3 面接結果
隣の部屋には数人の女性がいた。
「おかけになって」
「はい」
リーナは空いている席に座った。
「まずは基本的なことですが、後宮がどんなところかわかりますか?」
「王族の側妃や寵姫、その候補者が住む所です。職業斡旋所でそう説明されました」
「それだけでは不十分です。説明するのでしっかりと聞くように」
後宮は王族の妻である側妃、妻ではないが王族の寵愛を受けている寵姫、その候補者が住む場所。
そのような女性に仕える者、後宮を維持するために働いている者が住んでいる。
今回募集されるのは下働き。
後宮のことをよく知らない者は、王族や高貴な身分の者に見染められる機会があるかもしれないと期待する。
しかし、下働きは一番下の階級。そのような機会は全くない。
むしろ、王族や高貴な身分の者に出会わないように生活したり仕事をしたりする。
万が一王族の前に姿を出してしまうとそれだけで不敬になってしまい、処罰や投獄の可能性もある。
そこで問題にならないよう自分の立場をわきまえ、後宮の規則を必ず守るようにということだった。
姿を見られただけで処罰や投獄なんて……。
後宮はとても怖い場所のようだとリーナは感じた。
しかし、そろそろ孤児院を出て行かなくてはならない年齢だと院長に言われている。
衣食住が保証されるような仕事につけるかわからない。
規則を守って問題を起こさないようにすれば、後宮で働ける。
大丈夫……きっと!
リーナは心の中で一生懸命自分を励ました。
そのあとも細かい説明が長々と続いた。
「ということで、仕事内容は貴族や裕福な者の屋敷で働くのと同じようなものですが、王家の方々が出入りする場所だけに重い責任があります。ですが、名誉でもあります。後宮にいる全員が王家のため、国のために尽くしています。説明は以上です。後宮で働きたいと思いますか?」
「はい! 働きたいです!」
リーナは即答した。
その様子は非常に働く意欲があるように見えた。
「わかりました。では、採用です」
「本当に? 採用してくれるのですか?」
あっさりと採用されたことにリーナは驚いた。
「長い説明をきちんと聞いていたからです」
大抵の者は説明が長すぎると感じ、表情や態度に出る。
だが、リーナはずっと真剣な表情で話を聞き続けた。
「真面目な証拠です。よって、採用します」
「ありがとうございます! 一生懸命頑張ります!」
「採用通知を渡すのでなくさないように。これを職業斡旋所に見せて、採用されたことを報告してください。家族や親しい者などに別れの挨拶を告げ、身の回りの物を手荷物にまとめて後宮に来てください」
大きな荷物や家具は持ち込めない。自分の手で持つことができる鞄で二つ程度が目安になる。
肩にかけたり背中に背負ったりするような鞄を利用すればもう少しは持ち込めると説明された。
「この採用通知が通行許可証にもなります。検問所も通れるでしょう。準備ができたら三日以内に後宮に来てください。わかりましたね?」
「わかりました!」
リーナは嬉しさでいっぱいになった。
リーナは職業斡旋所に採用の報告をしたあと、孤児院に戻った。
住み込みで働く場所が見つかったとわかり、院長は喜んだ。
「できるだけ早く荷物をまとめて出て行きなさい」
「はい」
部屋に戻るとリーナは自分の持ち物を確認した。
それらはリーナのものとなっているが、本当は孤児院のものだった。
孤児院にいる間だけリーナが使用できることになっており、自分のものとして勝手に持っていくことはできない。
とはいえ、着替えも何もない状態では困る。
リーナは使っている持ち物を整理すると、着替えなどの持って行きたいものについて院長に相談した。
院長は最低限の衣服や小物などを持っていく許可を出し、布製の手提げ鞄を餞別としてリーナにくれた。
翌日、リーナは荷物の入った布製の手提げ鞄を一つだけ持ち、後宮に向かった。





