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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編

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404 条件つき



 数日後。


 ロジャーにヘンデルからの返事が届いた。


「これが条件だ」


 当日、ウォータール・ハウスに行くことができる。


 晩餐会のみの出席。王族用の部屋になる。リーナは同席しない。


 仮面舞踏会には一切参加できないというものだった。


「リーナに会えないのでは行く意味がありません! どんな装いなのかも確認できないではありませんか!」

「挨拶ぐらいはあるだろう。主役は忙しいだけに、すぐに終わるだろうが」

「話になりません。注目されているのは仮面舞踏会です! 私の側近の交渉能力はこの程度なのですか?」


 エゼルバードは不満をあらわにした。


「ヘンデルやレーベルオードにここまで見くびられるとは思いませんでした。もちろん、私ではなく側近全員のことです。悔しくないのですか? この屈辱を受け入れるというのですか?」


 文句と説教が始まった。


 黙って受け入れることでエゼルバードの不満が解消されるのであればいいが、そうはならないことをロジャーはわかっていた。


「今回ばかりは本当に難しかった。王太子とレーベルオードだ。組み合わせが悪すぎる。だが、ミレニアスから朗報が届いた」

「ミレニアスから?」


 ロジャーは先ほど渡した書類を回収し、別の書類を提示した。


「リーナが養女になった祝いの品をフレディ、ハル、ルーシェ、アベルからも贈った。その時、披露の催しに出席するため、早めに連絡が欲しいと要求していた」


 招待される前から、お披露目に出席の意志表示をするという方法は図々しい。


 だが、王族ならおかしくない。


 他国から来る場合は移動日数がかかる。早く教えろというは当然だった。


「王族からの要求は断りにくいはずだというのに、レーベルオードは十分な歓待ができないといって断ったらしい」

「レーベルオードが簡単に要求を呑むわけがありません」

「だが、フェリックスは極秘に招待された。パスカルにどうしても行きたいとねだり、弟として参加することになった。招待客ではなく親族としての参加だ」


 狡いとエゼルバードは思った。


「それを知ったフレディはインヴァネス大公と交渉し、同行者枠で来ることにした」


 フェリックスは未成年だけに同行者を三名までつけることができる。


 その内訳は保護者一名、護衛が二名。


 フレデリックは保護者枠、ルーシェが護衛枠の一つを奪った。


 残る護衛枠についてはフレデリックの側近たちが争っているために返事を出していないことが説明された。


「もう一人の護衛枠についてはエゼルバードに決めてほしいそうだ。それならフレディの側近たちも文句を言えないだろうとなった」


 エゼルバードの目が細められた。


「私に護衛をさせる気ですか?」

「フレディはレーベルオードに出す返信用カードを送って来た。ノースランドに届いた返信用カードと同じだ。つまり、同行者は招待者として集計される。扱いも招待者だ」


 保護者枠や護衛枠というのはあくまでも内々の話。


 同行者内で話し合って決めればいいだけであり、フレデリック相手なら簡単に保護者枠を奪える。


 そして、表向きには同行者の全員が招待者ということになる。


「事前にエゼルバードの名前を書いて返信すると、レーベルオードから王太子に連絡がいく。叱責されることになるだろう」

「そうですね」

「そこで私とセブンの二人でレーベルオード伯爵と交渉する」


 フェリックスとフレデリックとルーシェが来るのは確実だが、最後の一人の選考に時間がかかっている。


 単純な護衛ではなく、三人の面倒を見る者になるせいで決めにくい。返送日の猶予も少ない。ミレニアスから移動する準備もあるため、当日同行した者ということにしたい。


 また、フレデリックからの依頼でミレニアスから来る一行の宿泊場所や護衛などはセブンが任された。ウェストランドで全てを手配する。


 レーベルオードはウォータール・ハウスに行く四名をもてなせばいいだけ。


「このような内容で了承をもらえば、ギリギリまで誤魔化すことができる。そのあとで王太子から叱責されるのは仕方がない。それでいいか?」

「仕方がありません。食事だけよりはましですからね」

「注意がある。フェリックスの同行者としての参加だけに特殊な条件がある」


 エルグラードとミレニアスは緊張関係が続いているため、フェリックスはお忍びでの出席扱い。


 社交は一切できない。


 仮面舞踏会の会場に入ることはできるが、フェリックスと一緒に特別席から見ているだけになる。


 また、フェリックスが退出する場合は一緒に退出する。同行者だけ残ることはできない。


「この条件でもいいな?」

「フェリックスと一緒の席であれば悪くない待遇のはずです。しぶしぶですが許してあげましょう。私は寛大で慈悲深いのでね」


 エゼルバードは嬉しそうに答えた。


「早速衣装を考えなくては。仮面も必要でしょう」

「衣装や仮面にはドレスコードがある」


 ロジャーは説明用の書類を追加した。


「これだ」

「細かいですね」


 通常のドレスコードよりも細かい条件になっていた。


「極力地味なものにしろ。普通の貴族に変装していくと思ってほしい」

「わかっています」


 エゼルバードはすっかりご機嫌になったが、話はそこで終わりではなかった。


「まだ説明がある。当日はフェリックスが滞在するホテルに行き、合流してから一緒にウォータール・ハウスに行く必要がある」

「そうでしょうね」

「ホテルで昼食を取りながら打ち合わせをする。午前中に起きろ。できるだけ早くだ」


 エゼルバードは不満を漂わせた。


「十五時頃からウォータール・ハウスの周辺や王宮までの道が封鎖される。その前に移動しておく。レーベルオード伯爵と交渉する際、ウォータール・ハウスに宿泊できるようにするつもりだ。旅行疲れやフェリックスが子どもであることを理由にして二泊を要求する。そうなった場合、世話役はいない。自分で身の回りのことをしなければならないが、できるな?」

「できます。服も自分だけで着ているではありませんか」


 宿泊できるかもしれないと聞いたエゼルバードは魅力的な笑みを惜しげもなく披露した。


「ロジャーは本当に優秀ですね。私の喜ぶことが何かわかっています」


 ロジャーは当然だといわんばかりの表情になり、見守っていた他の側近たちもなんとかなったことに安堵した。


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