326 献上品の検分
部屋の中にはいくつものテーブルがあり、その上に高価そうな品がズラリと並べられている状態だった。
「家具まであります!」
「ほしいのか?」
リーナの隣にいるセイフリードが尋ねた。
「そうではなく、お土産として持ち帰るのが大変ではないかと思って」
「その通りだ。こちらが家具の要望を出したのであればともかく、そうでないのに大型のものがあるのは迷惑でしかない。空気が読めない商人だ!」
「人形用の家具であれば良かったのですが」
「人形遊びをする年齢でもないだろうが」
「私はそうですけれど、アリシアさんには幼い娘がいますので」
「そういうことか」
セイフリードは順番にテーブルの上にある献上品を見ていく。
リーナも一緒についていく。
「リーナ、これはどうだ?」
宝飾品の前でセイフリードは立ち止まり、リーナに尋ねた。
「綺麗です」
「ほしいか?」
「いりません」
即答は無欲の証明。
だが、それだけにほしいものがわからないというマイナス面もあった。
「僕から見ると興味を引かないものが多い。リーナから見てどうだ?」
「献上されるだけあって立派な品が多いです。でも、買うかどうかで言ったら買いません」
献上品の扱いに変更されたのは正解だったと思えるような感想だった。
「取りあえずもらっておくのはどうだ? 女性なら宝飾品があっても困らない。たくさんあった方がいいのではないか?」
「でも、お土産ですよね? 取りあえずもらっておく品よりも、思い出になりそうな品の方がいい気がします」
「確かにそうだな。どれがいい?」
「まだわかりません。セイフリード王子殿下がどんどん進んでしまうので、軽く見ているだけでした」
「この部屋の中であれば自由にしていい。自分のペースでじっくり見てみろ」
「ありがとうございます!」
リーナはもう一度献上品を見て回ることにした。
だが、見れば見るほどすごいと思える高級品ばかり。土産にしたいと思えるものがなかった。
「メイベルさん、ちょっといいですか?」
リーナは自分と同じように献上品を見て回っていたメイベルに声をかけた。
「いいのがあった?」
「メイベルさんはどんなものがいいと思うのか知りたくて。参考にさせてください」
「リーナの感覚とは合わないものが多いようね。でも、無理することはないわよ。帰る途中の町や駅で買ってもいいでしょう?」
「そうですね」
「もう見なくていい感じかしら?」
「いえ、もう少し見ていたいです。見るだけでも勉強になりますから!」
どこかで聞いた言葉だと思いながら、メイベルもまた献上品を見ることにした。





