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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編

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288 退場処分



「やめなさい」


 エゼルバードが厳しい口調で言った。


「私のリーナにそのようなものを触れさせるわけにはいきません。下がりなさい」

「その女性は妹役というだけ? それとも恋人なのかしら?」

「どちらでもありません。ですが、大切にしています」

「大切にしているということは、特別な女性だということでしょう? どういう関係か教えてくれないの? 皆も知りたいと思っているはずだわ」


 マグーラの言葉は決して間違いではない。


 エゼルバードが友人で共に留学した側近たちを連れてくるのはわかるが、初めて見る女性であるリーナを連れて来たことに興味を持つ者は多かった。


「お前は宝飾品を取りはずしたが、捨てていない。下がれと言われただろう? 一旦外に行って捨てて来い」


 フレデリックはマグーラを退出させようとした。


「簡単に言わないで。宝飾品をホテルのごみ箱に捨てろというの?」

「俺は捨てろと言った。捨てることができなければ、茶会への出席は認めない。帰れ」

「白鳩会においてフレディに逆らうことは許されない。退会処分になりたくなければ早く捨てて来い」


 ハルヴァーが諦めろと促すような表情でそう言った。


「サルヴァータ公爵令嬢、エゼルバード様がご不快になられるようなことをしてはいけません。芸術を盾にすれば処罰されないと過信するのは禁物です」


 アベルは静かに手を動かし、護身用に持つ細い短剣を取り出した。


「エゼルバード様は下がるようにと言いました。それができないということであれば、私が手を下します。他国の王族だけに死罪は免れるので安心して実行できます。どうしますか?」


 アベルの様子は淡々としていたが、リーナは脅しではなく本気だと感じた。


「待て、アベル。茶会を血で穢すな」


 さすがに不味いと思ったフレデリックが口を挟んだ。


「さっさと部屋を出ろ。それだけで済む話だ。せっかくエゼルバードを招待したのに問題を起こすな!」

「フレディがいけないのよ。チューリップの葉の宝飾品の話をしたのでしょう?」

「俺ではない。宝飾品店の店員が話した」

「だったら、その店員を処罰しなさいよ。私は自分の作品をエーゼルに見て貰いたくて身に着けてきただけだし、エーゼルに説明もしたわ」

「私がそのような品を評価するわけがありません」


 エゼルバードはより強く不快さをあらわにした。


「出て行きなさい。でなければ、アベルが処分します」

「エルグラードの者の手を汚させないあたりが、エーゼルらしいわね」


 マグーラは長いドレスの裾をひるがえして立ち去った。


「このようなことになるとは思わなかった。すまない」


 フレデリックが謝罪した。


「何か飲み物を。席もほしいですね。立ったままではリーナが疲れてしまいます」

「隣の広間に席を用意してある。移動しよう」

「リーナ、行きますよ」

「はい」


 エゼルバードはリーナの手を引くと移動し始めた。


 ……相当怒っていそう。


 エゼルバードのエスコートには女性への配慮が感じられる丁寧さがあった。


 今はそれがない。


 リーナはお茶会が無事終わるよう祈るしかないと思った。


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