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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編

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472 信じられない結果

 王妃は信じられないという想いで胸がいっぱいになった。


 王妃主催の催しは王妃個人の名誉と威光だけでなく、王家の名誉と威光にも関わる。


 多くの者達が必死になって準備をし、万全を期す。


 催しは大成功を収め、王妃の名誉と威光は回復する……はずだった。




 王宮の仮面舞踏会の評判は王妃が想定していた通りにならなかった。


 規模や盛大さは圧倒的に王宮の仮面舞踏会が勝るものの、その内容についての評価が良くなかったのだ。


 王太子と弟王子達、宰相を始めとする中央省庁の要人達はレーベルオード伯爵家の催しに参加した。


 レーベルオード伯爵家では招待客の笑顔と祝福、華麗なる音楽と踊りで溢れかえる美しい夜を過ごせたことを高く評価する者達ばかりだった。


 一方、王宮では普段参加できないような身分の低い貴族が多くいたことに対し、身分主義者達や王宮での催しにおける権威や礼儀を重視する者達は不満を隠そうとしなかった。


 仮面舞踏会だったことが、より事態を悪化させた。


 仮面舞踏会は社交、交流の要素はあるものの、遊び、楽しむという要素が強く、通常よりも身分差が緩和される。ある程度は無礼講になるというのが暗黙の了解だ。


 だからこそ、王宮の催しにおける常連とはいえないような貴族の者達は、自分達が出席しても問題なく、多少の行動は多めに見て貰えるといった認識でいたこともあって、それをよしと思わない者達の強い怒りを買うことになった。


 参加者数があまりにも多すぎることは、ダンスフロアを狭めることにもつながった。


 舞踏会だというのに、ダンスを楽しめるのは一部の者達だけだった。


 食事や酒を楽しもうと思う者達もいたが、唸るほどのものではない。むしろ、通常よりも品質が劣ると感じた者さえいた。


 王宮の仮面舞踏会は蓋を開けてみれば期待外れ、見掛け倒しだと陰で囁く者達が続出してしまった。


 そして、最大の誤算は王妃の評判が悪化してしまったことだった。


 王妃は王宮での仮面舞踏会を盛大にすることで、レーベルオード伯爵家を処罰する意図を見せつけ、多くの貴族達を自分側に取り込み、味方につけようと考えた。


 基本的には自分の参加した催しの方、多数派を良く評価する。だからこそ、王宮の催しを盛大にして参加者を増やした。


 レーベルオード伯爵家の仮面舞踏会に出席した者達については問題視される。王族であれば尚更王宮の催しに参加するべきだろうという常識的な声が高まるはずだと推測した。


 ところが、そうはならなかった。


 王太子や王子達がレーベルオード伯爵家の催しに参加した理由が明らかになり、王妃が忠臣として知られるレーベルオード伯爵家を個人的に侮辱するだけでなく処罰しようとしたこと、王妃の催しの都合を優先させるために国王の催しの日程を変更させたことなどが問題視されてしまった。


 王妃の名誉と威信は大きく揺らぎ、傷つけられた。だというのに、王子達はともかくとしても、国王や側妃達まで何もフォローをしない。我関せずといった状態だ。


 レーベルオード伯爵家の催しに出席した重臣達は計画時から盛大過ぎる内容と予算に反対し、王太子との溝を深くするだけだと再三進言していた。王妃の味方をするわけがない。


 こうなった以上、一週間後に開かれる王妃主催のバレエ鑑賞会を成功させ、名誉と威信を回復させるしかないと王妃は感じた。


 側妃達はバレエ鑑賞会を非常に楽しみにしている。協力的であり、その傘下の女性達も支援するような言動をするだろうと思ってもいた。


 ところが、邪魔が入った。


 王太子の怒りは収まることなく、自分の催しを同日に催すことで王妃に対抗した。


 時間までぶつけるようなことはしなかったものの、開催場所は同じだ。そのせいで、先に催されるバレエ鑑賞会は強制的に調整されることになった。


 表向きの変更はないものの、時間を厳守しなければならなくなった。


 王妃や側妃達の都合であっても開演時間を遅らせることはできず、終演時間も絶対に予定通りに実行する。


 幕間の休憩時間のせいで後半の開始時間が遅れるのを防ぐため、休憩時間の長さはそのままであるものの、着席を促す鐘を早く鳴らし、進行を妨げないような配慮がされることになった。


 終演後のカーテンコールも一度だけ。その後の社交時間はなし。速やかな退場をうながすため、馬車を待つために滞在する薔薇色の間以外の広間は封鎖。


 正面出入口だけでは馬車がなかなかさばきにくいため、王宮や王立歌劇場近くにあるホテルに向かう直通馬車が大量に臨時運行され、できるだけ早く王立歌劇場から女性達を追い出し、夜の音楽会に向けての準備をすることになった。


 これでは王妃と王妃主催の催しを軽んじている。どう考えてもそうとしか思えない。


 しかも、軽んじているのは実の息子である王太子だ。


 文句を言いたくても、王太子の都合が優先になる。


 王太子は何もかも承知の上でしているだけに、文句を言っても無駄だった。


 王妃なのに! 母親なのに!


 王妃は心の中で叫んだ。ありえない仕打ちとしか言いようがない。


 レーベルオード伯爵令嬢に関する発言も、息子のためを思えばこそのものだった。だというのに、それが息子には伝わらない。


 あるいは伝わっていても、無下にされている。


 王妃の心は悔しさで溢れかえり、到底その気持ちを抑えることはできなかった。



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