420 怒る者
リーナのお披露目の催しが開かれる二日前。
王宮では激怒している者がいた。
「どういうことだ?」
クオンはお披露目の催しに出席する者の最終リストを確認していた。
「エゼルバードが出席するとは聞いていない! ダメだとロジャーに言ったはずだ!」
「だよねえ。俺も驚いた」
ヘンデルは先にリストを確認している。
晩餐会のみというヘンデルの提示した内容をロジャーは断った。
エゼルバードは仮面舞踏会を見たい。それができないのであれば断るということだった。
「インヴァネス大公子の同行者枠を使うとは思わなかった」
フェリックスは未成年。絶対に同行者が必要になる。
一人にすると、フレデリックが保護者として来るのは明らか。
ミレニアス王族を護衛なしの状態にするわけにはいかないだろうという配慮で、追加の同行者枠を二名分設定した。
普通なら側近あるいは護衛騎士が一名ずつつく。
ところが、その枠をローワガルン大公子ルーシェとエゼルバードが利用した。
「ローワガルンの大公子が来ることについては俺も知っていた。インヴァネス大公子の親友だし、仕方がない。でも、残る一人の名前がわからないって、パスカルもレーベルオード伯爵も困っていた」
パスカルとレーベルオード伯爵は、エルグラードに来るまでの手配をしているセブンやロジャーに何度も確認した。
だが、エルグラードに来る者の名前はわかっても、その中の誰がレーベルオードの催しに来るのかはわからないと言われるだけだった。
「レイフィールも軍の責任者として行く。セイフリードも視察で行く。行かないのは私だけではないか!」
「国王も行かない」
「当たり前だ! 国王主催の催事がある!」
レーベルオード伯爵の進言に王妃は激怒しており、その情報が漏れて貴族の間でも話題になっていた。
王妃は王宮の催事の準備が遅延していることを理由に、開催日を変更するよう国王に進言した。
その結果、開催日はリーナのお披露目の催しと同じ日になったばかりか、内容も夜会から仮面舞踏会に変更されていた。
どう考えても、王妃がレーベルオード伯爵家の催事を邪魔するために変更したのは明らかだった。
「母上も母上だ! レーベルオード伯爵の忠言に腹を立て、父上を騙して日時や内容を変更させた!」
「悪知恵が働くのは確かだねえ」
「やけに冷静だな?」
「怒りたいのを我慢しているだけ。これから起きる問題にどう対応すればいいかを考えないといけないからさ」
「そうだな」
クオンは目をつぶり、自らの中にある強い怒りを抑え込んだ。
「リーナのお披露目は絶対に成功させなくてはならない」
「第四王子と第二王子が鉢合わせするとなると、頭が痛いねえ」
第三王子が間に入っても、言い合いが始まったら抑えられないだろうとヘンデルは思った。
「緊急会議をする。パスカルを呼べ。レーベルオード伯爵も至急だ!」
「パスカルはこの件をキルヒウスに説明中。レーベルオード伯爵にはすでに伝令を出した。王宮に向かっていると思う」
「キルヒウスとクロイゼルも緊急会議に参加させる」
やっぱりそうなるよねえ……。
クオンがどうするつもりなのかをヘンデルは察した。





