417 兄への相談
夕食のあと、リーナはパスカルに時間を取ってもらった。
相談内容は模様替えについて。
「ウォータール・ハウスの内装を白くして、明るくしようと思うのです。その方がレーベルオードらしいですよね?」
リーナの案を聞いたパスカルは大賛成をした。
「さすがリーナだよ。当たり前のことに気づいていなかった」
レーベルオード伯爵家の色は白。
だが、ウォータール・ハウスの玄関ホールは白くない。
建てられた当時は白い内装が多かったが、改装されて別の色になってしまった。
現在の玄関ホールは茶色い壁で赤い絨毯が敷き詰められている。
外光が直接入らなくなるような改装をしたせいで、昼間であっても灯火がないと非常に暗い状態だった。
「具体的な例ですと、玄関ホールの壁を明るい色の壁紙にします。それから赤い絨毯をはがして、白い大理石の床を見せます」
「屋敷の中を明るくするのも、レーベルオード伯爵家の色である白を強調させる案もすごくいいと思うよ」
「良かったです!」
レーベルオード伯爵からも最終的な許可をもらい、お披露目のための準備を進めようとリーナは思った。
「他のことについても聞きたいことがあるのですが、いいでしょうか?」
「どんなことかな?」
「私はずっとウォータール・ハウスにいます。第四王子付きの侍女として仕事をしていませんが、いいのでしょうか?」
「そろそろ伝えようと思っていた」
パスカルはそう切り出した。
「少し長くなるけれど、丁寧に説明するよ」
リーナはミレニアスに同行する侍女に選ばれたが、リーナ・セオドアルイーズとしてだった。
国境を越える前にレーベルオード伯爵家の養女になる手続きが終わり、リーナ・レーベルオードとしてミレニアスに行った。
帰国後、名簿が作り直され、リーナ・レーベルオードは随行者ということになった。
通常は王宮に出勤して王太子や第四王子に報告。特別な勤務に対する賞与や代休などの話がある。
だが、リーナは事務手続きをしただけの状態で、国王から正式にレーベルオード伯爵令嬢として認められていない。
そこでまずはレーベルオード伯爵家として国王に謁見し、養女にしたことを報告する。
無事謁見が終わると、リーナは正式にレーベルオード伯爵令嬢になれる。
王太子に雇用され、第四王子付きに任命されたのはリーナ・セオドアルイーズであるため、リーナ・レーベルオードとして再度検討され、問題なければ勤務に戻る。
「ここまではいいかな?」
「大丈夫です」
「謁見は無事終わった。王太子殿下も第四王子殿下も、リーナ・レーベルオードを雇用するのは問題ないと考えていたからこそ、ミレニアスに同行させた。代休が終われば勤務に戻るはずだった。でも、戻れなくなった」
「どうしてですか?」
「王太子殿下にプロポーズされたからだよ」
リーナと王太子の結婚については国王の許可が出ている。
ただし、正妃ではなく側妃。
王太子の方で解決しなければならない細かい条件もある。
王家とレーベルオード伯爵家で話し合いをした結果、リーナは側妃候補として後宮に入り、側妃になるための勉強することになったことをパスカルは伝えた。
「側妃候補として後宮に入ると、侍女として勤務できなくなる。だから、代休が終わり次第、侍女は退職することになった」
「では、第四王子付き侍女ではなくなるのですね?」
「そうだ。侍女を辞めないと側妃候補になれない。王太子殿下の妻にもなれない。わかるね?」
「わかります。でも、それなら退職の挨拶をしたかったです。第四王子殿下は礼儀作法に厳しいので怒っていそうです。真摯にお仕えするとお約束したのに……」
「大丈夫だよ。特別な事情があるのはわかっている。退職金もたくさんいただいた。それだけリーナのことを高く評価していた証拠だよ。それを使って後宮に入る費用にしてほしいということだけれどね」
「後宮に入る費用?」
「側妃候補は入宮代を払わないと後宮に入れない」
「高そうです。いくらなのですか?」
「百万ギールだ」
「そんなに!!!」
リーナは信じられないと思った。
「大丈夫だよ。退職金も百万ギールだった」
「退職金もそんなに!!!」
「リーナはお披露目に備えて準備をしてくれればいい。お披露目が終わったら、今度は側妃候補として後宮に入る準備をする。わかったかな?」
「わかりました」
リーナはこれからどうなっていくのかを理解した。





