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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第五章 レーベルオード編

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401 披露について



 ウォータール・ハウスに戻ったパスカルは驚くべき光景を目にした。


 リーナは自室ではなく父親の執務室にいた。


 しかも、瀟洒な執務机が用意されている。


 リーナ専用の執務場所が確保されているということだった。


「おかりなさいませ、お兄様」

「ただいま、リーナ。父上、リーナに仕事を手伝わせているのですか?」

「挨拶を省略するな」

「ただいま戻りました。父上のおかげで早く戻れました。ありがとうございます」


 ウォータール正門は特別な許可を持つ者以外通れないようになっているため、ウォータール正門へ向かう経路が比較的空いていた。


 その結果、王族の側近としての特権を使わなくても、パスカルはスムーズに帰宅することができた。


「マークを記入しているのか」

「そうです」

「父上、なぜリーナのマークはハートなのですか?」


 パスカルは父親に尋ねた。


「若い女性が好みそうなマークだからだ。単調な作業は集中力が落ちると間違えやすい。少しでも書く気が持続しそうなものにした」

「ということらしいよ」


 リーナは驚いた。


「書類用のマークにまで、お父様の細やかな気遣いがあったのですね。ハートもお父様も大好きです!」


 大好き……。


 あまりにもストレートな言葉にパスカルは驚きながら父親を見た。


 父親は鉄壁と言われている無表情のまま固まっていた。


「……そうか」


 返事としては素っ気ない。


 だが、レーベルオード伯爵が喜んでいることを部屋中にいる全員が感じ取っていた。


「ヘンデルから、複数の社交グループがリーナの勧誘を検討しているらしいと聞きました」

「気にしなくていい」

「お披露目でどんな女性なのを見極めてから正式に誘いをかけるかどうかを決めるようです。お披露目についての話はあったのでしょうか?」

「あった」


 クオンがレーベルオード伯爵と話し合いの時間を作ったのは、リーナの今後について話すためであり、レーベルオード伯爵令嬢としてのお披露目についての内容も含まれていた。


「披露の催しをしないわけにはいかない。だが、養女になる前に面識があった者と顔を合わせると問題が起きる可能性があると言われた。国の調査の件だ」


 その点はパスカルも懸念していた。


 リーナは元平民の孤児リーナ・セオドアルイーズだが、一時的にリリーナ・エーメルだった。


 リリーナ・エーメルのことは国の調査の手違い。リーナの落ち度はない。元通り平民に戻すことで決着させている。


 だが、そのことが知れ渡ると、国の調査に問題があったことがわかってしまうだけでなく、リーナの印象が悪くなってしまう可能性があった。


「諸事情を考慮した結果、お披露目は仮面舞踏会にすることになった」

「仮面舞踏会……ですか?」


 披露の催しとして舞踏会を開くのは定番中の定番。


 多くの者と顔合わせを行い、男性と踊ることで知り合い、自分を売り込むきっかけを作りやすくする。


 有名な者と踊れば、すぐにそのことが社交界に知れ渡る。宣伝効果も抜群だった。


 ところが、仮面舞踏会。


 顔を覚えてもらうための催しだというのに、顔を仮面で隠すのはおかしい。


 常識的に考えて、絶対にしない催しだった。


「リーナに仮面をかぶれというのですか?」

「仮面をつけていれば、以前リーナを見たことがある者でも、はっきりと顔を確認することができない。問題になりにくいということになった」

「普通のお披露目ではないことが問題になってしまうかもしれません。いいのですか?」


 レーベルオード伯爵家が養女を迎えたというだけでもかなりの話題になっている。


 お披露目の催しがどうなるかも当然のごとく注目される。


 仮面舞踏会だとわかれば、前代未聞だと騒がれるに決まっていた。


「仕方がない。だが、すぐに収まる」


 パスカルは何かありそうだと感じた。


「王太子殿下はそれでいいと?」

「王太子殿下からの提案だ。第四王子殿下がお忍びで来る。そのせいで、舞踏会ではなく仮面舞踏会になったことにする」


 第四王子のセイフリードは来年成人するが、社交的な催しに参加していない。


 経験を積むため、側近を務めるレーベルオードの催しを視察する。


 その情報は事前に流す。


 未成年であっても王族が来ることがわかれば、それだけレーベルオードが信用されていることを示すことができる。


 王族専用の部屋や席を用意しておくよう言われたことも説明された。


「話し合いに同席したかったです」


 パスカルは本音を伝えた。


 側近である自分に何も伝えられないまま決められるのは困る。


 王太子側だけで決めたことであれば、第四王子の考えも聞き、それでいいかを確認しなければならないと思った。


「招待者はかなり絞る。王族が来るために人数制限をするのは仕方がない。警備については第四王子騎士団と連携をするようにということだった。王族が出席されるとなれば、それにふさわしいものでなくてはならない。目安として一カ月後で調整する。衣装を注文するにも丁度いいだろう」

「わかりました。すぐに探して考えます」


 リーナのドレスをどこに依頼するか、どんなデザインにするかということだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] シスコン、暴走スイッチオン?(笑)
[気になる点] パスカルは驚くしかない。いくらレーベルオード伯爵家が名門貴族とはいえ、養女を披露するための催しに王族が何人も来るというのは普通のことではない。しかも、第四王子。自分の仕える王族だ。 …
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