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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編
447/1358

447 忠臣

 いつもお読みくださり、ありがとうございます!

 コツコツ書いてきた作品を多くの人に読んでいただけることは本当に嬉しい一方で、まだまだ至らない部分が多々あることへの反省と恥ずかしさも感じています。


 今回、複数の読者様から登場人物の容姿に関するお問い合わせがありました。

 様々に検討した結果、対応の一つとして「440 豪華な顔ぶれ」にて容姿に関する描写を加筆修正しました。

 もし、これまでに考えていたイメージと違うと思われたらごめんなさい(泣)

 大体同じだと思われた場合は予想が当たったということで。


 このペースだとまだまだ先は長く、作者としましても悩み、模索しながらの部分も多くありますが、これからもどうぞよろしくお願い致します!




 別室に移動したレーベルオード伯爵は王太子の許しを得て対面するソファに着席した。


 当然のことながら、激しい怒りが冷たい視線に込められ、王太子に向けて真っすぐに降り注がれた。


「王太子殿下、無謀です」

「必要なことだった」


 クオンはそう言うと、まっすぐにレーベルオード伯爵を見つめた。


「ミレニアスとの交渉が全く進展していない。戦争を避け、話し合いで解決するならその方がいい。だが、十分に時間はあったというのに、何も進展していない」


 クオンは自らの中にある怒りを言葉に込めた。


「リーナの入宮時期は未定のままだ。先延ばしされ、勅命で他の者と婚姻しろと言われるような状況を待つわけにはいかない。状況を打破するためには、リーナとの関係を何らかの形で公表するか、入宮につなげるためのきっかけが必要だった」


 クオンは自らの考えをレーベルオード伯爵に説明した。


「リーナに特別な祝福を与えることにした。先に話せば、反対されるかもしれない。いかにも仕組んだと思われたくもなかった。この件で騒ぐ者がいても、私の意向はわかっている。レーベルオードにとって悪しき影響が出れば、私の方で対応する。レーベルオードは守られる」


 レーベルオード伯爵は黙ったままだった。


 クオンも同じくレーベルオード伯爵をじっと見つめたまま無言になった。


 互いに一歩も退かないにらみ合い。


 それはレーベルオードが王族に求められるがまま従うだけの臣下ではないからこその状況だった。


 クオンはこうなることを予想していたからこそ、二人の側近を同行させていた。


「このまま時間が経つのはもったいないよ。キルヒウスもそう思わない?」


 ヘンデルが発言した。


「貴重な時間を無駄に費やす意味はない。舞踏会は続いている。第四王子がうまく場を収めているかわからない。未成年で仮面を被っていることが懸念材料になる」


 キルヒウスもヘンデルに応える形でにらみ合いをやめさせるべく動いた。


「第四王子殿下はこの件についてご存知なのか?」


 レーベルオード伯爵はキルヒウスに視線を移して尋ねた。


「ダンスの後、場が騒がしくなる可能性がある。王太子殿下、レーベルオード伯爵、パスカルは退出することになった場合、うまくその場を収めるようにという指示を王太子殿下が伝えていた」


 クオンは自分が退出したあとのことについては、セイフリードに対応を任せていた。


「レーベルオード伯爵家は王族の視察を受け入れた。だが、名門貴族と呼ばれるような家柄であるからこそ、些細な問題でも起こしたくはない。レーベルオード伯爵家であればどんな大醜聞にも負けない、大問題が起きても大丈夫だと思われているのであれば、それは間違っている。忠臣の忍耐力を試すようなことをすべきではない!」


 ヘンデルもキルヒウスは、レーベルオード伯爵の気持ちを理解できた。


 自分たちの家も誇り高い家柄だけに、簡単には揺るがないと思われやすい。


 だが、揚げ足を取ろうと狙っている者が大勢いる。


 醜聞は避けたい。どんな些細な問題も起きてほしくはなかった。


「王太子殿下は絶対に謝罪しない。だから、俺から謝罪する。王太子殿下を止めることができなかった。レーベルオード伯爵、申し訳なかった」


 ヘンデルはいさぎよく身代わりになった。


 首席補佐官としても友人としても務めなくてはいけない。それがヘンデルの役目だった。


 だが、レーベルオード伯爵の怒りはヘンデルの謝罪だけで消えるものではなかった。


「ヴィルスラウン伯爵の対応は忠臣として正しい。立派だが、私の怒りをその程度で収まるものと思われたくはない。私がいかに家族とレーベルオードを大切にしているかは誰もが知っている!」

「キルヒウスも頭を下げてよ」

「レーベルオード伯爵、心痛は察する。だが、王太子殿下が決めたことだ。王太子派だろう? 真の忠誠心を見せることで収め、次へ進むべきだ」

「次? まだあるということか?」


 レーベルオード伯爵は驚いた。


「仮面舞踏会が終わったあとのことだ。王宮とレーベルオード伯爵家の催しを比べる話題が上がるだろう。だが、王太子殿下は令嬢と共にレーベルオードを守る。王妃への配慮は一切しない。王太子府と王子府は王太子殿下に従って動く。宰相府も協調することになっている」


 クオンは二つの仮面舞踏会が終わったあとについて、すでに指示を出していた。


「王太子殿下は先を見据えて考えられている。娘が側妃に選ばれる栄誉が予定されていることを喜ぶべきではないか?」


 キルヒウスなりにとりなしたつもりだったが、レーベルオード伯爵は納得しなかった。


「予定などいくらでも覆る。過程がどうでもいいわけではない!」

「私はレーベルオードを信じている。従ってほしい」


 クオンはレーベルオード伯爵に理解を求めた。


「今夜の出来事は大勢の者達が目撃した。私に望まれる形でリーナは入宮するとわかる。側妃候補という形にはなるが、リーナが側妃同然に配慮され、守られるようにする。王宮での社交デビューについても予定している」

「王妃に邪魔されたから、他の催しでデビューしないといけない。だから、臨時の催しでデビューさせるから」

 

 ヘンデルが補足した。


「臨時の催し?」


 ヘンデルはにこやかな表情で臨時の催しに関する説明をした。


「……という感じ。レーベルオードが真の王太子派だということを示せるよ。良かったじゃないか」


 レーベルオード伯爵は黙り込んだ。


 拒否権はない。


 王太子が目指すものもわかっている。


 王太子の信頼に応えたくもある。


 だからこその沈黙だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] これは………………嫁にくれと正式に言われた時に殴っても許される(笑)案件(笑) まぁ、実際には身分差がそれを許さないけど、手、出そう(笑)
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