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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編

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328 フレデリックからの届け物



 フレデリックはやれやれといった様子でため息をついた。


「バカが来たのは謝罪する。俺の責任ではないが、何か要望はあるか?」

「ああいった者を近寄らせるな! エルグラードとミレニアスの関係がどうなるかが決まる重要な時だ。互いに注意すべきことだろう!」

「俺はわかっている。だが、自覚が足りない子どももいる。あらためて各所に通達しておく」


 フレデリックはリーナに視線を向けた。


「リーナも要望を出せ。内容によるが、叶える方向で検討する」

「メルセデスへの同情はするな! 温情処置はエルグラードの威信にかかわる! 許されない!」


 自分の考えが見透かされているとリーナは思った。


「でも、未成年です。しかも、髪を切るなんて……高貴な女性にはつらい処分です」

「つらいのがわかっているからこそ提案した。だが、平民であれば処罰でも何でもない。髪を切って売る女性もいるだろう?」

「お金のために髪を売るとしても、喜んでする者とそうでない者がいます」

「職務的に考えると、ある程度は我慢すべきだろう。だが、兄上の恋人であるという話が出たあとでの暴言だった。間接的に兄上を侮辱することになる。絶対に許されない!」

「セイフリード王子の言う通りだ。厳しい方がメルセデスのためにもなる」


 フレデリックも厳しい対応をすることに賛成だった。


「ところで、献上品はどうだった? ほしいものや興味を引くようなものがあったか?」

「特には」

「そうか。俺が言うのもなんだが、ミレニアスにあるのはチューリップだけだ。伝統的な品もあるが、ミレニアスならではと言えるような特色がない。そもそも、ミレニアスではエルグラードのものを最高級としている」


 ミレニアスでは自国の最高級品よりもエルグラードの最高級品の方が格上という感覚と価値観が定着していた。


「高位者や富裕層はエルグラードで特注した品や流行している品を取り寄せる。ミレニアスの品には見向きもしない」

「献上品の中にエルグラードの品がないだろうな?」

「さあな。商人次第だが、もしかするとあるかもしれないな?」


 フレデリックはリーナに視線を変えた。


「それで?」


 リーナは困ってしまった。


「わかった。俺に任せろ。良さそうなものを選んでやる。それでいいか?」

「はい。ありがとうございます」


 リーナは満面の笑みを見せた。


「……なぜ、そんなに喜ぶ?」


 フレデリックは気になった。


「優しいなと思いまして」

「俺は優しくない。不良だからな」

「私にとっては違います。優しいです」

「勝手に勘違いしていろ」


 フレデリックは吐き捨てるようにそう言うと部屋を出て行った。





 その夜。


「フレデリック王太子殿下からレーベルオード伯爵令嬢にお届け物です。午後の出来事に対する配慮として贈られるとのことです」


 すでに受け取る許可が出ていたため、メイベルが箱を受け取った。


 安全を確認するために蓋を開けて中身を確認する。


「天然石? オパールの原石かしら?」


 大部分は白いが、大理石他の色が混ざり合っている。


 リーナは封筒の中から説明書取り出して読んだ。


「最高級のフレグランス石鹸だそうです。オパールの原石を模したもので、フルーツの香りみたいです」

「確かにフルーツの香りがするわね。見た目も素敵だわ。使うというよりは飾るものなのかもしれないわね? 日持ちもするし、お土産に丁度いい気わ!」


 フレデリックは不良王太子として名高い。


 どんなものが届くのだろうかとメイベルは心配していたが、予想外に素晴らしいものだった。


「とても綺麗ですし、美味しそうな香りです。お土産として配ると喜ばれそうですね!」

「ちょっと待って。お土産として同じものを配るのはダメよ」


 リーナはキョトンとした。


「自分で購入してもダメですか?」

「ダメよ。王族から与えられた品を配ったと勘違いされたら困るでしょう? 土産話として話すのはいいけれど、全く同じ品を購入して配るのはダメよ。自分で使用するためにたくさん買うだけならいいけれど、結構高い品かもしれないわね」

「そうですね」

「届いた品について報告して来るわ。すぐに戻るけれど、念のために鍵をかけておいて」

「わかりました」


 メイベルは蓋をすると箱を持って部屋を出ていった。


 リボンを綺麗にまとめようとしたリーナは、説明書とその封筒だけが残っているのに気づいた。


「忘れてしまってますね……」


 説明書を封筒にしまおうとしたリーナは、一枚のカードが封筒内にあることに気づいた。


 カードには流れるような美しい書体の文字があった。


 無欲なリリーナへ 虹の輝きを贈る

 

 エゼルバードと買い物した時、オパールの宝飾品が選ばれたことをリーナは思い出した。


「それでオパールみたいな石鹸を?」


 そう思ったあと、リーナはハッとした。


 贈り物を届けに来た者はレーベルオード伯爵令嬢への届け物だと言ったが、カードの名前はリリーナだった。


 リーナの名前はリーナ・レーベルオード。


 フレデリックもリーナのことを呼ぶ時はリーナと言い、リリーナとは言わない。


 それでもカードの名前はリリーナにした。そして、ミレニアス王家にとって特別な虹に関係するものにした。


「……認めてくれているってこと?」


 インヴァネス大公夫妻の娘として。


「だったら嬉しいです。やっぱり優しいです!」


 リーナの心に喜びが広がった。


 素晴らしい贈り物はカードの言葉によってより特別なものになった。



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