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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第一章 召使編
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49 トラブル

「信じられない!」


 目覚めたリーナは時計を見た瞬間、最悪だと思った。


 寝坊してしまった。


 初めてのことだった。


 すでに五時を過ぎていた。


 リーナは帽子とエプロンを身に着けると部屋を出た。


 その後は遅れを取り戻すべく、必死に仕事に励んだ。


 しかし、このような時に限って掃除が手間取った。


 しかも、問題のあるトイレを発見した。


 水漏れだ。リーナには対処できない。

 

 午後の巡回中に見つけたため、リーナはすぐに清掃部に急いだ。


「すみません! セーラ様! 水漏れです!」


 慌てて駆け込んで来たリーナにセーラだけでなく清掃部にいた全員が驚いた。


「落ち着きなさい。どの程度ですか?」

「ポタポタです」


 酷くはなさそうだとセーラは思った。


 しかし。


「でも、水滴が大きいのです。落ちるのも早いです。雑巾ではすぐにグチャグチャになりそうだったのでバケツを置いてきました。何時間もそのままだと溢れます」


 修繕部も修理部も対応が遅い。


 急がなければならないようだとセーラは判断した。


「書類を作ります。修繕部はわかりますか?」

「わかります」


 セーラはすぐに書類を作成した。


「これを修繕部に持って行き、状況と場所を伝えなさい」

「巡回がまだあるのですが」

「残りの巡回はポーラにさせます。私から伝えるので、リーナは修繕部に急ぎなさい」

「はい!」


 リーナは急いで修繕部に行った。


 だが、まずは担当者が誰かを調べることになった。


 時間がかかったあげく、担当者がいないと判明した。 


 休みではない。修繕部にはいないだけで、後宮のどこかにはいる。


「担当者を探してこい! 問題が発生したと伝えろ!」


 修繕部の者は担当者がいそうな場所を教えた。複数あった。


「探す場所が多いので、緊急として走ってもいいでしょうか?」

「問題ない。水漏れは緊急だ。付近が水浸しになったら困る」


 リーナは一生懸命探したが、どこにもいなかった。


 困り果てて修繕部に戻ると担当者が戻っていた。


「問題のある場所がどこだかわからなくて」


 リーナは修繕部の者に伝えていた。だが、ちゃんと聞いていなかったのだ。


「二階です。ご案内致します」


 問題のあった場所に行くと、怒りの形相のポーラが待っていた。


「リーナ! 何なのよ、これは!」


 ポーラはバインダーを振り上げた。


「申し訳ありません。今は水漏れの問題があって」

「残っている場所が多すぎるわ! 残業なんて絶対しないわよ! 清掃部では残業したら無能扱いされるの! 元から無能な貴方がしなさい!」


 ポーラは巡回用のバインダーをリーナに押し付けて行ってしまった。


「僕を優先すべきだ。水漏れは緊急だよ?」

「大変申し訳ありません!」


 リーナは深々と頭を下げた。


 そして、すぐにドアを開ける。


「こちらです。一番奥の壁の配管です」

「バケツから溢れている。君が待たせた分、酷くなっている」

「本当に申し訳ありませんでした! すぐに交換します! 床もすぐに拭きます! 足元にお気をつけ下さい!」

「これは無理そうだな。修理を呼ぶしかない。時間がかかる。もっと大きなバケツが必要だ」

「大きいバケツ……」

「探して来て。修理部に報告する。バケツの水が溜まったら捨てておいて」

「はい!」


 リーナは掃除部へ走った。備品については掃除部の方が揃っている。


 マーサに面会すると、備品部から水漏れ用のタンクを貰うように教えられた。


「タンク?」

「バケツよりも大きいのです。そこに水を貯めて、手洗い場から捨てます」

「わかりました!」


 リーナは備品部へ走った。


 大きなタンクはリーナに運べず、備品部に運んで貰うことになった。


 届くまではバケツの水を一定時間ごとに捨てなくてはならない。


 バケツに水が溜まるまでには時間がかかる。


 リーナはポーラが残していった巡回を少しずつこなし、バケツの水を捨てるために戻るという作業を繰り返した。


「終わった……」


 リーナが自室に戻ったのは二十四時近く。


 食事も入浴も無理だった。


 お腹空いた……。


 リーナは思い出した。クオンから貰った菓子があることに。


「ああ、お菓子!」


 リーナは木箱を開けると、お菓子の箱を取り出して食べた。


 空腹のせいもあって、緑の控えの間で食べた時よりもはるかに美味しかった。


 甘さが口から体に染みわたり、疲れた体や気分を癒してくれるように感じた。


 クオン様……ありがとうございます! とっても美味しいです! おかげで救われました!


 リーナは厳しくも優しいクオンを思い出しながら菓子を食べた。


 そして、倒れるように眠った。


 



 その日を境に、リーナの仕事はトラブル続きになった。


 臨時の仕事が増えたせいで、遅い時間まで残業が続いた。


 リーナは一人で仕事をする。


 清掃部の者は残業をしない。十六時以降は全てリーナの担当だ。


 巡回をポーラに任せることになっても、ポーラは残業をしない。


 リーナが残業すればいいと言ってバインダーを押し付けに来た。


 残っている場所も多かった。


 ポーラは休憩を挟みながらゆっくり巡回し、賢くサボっていた。


 そのしわ寄せがリーナに来る。


 リーナは食事や入浴時間だけでなく睡眠時間もなかなか取れないようになった。


 疲労が溜まる。リーナはクオンから貰った菓子を食べた。


 沢山貰えて良かった……。


 それでなんとか元気を出そうとした。頑張ろうとした。


 しかし、駄目だった。


 リーナは勤務中に倒れた。


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