325 土産選び
王宮の一室。
国賓として滞在中のエルグラード第四王子セイフリードの要望により、ミレニアス有数の商人たちが集められた。
セイフリードは土産として持ち帰るような品を探していることも伝えられており、商人たちは最高級の献上品を多数持参した。
「バカベル、なぜ謁見を許した? 王族が軽々しく商人に会うわけがないだろう?」
セイフリードの考えでは、ミレニアス側が用意した品々をリーナと検分するだけのつもりだった。
「私からもそのことは伝えたのですが、ミレニアス側にそうしないと無理だと言われてしまったのです」
王宮に入る人も物も厳重にチェックされる。
最高級品は扱いにくいのもあって時間がかかり、商品だけよりも商人自身が献上品として持参した方が信用され、検分するまでの準備時間を短縮できることをメイベルは説明した。
「しかも、献上品になっている。なぜだ?」
「献上品であれば金銭の手続きがなくなり、何かあった時の賠償問題も発生しないそうです」
「無料で手に入ると言われ、得だと思ったのではないだろうな?」
「違います。ですが、都合がいいと思ったのは事実です。王子の命令で動いていますので、高額品ばかりになると思います。わざわざ揃えさせておいて、何も買わないというわけにはいきません。献上品ならそういったことを気にしなくて済みます」
「一理ある。だが、全部もらわないとなのか? 兄上の許可が必要になる」
「王太子殿下への確認はしていません。取りあえず、謁見は終わりました。献上品を検分しておき、その上で受け取るかどうかを決めるというのはどうでしょうか?」
セイフリードはしぶしぶといった表情で、献上品がある部屋に移動した。





