382 回答評価
「大変申し訳ありません。私からお話するわけにはいきません」
リーナの素性はミレニアス王家の内情に関係している。
ミレニアス王がインヴァネス大公夫妻の娘リリーナとして認めないと判断したからには、その可能性があるとは言えない。
このことは国家機密であり、外交機密でもある。
王族妃からの問いかけであっても、パスカルが答えるわけにはいかなかった。
「養女の件は国王陛下の許可によって手続きが行われました。詳細については国王陛下にご確認ください」
「エゼルバードと同じね」
それはパスカルの対応が適切であるということ。
第一側妃は不満そうな表情をエゼルバードに向けた。
「どうして教えてくれないの? 余計に気になってしまうわ!」
「わかります。ですが、仕方がないのです。父上が決めたことなので」
エゼルバードが答えた。
「母上のせいで茶会の雰囲気が悪くなるのは困ります。別の話題にしてください」
「リーナ、何か別の話題を考えて」
第一側妃がリーナに命令するかのように言った。
「いい加減にしろ!」
セイフリードが怒りを表情に宿した。
「先ほど養女になったばかりだという話が出ただろう? リーナは僕付きの侍女だ! 命令するのは許さない! リーナの揚げ足を取ることで僕に嫌がらせをする気か? もしそうなら兄上に報告するからな!」
「リーナに声をかけただけでそこまで怒るなんて。勝手に悪く思われるのは嫌だわ」
第一側妃は息子のエゼルバードに視線を変えた。
「母上の言う通りです。発言するのであれば冷静に。王妃の茶会ですよ? マナーが大切です」
「第一側妃のせいだ! 僕付きの侍女を勝手に利用しようとしたのが悪い!」
「仲間外れにしないための配慮なのに」
第一側妃はため息をついた。
「母上は優しいですからね。セイフリードにはそれがわからないのです。仕方がありません」
「僕のせいにするな!」
茶会の雰囲気がまたしても悪くなってしまった。





