381 妹の次は兄
「他の話はないの? 私の役に立つような話がいいわ!」
第一側妃はリーナのことを役立つ者として認識したようだった。
「申し上げます。妹は養女になったばかりですので、これから多くのことを勉強しなければなりません。ご容赦いただけないでしょうか?」
リーナに話をさせるほど、失言をしてしまう可能性が上がってしまう。
王妃の茶会で失言したということになれば、それがリーナに対する悪評につながりかねない。
しかも、話によって喜ぶのは第一側妃であって王妃ではない。
パスカルはここでうまく切り上げたいと思った。
「その気持ちはわかるわ。でも、思いもかけない話題だったから驚いたの。元平民だからこそ私たちが知らないことを知っているのではなくて?」
「そうかもしれません。ですが、妹の発言がレーベルオードの発言と思われるかもしれません。レーベルオードの跡継ぎとしましては、この辺りでお許しいただきたいのですが?」
「パスカルも大変ね」
第一側妃は優雅な笑みを浮かべた。
「妹ができたのは嬉しいでしょうけれど、良いことばかりとは限らないわ。なぜ、養女にしたの? レーベルオード伯爵家が二人しかいないという理由なら、親族を迎え入れればいいでしょう? わざわざ元平民の孤児を養女にする必要なんてないはずだわ」
第一側妃はリーナの本当の素性について知らされていない。
だからこその質問だった。
「そうですね。私も不思議に思いました」
「なぜですの?」
第二側妃と第三側妃も同じ。何も知らない。
それだけに当然とも言える質問だったが、パスカルからリーナの本当の素性について話すわけにはいかない。
今度はパスカルが試されることになった。





