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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編

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408 駄目出し続き


 正面玄関の次は、玄関ホールの視察だった。


「このホールは暗いですよね」


 三人もそう思っていたが、仕方がないと思ってもいた。


「黄金色の両扉をつけるために玄関オールを区切ったと聞きました。そのせいで、外光が十分に入りません。普段はともかく、お披露目の時には燭台が設置されるのでしょうか?」

「特別な燭台が設置されます」


 ハンスが緊張しながら答えた。


「いくつですか?」

「二十四台です。補助として十二台あります。かなりの大きさがある豪華な燭台を中央に置く予定です。家具やテーブルの上に置くような小さな燭台も多数ございます。必要に応じて配置し、明るさを調整できます」


 リーナはホールを見ながら数えだした。


 等間隔においた場合、燭台の数が足りるかどうかを考えているようだった。


「補助もあるので大丈夫そうです」


 ハンスとメアリーはホッとした。


 だが、つかの間だった。


「でも、このホールには無駄な家具があります。あの椅子は誰かが使うわけではありませんよね?」


 壁際にはタンスやコンソールがあり、その両隣には必ず椅子があった。


 しかし、玄関ホールで椅子に座る者はいない。


 待合室も召使いの待機室も別にある。


 わざわざ広く寒いホールで座って過ごす必要はなかった。


「見た目の問題といいますか、装飾的に置いているのだと思います」

「とても古い家具のようです。正直、自慢できるようなものには見えません。特別なエピソードがあるという話も聞きませんし、置かなくていいのでは?」

「リーナ様、あの家具はアンティークです」


 ハンスがそう言ったが、リーナを納得させることはできなかった。


「アンティークであればいいわけではありません。私はもっと立派なアンティークの家具があるのを知っています。後宮にもたくさんありますし、高貴な方はそういったものを見慣れているので比べられてしまいます。あの椅子は片付けてください。タンスもダメです。引き出しの中に変なものを入れられたら困ります。警備が不審物を発見しにくくなってしまいます」


 マリウスもハンスもメアリーも驚くしかなかった。


 三人は子どもの頃からウォータール・ハウスを知っている。


 玄関ホールの家具はそこにあるのが当たり前で、それが正しく良いものだと信じて疑わなかった。


 だが、リーナによってそれは思い込みだと気づかされた。


 ウォータール・ハウスで働く者から見て立派なアンティークでも、後宮で働く者や高貴な者にとっては立派ではない。


 誰も座らない椅子は飾りの一部だと思っていたが、実は必要ない。


 タンスについても、引き出しは常に空っぽだと思い、不審物などを入れられてしまう可能性について考えたことがなかった。


「ご指摘はわかりました。ですが……」


 ハンスは迷った。


「あちらの家具は私が子どもの頃からあるのです。何十年もそのままですので、何か理由があるのかもしれません。閣下に確認しますので、保留にしていただきたく存じます」


 侍従長では判断できない。自分と同じように驚くだけ。


 レーベルオード伯爵に判断してもらうべきだとハンスは感じた。


「わかりました。ちなみに、他の家具や椅子を置く必要はありません。お披露目の時に玄関ホールに人が留まり続けるのはよくないので、待合室に移動してもらうためにも見るべきものを少なくしたいのです」


 リーナは招待客の視線や動線についても考えていた。


「すっきりしすぎてしまうのではないでしょうか?」


 ハンスは心配になった。


「お披露目の時には特別な燭台が設置されます。黄金色の燭台が多数あれば、華やかな印象になりますよね? アンティークの家具は古くて暗い印象になってしまい、かえって邪魔をしてしまうと思うのです」


 なるほどとハンスは思った。


「リーナ様はお披露目を想定した視点で判断されています。常時撤去するのか、お披露目用に一時的に撤去するのかについても閣下に確認した方がよさそうです」


 マリウスが付け足した。


「わかりました!」

「リーナ様、少しよろしいでしょうか?」


 メアリーが発言した。


「何でしょうか?」

「私の記憶によりますと、パスカル様が成人した時の催しでは多数の花が飾られていました。タンスがなくなると飾る場所が減ります。他の家具が必要になるのでは?」

「そうかもしれませんね。お披露目の時、玄関ホールに花を飾るのか確認してください。飾るということであれば、花瓶を置くテーブルを置きましょう。コンソールと合わせないとですね」

「アンティークですので同じコンソールがないと思われます。あちらも一時的に撤去し、別の家具に統一するということになるかもしれません」

「家具については侍従担当ですか? それとも侍女担当ですか?」

「花や花瓶は侍女の担当ですが、家具の設置は侍従担当です。重いので」

「確認します!」

 

 ハンスが答えた。


「では、それもお願いします。昔の催しについての知識は三人が頼りです。教えてくださいね。それを考慮した上で、問題点を改善しながらお披露目の準備をしていきましょう!」

「かしこまりました」

「はい!」

「わかりました」


 リーナの視察は始まったばかり。


 ざっと確認するだけで終わらないのは間違いなかった。


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