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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編

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444 仮面の舞踏会



 舞踏の間に残された者達はざわついた。


 司会役を務めるマーカスも動揺しており、この状況をどうやれば収めることができるのかわからなかった。


「お前たち!」


 叫んだのは壇上の特別席にいるセイフリードだった。


「レーベルオード伯爵家が祝福を与えられたという言葉を聞いていなかったのか? 特別な者から直接祝福されることがいかに名誉なことかわからないのか?」


 セイフリードは怒りをあらわにしながら仮面を取った。


「兄上の言葉を正しく理解できないような者は出ていけ! 今宵は仮面の舞踏会だ! 本物の仮面がなくても、心の仮面を用意して被るのが礼儀だろう! レーベルオードを祝福しろ! 大いに楽しめ! 音楽を鳴らせ! 皆で踊りまくれ!」


 セイフリードの言葉にマーカスはハッとした。


「皆様、今宵は仮面の舞踏会でございます! 目に見えない仮面であれば、いつでもご着用が可能です。ドレスコード上の問題もございません。美味なる酒杯を傾け、華麗なる音楽とダンスを心ゆくまでお楽しみください!」


 招待客は絶妙な言葉に笑みを浮かべるしかなかった。


 確かに、今夜は仮面の舞踏会。


 本当の仮面を着用することができる者に関しては条件がある。しかし、目に見えない仮面であれば、いつでもどこでも本人次第で被ることができる。


 王太子の言葉は絶対だ。


 レーベルオード伯爵家に与えられたのは王族からの直接的な祝福――つまりはリーナへの口づけを祝うべきだった。


「さすがレーベルオード伯爵家だ。ただの仮面舞踏会ではない!」


 高らかに宣言したのは、壇上の椅子席に座っていた者だった。


「私は大いに楽しみたい! 仮面を被る必要はないだろう!」


 レイフィールは仮面を取り去った。


「今宵は美しく輝かしい! 祝福は栄誉だ! 拍手で示せ! 大拍手だ!」


 レイフィールが拍手をした。


 それに合わせ、すぐに大きな拍手が響き渡った。


「レーベルオード伯爵家に祝福を!」

「レーベルオード伯爵家に祝福あれ!」

「栄誉を讃えよ!」


 次々と声が上がった。


「音楽を鳴らせ!」

「もっと踊らせろ!」

「酒を持って来い! 乾杯だ!」


 すぐに音楽の演奏が始まった。


 荘厳な前奏部分に続き、場を盛り上げるような華々しい音が響き渡る。


 その調べはワルツになった。


 招待客は次々とダンスフロアに移動した。


 踊らない者は続々と給仕される酒のグラスを高く掲げ、乾杯のあとに飲み干した。


 レーベルオード伯爵家の仮面舞踏会は音楽と酒と、招待客の笑顔で埋め尽くされた。




 その光景を見ながら、エゼルバードはつまらなさそうな表情をしていた。


 なぜなら、自分は仮面を取ることができない。


 ミレニアスの王族が来ていることを教えるわけにはいかないため、絶対に仮面を取らないことが参加の条件になっていた。


 エゼルバードはミレニアス王族の同行者枠。同じ条件だった。


「ワインを飲んでいればいい」


 フレデリックが諦めろというような表情でそう言うと、セイフリードが叫んだ。


「おい! ここにいる僕の兄にワインを持って来い! 酔い潰してさっさと追い出す!」


 セイフリードが自分の正体を暴露したことにエゼルバードは驚いた。


 すぐにレイフィールが笑い出す。


「笑える! お前が配慮をするとは思わなかった!」

「配慮じゃない。これは作戦だ。音楽がうるさいせいで、全員には聞こえないが」

「私も作戦を展開する。エゼルバードには白ワイン、私には赤ワインだ! セイフリードはジュースだけだ。未成年だからな!」


 大声で名前を叫ぶのは作戦ではない。


 ただの暴露です。


 セイフリードとエゼルバードは心の中で呆れた。


 だが、自分が誰かを隠す意味が完全になくなったことについては安堵を感じ、窮屈さと不満もまた解消された気がした。


「仕事中に飲むのか?」

「酔いつぶれても大丈夫だ。補佐がいる」


 レイフィールは届けられたワイングラスを高く掲げた。


「祝福に乾杯!」


 エゼルバードはそれに合わせるようにグラスを掲げた。


 セイフリードも同じように高く掲げたものの、ジュースを飲むことはなかった。


「ジュースは嫌なのか? だが、未成年の者だとわかってしまった以上、酒は飲めない」

「これはオレンジジュースだ。リンゴジュースがいい」

「僕はリンゴジュースよりもブドウジュースがいいです」

「白ブドウの方がいい」

「まさかと思うが、俺だけ新しい飲み物が用意されないのか?」


 フレデリックが声を荒げる。


 すぐにエゼルバードが反応した。


「では、セイフリードのオレンジジュースを飲みなさい。貴方は飲み過ぎると失態をおかしそうです。ジュースの方がいいでしょう」

「一杯だけなら我慢できなくもない」


 フレデリックはセイフリードに手を出した。


「寄越せ」

「誰がやるか! 王族の手にした飲み物を与えるわけがないだろう!」

「毒入りかもしれないぞ? 味見してやる」

「お前に渡すぐらいなら、毒物検査官に渡した方がいい」

「やめなさい。ここはレーベルオードですよ? セイフリードの飲み物は最も安全です。疑うのであれば、ワインの方でしょう」

「ワインの方がわかりにくいということか?」

「祝宴に相応しくない言葉を発するほど酔いが回っているようであれば、安いワインに切り替えられるということです」

「ワインを持って来い! 美味いなら安物でもいい!」

「呆れる。レーベルオードが安物のワインを出すわけがない」


 音楽が大きく鳴り響いているせいで、人々は壇上にいる特別な者たちの会話をはっきりと聞き取ることはできない。


 だが、飲み物を用意させ、乾杯のために高く掲げ、会話を続けている様子はとても楽しそうに見えていた。


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