279 寵愛期間
レストランでの食事は、エゼルバードが留学した当時の思い出話が話題の中心だった。
留学時のエゼルバードは我儘な性格を今よりもずっと出していたが、大国の王子らしいということで熱狂的に崇拝する支援者が増えていった。
そこでフレデリックが代表になり、エゼルバードの後援会として白鳩会を作った。
エゼルバードの留学期間の間だけ活動することになっていたが、エゼルバードが帰国後も解散したがらない者達が多くいたため、社交サークルとして存続していることをリーナは知った。
「午後のお茶会は、白鳩会が主催するものです」
「エゼルバード様も会員なのでしょうか?」
「私は会員ではありません」
エゼルバードを後援したい者の集まりにエゼルバード自身が入ることはない。
「ですが、特別な招待客として出席します」
「白鳩会の規模はかなりのものだ。白鳥会とは比べものにならないが」
「白鳥会もあるのですか?」
「エルグラードにあるエゼルバードの後援会だ」
答えたのはロジャーだった。
「後援会というのはそもそもどんなものなのでしょうか?」
「エゼルバードの望みを叶えるために支援する者の集まりだ」
「望みを叶えてくれるのですか?」
「そうだ」
「何でもですか?」
「基本的には何でもだ」
「すごいです!」
リーナは目を丸くした。
「私の後援会は数多くあります。楽しい催しもあるので、リーナも出席するといいでしょう。きっと良い経験になります」
「はい!」
嬉しそうなリーナを見て、エゼルバードも嬉しくなった。
運命によって王族の娘にふさわしい教育を受ける機会が奪われてしまったが、これからは違う。
より多くのことを学ぶことでリーナは成長できると感じた。
私が導けば、リーナの長所も美しさもより強く輝くはず。
リーナを見つめるエゼルバードからは愛情が漂っていた。
それを感じ取った者は、エゼルバードの寵愛はいつまで続くのかと思っていた。





