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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編

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443 突然の口づけ

 読者の皆様へ


 いつもありがとうございます! 驚くべきことに、日間ランキングで五位になりました!

 長期間連載を続けてこれたのは読者の皆様のおかげです。そして、感想やご指摘、ご声援をいただいたこと、評価やブックマークをつけていただけたことが励みや心の支えになり、このような結果につながったのだと思います。

 本当にありがとうございました! 心より深く感謝申し上げます!

 まだまだ未熟ではありますが、これからもコツコツと頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願い致します!


 リーナの頭の中は一瞬にして混乱した。


 私……クオン様と……?


 リーナは間違いなくクオンと口づけをしていた。


 どうすればいいの?


 だが、どうすることもできないまま。


 やがて、クオンの唇がリーナの唇から離れた。


「これで私のものになるしかない」


 クオンの声は静かではありつつも決定的なそれだった。


 リーナは未婚の女性。年齢的にも結婚適齢期。常識的に考えれば、社交界にデビューして結婚相手を探す。


 レーベルオード伯爵の娘であれば、養女であってもかなりの人々が縁談を考える。


 しかし、正式なお披露目の催しで異性と口づけを交わしたことがわかれば、大問題。


 下手をすれば大醜聞だった。


 当然、相手は誰か、どちらからしたのか、どんな状況だったのかなどということが社交界で話題沸騰になる。


 レーベルオード伯爵家としてはこの問題を引き起こした相手、リーナに口づけをした者に責任を取るように要求するのが筋になる。


 独身者であれば婚姻あるいは婚約を要求してもおかしくはない。


 それが普通。常識。


 だが、相手はクオン。王太子だった。


 王太子は女性関係が極めて慎重なことで知られている。その王太子が女性に口づけをしたということであれば、大騒ぎになるのは必至だった。


 ただ、大醜聞にはならない。


 王太子に口づけされた女性は特別な栄誉を与えられたことになる。


 そして、誰もが認識する。


 王太子はその女性を選んだこと、自分のものであることを強く示したのだと。


「驚かせてしまっただろう。実は、私も驚いている。このようなことをしたのは初めてだ。だが、とても嬉しい。本心を示すことができた」


 クオンはリーナとの関係を公にしたかったが、難しい状況だった。


 このままでは時間が過ぎていくだけ。


 ミレニアスとの交渉の行方が望まない方向、政略結婚へ傾き回避しにくい状態になる前に動かなければならない。


 強引に進めることへのためらいがあるが、自らの信念を突き通すには前進するしかないのもわかっている。


 覚悟が、大きな一歩が必要だった。


 今夜、それがようやくできた。


 クオンが本心から望む未来が何かを人々に示した。


「このままでは大問題になってしまう。レーベルオード伯爵に説明しなければならない」


 大問題という言葉に、リーナは一気に表情を張り詰めさせた。


「お父様とお兄様に迷惑が……」


 リーナの瞳から涙がこぼれ落ちた。


「大丈夫だ。私に任せておけばいい」


 クオンはリーナの手を引き、レーベルオード伯爵の元に向かった。




 レーベルオード伯爵は冷静さを必死に取り戻そうとしていた。


 王太子とは細かい部分まで打ち合わせをした。しかし、このような予定はなかった。


「パスカル」

「何も聞いていません」


 パスカルも父親と同じく驚いていた。


「私が話す」

「はい」


 レーベルオード伯爵の頭の中はレーベルオード伯爵家と娘の名誉を守るためにどうするかを考え始めた。


「重要な話がある。時間を取れ」

「わかりました」


 この場で話すことによって公にするのではないのか。


 そう思いながらレーベルオード伯爵は答えた。


「ですが、あえて申し上げます。お立場を考えください。さすがに想定外です」


 この言葉により、周囲の人々はこれがあらかじめ決められていた演出ではないことを悟った。


「魅力的な令嬢に興味を持つ者は多い。こうしておけば邪魔者が減る」

「今夜は披露の催しです。だというのに、このようなことがあっては何を言われるかわかりません」


 レーベルオード伯爵の言い分は正しい。


 自分の娘を華々しく披露するための催しで問題になるようなことが起きるのを歓迎できるわけもない。


 そのことはクオンも、広間にいる人々も理解していた。


「忠臣よ、案ずるな」


 クオンは仮面を取った。


 それは自分が誰であるかを教えるという意思表示だった。


「私が誰かを知る者が多くいるだろう。聞け!」


 クオンは周囲を見渡すようにしながら強く声を張り上げた。


「今宵は仮面舞踏会だ。仮面を被るがゆえに隠されてしまうこともあるだろう。だからこそ、私が教える。レーベルオード伯爵家に与えられたのは王族からの祝福だ!」


 クオンはパスカルの方に顔を向けた。


「パスカル、妹を休ませてやれ。祝福が強過ぎたようだ」

「御意」


 パスカルはリーナを守るように優しく抱き寄せた。


「別室で休もう。僕がエスコートする」

「申し訳ありません」

「大丈夫だよ。奇跡が起きたんだ」

「ヘンデル! キルヒウス!」


 パスカルがリーナを連れて移動し始めると、クオンは自らの右腕と左腕と呼ばれる側近たちの名前を呼んだ。


「レーベルオード伯爵と話をする。ついて来い」

「御意」


 二つの返事が重なった。


「今宵は美しく輝かしい。皆も楽しめ!」


 クオンは二人の側近、レーベルオード伯爵、目立たないように控えていた護衛騎士達を連れ、舞踏の間を退出した。


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[一言] ]_・)色々言ってるけど、他の人に取られるのが嫌で慌てたから、キスした王太子(笑)
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