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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編

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424 侍女と元侍女



 仮面舞踏会の会場をリーナたちが確認していると、メイベルが到着したという知らせが届いた。


 リーナが正面玄関にいくと、飾りのついた帽子をかぶった女性がいた。


「メイベルさん!」


 リーナは嬉しさが込み上げ、名前を呼んだ。


「この度は本当におめでとうございます。夫のエンゲルカームに代わってご挨拶するとともに、心からお祝い申し上げます」


 エンゲルカーム卿の妻として挨拶をしてきたメイベルに、リーナは慌てて自分の無作法さを反省した。


「すみません。つい嬉しくて……お心遣いありがとうございます。心より歓迎いたします」

「相変わらずですが、リーナ様らしくてよろしいかと」


 メイベルはくすりと笑うと名前を呼んだ。


 但し、様付け。


「メイベルさん、私は上司どころか同僚でさえありません。ご挨拶しないまま辞めてしまい、申し訳ありませんでした」

「お気になさることはありません。事情はわかっています。それよりもエンゲルカームの方でお呼びください。仕事上知り合いであっても、社交には社交のルールがございます。どうかご注意を」

「わかりました」

「早速ですが、私はここに来たのは重要な仕事を任されたからです。重要な荷物を届けること、整理する役目を任されていることはご存知でしょうか?」

「お荷物が二種類あると聞いています」

「実際は三種類あります。私の荷物には紫の札がついています。水色の札がある荷物は私の仕える方のもの、赤い札の荷物はヴィルスラウン伯爵のものです。それぞれの部屋に運んでいただけるようお願いいたします」

「わかりました」


 今回の宿泊客の中にはヘンデルもいる。


 当日は大勢の客が来るため、宿泊者の荷物は前日から受け付けることになっていた。


「札の色で判断できるようにしていただけたようです。間違いがないようにしてください」

「かしこまりました」


 玄関ホールに待機していた侍従が恭しく頭を下げた。


「ところで、ウェズロー子爵夫人は到着しているのでしょうか?」

「会場を見ています。まずは宿泊するお部屋の方にご案内します」

「私が仕える方の部屋を先に見せてください。最優先事項ですので」

「わかりました」


 リーナは自らメイベルを案内することを侍従に告げ、アリシアにもそのことを伝えるよう指示を出した。





「こちらのお部屋です」

「控えの間もあるのですね」


 貴族の屋敷は廊下からすぐに居室や寝室につながっていることが多い。


 だが、セイフリードのために用意されていた部屋は小部屋を通って入るようになっていた。


「小部屋には部屋付きの御用聞きが待機します」

「侍従ですか?」

「男性のお客様には侍従がつきます。身分を考慮して二名です」

「でしたら、侍従は廊下で待機させてください。私は既婚者ですが、異性の者と同室はできるだけ遠慮します。侍女が控えるということであれば、同じ部屋でも構いません。私付きの侍女はつくでしょうか?」

「要望を聞いてからということになりました。つけた方がいいでしょうか?」

「では、侍女を一名つけてください。私はできるだけお側を離れるわけにはいかないので、頼めることは頼みたいと思っています」

「わかりました」


 メイベルはセイフリードが泊まる部屋を順番に確認し始めた。


 そして、衣裳部屋にある壁と同じ色のドアの前で止まった。


「このドアは?」

「隣の部屋につながっています。お兄様の衣装部屋です」

「レーベルオード子爵の部屋が近いということでしょうか?」

「配置としては隣です。兄が対応することが多くなりそうなので、最も近い部屋を客間にしました」


 パスカルの部屋の隣はレーベルオード子爵夫人のための部屋になるが、現在は空いている。


 そこでセイフリードのための客間にすることになった。


「直接廊下から入れないので、プライバシーを守りやすく、警護にも向いています」

「私の部屋とヴィルスラウン伯爵の部屋はどこになりますでしょうか?」

「ヴィルスラウン伯爵とエンゲルカーム夫人は二階です。護衛は三階です」

「護衛の部屋は近いのでしょうか?」

「すぐです。お兄様が決めたので、配置的に問題はないと思います」

「それなら安心です。では、私の部屋を見る前に、水色の札がついた荷物に問題がないか確認します」

「私も手伝いましょうか?」

「いいえ。これは私の仕事です。手伝いが必要な場合はウェズロー子爵夫人に頼みます。持ち物に関する内容を教えるわけにはいきませんので、作業を見ることもできません」

「わかりました」


 リーナは元第四王子付きの侍女だったが、現在は違う。


 セイフリードの荷物を確認する手伝いもできなければ、作業を見ることさえできない。


 リーナは侍女ではなくなったことが寂しかった。


 セイフリード様にたくさん教えていただいたのに、ご恩を返せない……。


 落ち込むリーナを見て、メイベルは第四王子付きの侍女らしくいることができなかった。


「元気を出して。レーベルオード伯爵令嬢としてしなければならないことがあるでしょう? あれもこれも全部自分でするなんて無理だわ」

「そうですね」

「荷物のことは私に任せて。リーナは王家で最も気難しい王子が来た時の担当よ。暴言が飛び出したら大変だから、頼むわよ!」

「はい!」


 メイベルの言う通りだとリーナは思った。


 自分には自分のすべきこと、担当がある。


 よくよく考えると、セイフリード王子殿下が視察に来るなんてとっても大変です!


 リーナは最善を尽くそうと思った。



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