426 噂あれこれ
「どうしてですか?」
リーナは不思議だった。
「私は第四王子付きでした。お兄様はセイフリード王子殿下の側近です。距離を置いたらおかしい気がするのですが?」
「噂があるのよ」
「第四王子殿下とのね」
「噂?」
リーナは全く知らなかった。
「ミレニアスに同行したでしょう?」
「第四王子付きとしてね」
「それが何か?」
「レーベルオード伯爵家がりーナを養女にしたのは、リーナを第四王子殿下と結婚させるためだという噂があるのよ」
「リーナが第四王子殿下に気に入られて、レーベルオード伯爵家の養女にするよう言ったという噂もあるわ」
「私がセイフリード王子殿下に気に入られて?」
リーナは驚いた。
「いつも怒られてばかりでしたが?」
「本人や周囲が何を言っても、噂は勝手に独り歩きするものなのよ」
貴族の社交界はあらゆる噂に満ちていると言っても過言ではない。
根も葉もないことを疑われ、面白おかしく、あるいは悪く言われてしまうことが普通にある。
「第四王子殿下がお披露目に来るのも、リーナに会うためだと思う者もいるのよ」
「無責任な噂に火が付くと、消すのが大変だわ」
アリシアとメイベルは、リーナとセイフリードとの関係を疑う噂を警戒していた。
「二人の心配はわかる。でも、それはそれでいいかもしれないよ?」
ジェフリーが意見を出した。
「レーベルオード伯爵家とつながりを持ちたい者は大勢いる。パスカルと結婚したい女性がとても多くて大変だ。そこで養女にしたリーナ嬢との縁談を考えるかもしれないよね」
「否定はしないわ」
「普通にありえる話ね」
「でも、レーベルオード伯爵令嬢が今後どうなるかは決まっている。縁談が山ほど来るのは困るし、第四王子殿下との噂で牽制できるかもしれない」
王族が目をつけている女性に縁談を申し込むのは得策ではないばかりか、無礼になりかねない。
貴族同士の政略に巻き込まれないように、セイフリードを縁談よけとして活用できるのは確かだった。
「そうね。でも、実際は第四王子殿下よりも上なのよね」
「そうよね」
リーナに目をつけているのは第四王子ではなく王太子。
「それはそれで噂になると大変だわ……」
「そうよね……」
アリシアとメイベルはより深いため息をつくことになった。





