294 情報分析(二)
「……アルヴァレスト大公女との面会予定はなかったはずだが?」
クオンは心配になった。
「アルヴァレスト大公領の様子を聞くため、パスカルを通して会いたいことを伝えました」
「部屋で会ったのか?」
「王宮の庭園を案内してもらい、世間話として情報収集をしただけです」
「アルヴァレスト大公女の二人はエゼルバードの信奉者だ。何もなかったとうのは正直信じられないのだが?」
レイフィールもかなりの心配をしていた。
「僕は見た目がエゼルバードに似ている。兄上のためだと思って感情を抑えた」
「できるのか?」
「できるに決まっている。兄上、午後は外出したいのですが許可をいただいても?」
許可を取るということは、王宮外へ行くということだった。
「誰とどこに行く?」
「インヴァネス大公子とローワガルン大公子がチューリフを案内してくれるそうです」
フェリックスとルーシェがセイフリードと友人関係を築きたいと思っていることは、クオンもレイフィールも知っていた。
「チューリフ観光に行くことにしたのか?」
「王立美術館です。僕が興味を持ちそうなものがあるということで、しぶしぶですが外出することにしました」
「セイフリードが興味を持ちそうなものというのは何だ?」
レイフィールが尋ねた。
「詳しくは知らない。ただ、貴重な本と情報があると聞いた」
「セイフリードを釣るには本と情報を用意すればいいのか」
「レイフィールが考えて用意するものには興味がない。兄上、午前中の会談はいかがでしたか?」
「良くなかった」
「どの点が問題になったのか知りたい」
レイフィールがそう言うと、クオンはヘンデルに視線を移した。
「ヘンデルから伝える」
「ミレニアス国王はかなり強気の態度と発言でした。話し合われた内容は想定内でしたが、終始ミレニアス都合のいい提案や主張ばかりで、こちらの提案に関しては否定する構えでした」
「具体的には?」
セイフリードが更に詳しい内容を尋ねた。
ヘンデルが詳細についても説明すると、レイフィール、セイフリード、パスカル、ローレンの表情は厳しいものに変化した。





