414 お疲れ
ギャラリーで発見された問題点に対応するため、かなりの人数が割かれた。
そのあとの視察でも同じ。
みるみる同行者が少なくなっていき、昼食時間になった。
午後は視察の続き。
総侍従長と総侍女長だけでなく、午前中に同行できなかった侍従や侍女、召使いたちまで同行することが伝えられた。
「リーナ様の素晴らしい視察を見せ、勉強させたいのです」
「こんなに大勢ですか?」
「ご指摘される問題点が多いので、すぐに対応できるよう同行者を増やしました」
「たぶん、そうではないかと思いました」
午後は舞踏の間から始まることになっていた。
広い場所の視察は時間がかかるだけでなく、問題があった時に対応するにも大変になる。
同行することで迅速に対応することにしたのだろうとリーナは思った。
「疲れているようだ」
お茶の時間。
父親にそう指摘された娘はその通りと言わんばかりに息をついた。
「疲れました」
「マクネルやアデリアが一緒ではそうだろう」
二人はレーベルオード伯爵よりも年上。
レーベルオード伯爵であっても、屋敷にいる者を束ねる二人の存在を特別視していた。
「今日は大きな部屋を視察したのもあって、問題点を改善するのに時間がかかるそうですう。客間は明日の視察に変更しました」
「明日? 視察は一日置きにする予定ではなかったか?」
「視察に時間がかかるので、同時進行で対応していくことになったのです」
侍従、侍女、召使いも同行して、問題点を共有。すぐに対応する方法に変更されたことをリーナは説明した。
「そうか。だが、無理はしないように。屋敷中といったが、お披露目の時に使う場所が優先だ。そこだけでも見てくれると嬉しい」
「何年も大きな催しがなかったので、そういった時に使用される部屋の管理が甘くなっていたそうです。私のお披露目の準備によってそのことに気づけてよかったと言われました」
「そうか。良いことだ」
「ギャラリーには希少な品が多いようですね。自慢するためだと思ったのですが、投資目的で購入したものを飾り、客次第では売るということを始めて知りました」
「確かにそういう目的で使用することもある。先祖の絵や屋敷に関係するような絵の場合、売るためのものではないとわかる」
「美術品についても変更してもいいですか? 古い絵が多いので、暗い感じがするのです。私の感性が乏しいせいか、魅力的な絵だとも感じません」
「構わない。リーナの好きな絵を飾ればいい」
「ありがとうございます!」
「美術品に関する相談は全てパスカルにしろ。私は専門外だ」
「そうだと思いました」
レーベルオード伯爵はウォータール・ハウス内のパブリックスペースを全く変えていない。
それは気に入っているからでもなければ、両親や家族との思い出があるからでもない。
単に忙しい。屋敷に構う暇もなければ、変更すること自体に興味がない。
ただそれだけの理由であることを、リーナは総侍従長たちから聞いていた。





