられた女性がどのような者か知りたがっています。私はその者達に伝える役目もこなさなくてはなりません」


 リーナは頷いた。


「わかりました。同行を許します」

「ありがとうございます」


 マリウスとミネットの言葉が重なった。


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