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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編
496/1357

496 特別な控室

 王立歌劇場には様々な部屋がある。


 特別な客のための個室として使える場所や、側近や警備などの関係者達が利用できるような部屋もあった。


 そういった部屋の一室に、月明会専用の特別な控室として確保されたものがあった。


 月明会というのは、今回の音楽会を催すために新しく設立されたグループで、ここに所属する者達が音楽会の構想を考え、準備を整え、当日における指示出しもしている。


 つまり、音楽会の実質的な司令部だった。




 王太子がレーベルオード伯爵令嬢と共に音楽会デートを楽しんだ後、月明会の幹部及び監査はこの部屋に集まることになっていた。


 企画及び芸術関連の担当をしたのはロジャーの姉であるヴィクトリア・ノースランド。


 音楽会、舞踏会、バレエ、デート、国王と王妃への意趣返し、様々な要素を盛り込むため、芸術の非常勤講師を務めながら無類のオペラ好きとして足しげく王立歌劇場に通うヴィクトリアが全体の構想を練ることになった。


 王太子が催すのは音楽会。だが、それは国王が主催する舞踏会の日程が変更されたことや王妃がバレエ鑑賞会を行ったための選択だった。


 実際は音楽を楽しむだけの催しでもなければ、ただの舞踏会でもバレエ鑑賞会でもない。


 そこでヴィクトリアは音楽会を三部制にした。


 一部は音楽に合わせてバレエを上演するだけでなく、土間をダンスフロアにして舞踏会にしてしまうことにした。


 しかし、そのままでは音楽会を言い訳にした舞踏会だけになってしまう。


 だからこそ、第二部は舞台上で上演されるバレエの鑑賞へ戻す。


 こうすることで、レーベルオード伯爵令嬢が白鳥姫と金の王子のバレエを楽しむことができ、王妃主催のバレエ鑑賞会に出席できなかったことへの意趣返しにもできるとした。


 そして、第三部は夜会に移行する。


 王太子はレーベルオード伯爵令嬢への寵愛を見せつけるために音楽会を開いている。


 そのために協力したことの褒美としての夜会だが、実際は王太子がレーベルオード伯爵令嬢を見初めた話題を一気に広めるためのものだった。


 物品及び飲食物関連の担当はセブンの妹であるラブ・ウェストランド。


 かなり破天荒な性格で悪評も高く、我儘な王女のような女性だといわれている。


 だが、それはラブの一面をあらわしているだけに過ぎない。


 ラブは遊んでばかりいるように見えるが、学校の成績は常にトップクラス。多くの社交グループに顔を出すほどの活動力もある。


 その力を今回は良い方向に役立たせるチャンスが来た。


 ラブは極秘で音楽会の準備をするため、実家が経営するホテルを使い、必要物資を手配した。


 そのせいで最高級ワインの一部が新聞に詫びを出すほど欠品してしまったが、レーベルオード伯爵家の手配と被るようにすることで、音楽会のためであることをカモフラージュした。


 事前の極秘準備における全体管理を担当したのはヘンデルの妹であるカミーラ・シャルゴット。


 イレビオール伯爵家の長女で、強く太い眉がトレードマークの美女。飛び級を重ねて大学を卒業した知性と母親譲りの社交力を持つ。


 ヘンデルから音楽会のことを聞いたカミーラはヴィクトリアやラブを月明会に入れて準備をすることを決めた。


 音楽会の開催にあたっては極秘である必要がありつつも準備内容も多くなるだけに、進行状況や情報の収集と共有、伝達等をカミーラの方で管理することになった。


 監査役を務めるのはクローディア・ジュメレ。


 クローディアは第二王子の女性側近の一人で、アイスレディの異名を持っている。


 ヘンデルの妹達の催しが王太子のためであることが判明したため、王太子側と第二王子側の監査役となる女性がそれぞれ一名派遣されることになった。


 決定権は王太子側にあり、クローディアは王立歌劇場で開催される音楽会に問題がないかを調査し、第二王子と側近達に報告を上げるのが役目だった。


 王太子側の監査役を務めるのはアリシア・ウェズロー。


 アリシアは王太子の音楽会だけでなく、王宮におけるデート部分にも関わっている。


 現在は王太子の移動に合わせて王宮の方に戻っており、部屋にはいなかった。


「あー、疲れた」


 ラブはソファに座るとすぐに靴を脱ぎ、足を投げ出した。


「今夜は許してよね。今の内に足を休めないと、動けなくなるわ!」

「仕方がないわね」


 やれやれといった様子でヴィクトリアは答えた。


「靴を脱ぐのは行儀が悪いけれど、動いて貰わないわけにはいかないわ」

「一息つくのは結構。ですが、王太子主催の催しは終わってはいません。第三部の最中ですので、そのことを忘れないように」


 クローディアが注意すると、他の三名はわかっているというように頷いた。


「現時点において、特に問題はないと思っています。監査役の方はどうでしょうか?」


 カミーラはクローディアに尋ねた。


「問題はありません。第二王子殿下も満足されています」

「良かったわ」


 真っ先に安堵の声を上げたのはヴィクトリア。


 第二王子のエゼルバードは芸術をこよなく愛するために非常に厳しい評価をする。


 今回は音楽会、舞踏会、バレエ鑑賞会の要素をすべて取り入れるだけに、どれもが中途半端だと言われないようにうまく融合する必要があった。


 第二王子が満足しているというのは最高最大の評価であり、無事役目を果たせたようだとヴィクトリアは思った。


 突然、ドアが開いた。


 部屋に姿をあらわしたのはベルーガ・シャルゴット。愛称はベル。


 カミーラの妹で、イレビオール伯爵家の次女だ。


 今回は音楽会当日における運営管理の担当者を務めることになっていた。


 事前の準備や全体管理は姉となるカミーラが担当していることから、姉妹でつぶさに情報伝達ができる。


 ヘンデルとアリシアは王宮におけるデートの方も担当するだけに忙しく、第三部に移行した後は王宮に戻ってしまう。


 そこで、ベルが王立歌劇場における当日の担当者になり、他のメンバーと共に力を合わせながら、無事第三部が終わるまで監査するように言われていた。





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