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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編

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406 頼まれた仕事



「リーナのお披露目の準備をしている。大勢の招待客が来るため、使用する部屋が多い。特別な賓客は宿泊する予定のため、屋敷内を案内しろと言われるだろう。その時に問題があると困る。そこで屋敷中を視察してほしい」


 このような仕事は屋敷の主人、その妻、子どものいずれかが担当する。


 だが、レーベルオード伯爵もパスカルも忙しい。


 レーベルオード伯爵夫人はいない。


 そこで、娘のリーナに任せるということだった。


「王族が来ても対応できるように準備しなければならない」

「王族が来ても? もしかして、来るのですか?」

「第四王子殿下がお忍びで視察に来る」

「えっ!」


 リーナは飛び上がりそうなほど驚いた。


「第四王子殿下は社交嫌いだが、成人することに向けて経験を積むことになった。晩餐会にも出席される。食べ物や飲み物の嗜好について教えてほしい。パスカルにも聞いたのだが、食事は何でもいいと言われた。だが、本当にそれでいいのか?」


 どんな食事を出しても食べない。だからこそ、何でもいい。


 パスカルはそう思ったのだろうとリーナは推測した。


「王族に関する情報漏洩は許されない。だが、リーナがどう思うのかどうかは答えることができるはずだ。リーナの意見を聞きたい」

「私の意見?」

「お茶を出しても平気だと思うか? コーヒーでなければ激怒しそうだと思うか?」

「お茶を出しても平気だと思います」

 

 コーヒーを出せと言って激怒したことはないとリーナは思った。


「乾杯がある。未成年だが、酒を出した方がいいと思うか?」

「お酒……」


 ミレニアスに行った時、食事の席を共にしたことがある。


 酒は出ていたが、セイフリードが飲んでいた姿を見た記憶はなかった。


「……食事に同席した時、お酒は出ていたのは覚えています。でも、飲んでいる姿を見た記憶がありません。出すことはできますけれど、飲むかどうかは別だと思います」

「わかった。甘いものを出してもいいと思うか?」

「大丈夫です! 喜びそうです!」


 リーナは即答した。


「では、何か軽くつまめるようなもので、甘いものを用意させるか」

「手が汚れるのはダメです。殿下は潔癖な感じがします」


 最初は掃除していない部屋にいただけに気づかなかったが、セイフリードは潔癖なところがある。


 非常に古い本や新聞などはそのまま手に持ちたがらない。手袋をつけて読むこともあった。


「潔癖症の者の場合、古いものを嫌がる場合もある。新しい家具を入れなければならないかもしれない」


 リーナはセイフリードの図書室や寝室、居間の家具を思い出した。


「……偶然かもしれませんが、殿下が最も使用する部屋の家具は、比較的新しいものです。装飾にも時代ごとの流行というか特徴があって、勉強として教えてもらいました」

「最新のものを好まれていそうだと思うか?」

「最新のものは本だけです。家具についてはそんな感じではなさそうな気がします」

「わかった。パスカルに確認する。リーナが第四王子付きでよかった。また何かあれば相談するかもしれない。頼んだぞ」


 リーナは嬉しくなった。


 自分の経験が役に立っている。頼りにされていると感じた。


「はい! 頑張ります!」


 リーナは満面の笑みを浮かべ、それを見たレーベルオード伯爵もまた笑みを浮かべた。


 閣下は変わられた……。


 リーナがいると、冷たく厳しい表情が柔らかくなる。


 その変化はウォータール・ハウス内の空気にもあらわれていると、秘書官たちは思っていた。


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