表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第四章 帰国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

346/1362

346 カザエル(二)



 三人はカザエルの町で買い物をした。


 メイベルが買い物をすると、ヴォルカーが必ず口を挟んだ。


「その服は似合わない」

「うるさいわね。好きな柄なの!」

「お前が花柄の服を着るなんて、どう考えてもおかしい。しかも、ピンクだぞ?」

「この花はピンクが一番人気なのよ。私じゃなくてリーナさんのドレスよ!」


 リーナの呼称に関してはメイベルとヴォルカーで揉めに揉め、旅行中はさん付けすることになった。


「ならばよし。可愛い雰囲気になりそうだ」

「あっという間に意見を変えたわね」

「俺としてはオレンジの方がいいと思う。その方が明るい印象で好意的に見られるのではないか?」

「リーナさんはモテなくていいの。恋人がいるんだから!」

「そうなのか」


 メイベルはその言葉にハッとした。


 兄はジェフリーから様々な説明を受けている。


 王太子の恋人であることも知らされていると思っていたが、今の反応からすると知らないようだった。


「兄さん、リーナの恋人が誰か聞いていないの?」

「リーナさんだ。俺の知っている者か?」


 知っているに決まっているわよ!


 だが、ここで言うわけにはいかないとメイベルは思った。


「凄い相手よ。無礼なことをしたら命に関わるから気を付けて」

「俺の職業を考えろ。無礼なことをするわけがない」

「まあ、そうだけど……本当に気をつけてね? 口説いたら解雇という命令が出ていたのよ。聞いていないの?」

「それはいつの話だ? ミレニアスに行く時のことなら、俺が知るわけがない」

「もっと前の話よ。本部に勤務している者には通達されていなかったのかしら?」


 首をかしげる妹に、兄もまた眉をひそめた。


「そうかもしれない。レーベルオード伯爵に御令嬢がいるという話も初めて聞いた。ご子息だけしかいないと思っていた」


 リーナは国境を越える直前に養女になったため、レーベルオード伯爵令嬢であることを知る者は限られていた。


「兄君も凄いってことはわかっているわよね?」

「決闘を申し込まれたら騎士の名誉を失ってしまう。正直、解雇よりも恐ろしい」

「わかっているならいいの。じゃあ、ピンクにするわ!」

「オレンジがいい。本音を言うと花柄もよくない」

「仕事中は無地の服が多いのよ。旅行中ぐらい柄ものにして楽しまないと!」

「メイベルは掃除に関しては最高に優秀だが、服選びのセンスはない」

「なんですって! これでも旅行中は私が衣装を選んで来たし、ダメ出しもなかったわよ!」

「それは他の者が準備した服だろう? どれを選んでもおかしくない服が揃えられていただけの話だ」


 ヴォルカーはリーナに視線を向けた。


「リーナ嬢が自分で選んだ方がいいのではないか?」

「言いたくないけど、リーナさんは私よりもセンスがないのよ」

「なんだと?」


 ヴォルカーは目を見開いた。


「そこまで驚くことはないでしょう? リーナさんに失礼じゃないの!」

「リーナ嬢に失礼なのはお前だ! 自分よりセンスが悪いと言ったぞ? 俺ははっきりと聞いた! 謝れ!」

「事実なのよ。リーナさんが選ぶ時だけは、ダメ出しされた時が何回かあったのよ」

「では、リーナ嬢に服を選んでもらおう。それでセンスがあるかないかがわかる」

「そうね。リーナさんに選んでもらいましょうか」


 突然、話を振られたリーナは困った。


「えっ、でも、メイベルさんが選んだ方が……」

「兄がうるさいから好きなのを選んでみて。どんな服でもいいから」

「わかりました」


 リーナは店内を見て回り、良さそうなものを発見した。


「これはどうですか?」


 リーナが選んだのはシンプルな水色のワンピースだった。


 上下別の服にも興味を惹かれたが、急いで支度をするにはワンピースの方が楽。


 管理する荷物量や洗濯物の数も減る。


 何よりも値段が安いということが決め手になった。


「色はいいのですが、なんとなく寂しい印象に見えます」


 真っ先に感想を述べたのはヴォルカーだった。


「これ、ボタンがないせいで特価品になっていたワンピースじゃない?」

「飾りボタンがないだけなのに半額でした。お得だなと思って」

「金額のことは気にしなくていいのよ。飾りボタン付きの服を買いましょう」

「いえ、これがいいのです。ボタンの紛失を心配しなくて済みます」

「現実的だわ。一考の余地があるわね」

「ボタン付きを薦めます。もし誘拐されてしまった場合、ボタンを引きちぎって途中に落とすと、居場所を特定しやすくなります」

「誘拐されたらダメでしょう!」

「守るつもりではいるが、万が一ということもある」

「ボタンを引きちぎるのは難しい気がします」


 それぞれが意見を言い合うような状態になったため、遠巻きに見ていた店員が近づいて来た。


「お客様、お手伝いいたしましょうか?」


 メイベルとヴォルカーが威嚇するように強い視線を向けた。


 店員はひるんだが、プロ根性で何とか営業スマイルを浮かべた。


「若い世代ほど流行に敏感です。人気の品を教えますのでご参考にされてください」


 結局、専門にしている者の意見を聞くのが一番ということになり、店員がリーナに似合いそうな服を選んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★書籍版、発売中!★
★QRコードの特典あり★

後宮は有料です!公式ページ
▲書籍版の公式ページはこちら▲

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ