275 白いチューリップ
「オパールという宝石は石の中にある輝き、遊色効果があるどうかで大きく分けられます。遊色効果があるものをプレシャスオパール、ないものをコモンオパールと言います」
プレシャスオパールの方が圧倒的に高価。
また、プレシャスオパールでも遊色効果が多いかどうか、その色合い、視覚的な美しさなどによって良し悪しが判別される。
「この中で気になるものはありますか?」
「これが気になります」
リーナが選んだのはチューリップの花びらの部分にホワイトオパールがあしらわれたイヤリングとネックレスのセットだった。
遊色効果が少ないため、石の白さが圧倒的に目立つ。
王族であるエゼルバードからみると、遊色効果が少ないオパールは無価値同然だった。
「もっと遊色効果が多いものにしてはどうですか?」
「でも、白い宝石は珍しいです。虹色の輝きが小さくて少ない方が素敵だなと思いました」
虹色の輝きが小さく少ない方がいい? 普通は逆だというのに……。
エゼルバードには理解しにくいことだった。
まさにリーナならではの感覚と嗜好。
そして、白いチューリップであることもまたエゼルバードにとっては気になる部分だった。
「チューリップのデザインがいいのですか?」
「ミレニアスといえばチューリップだと思ったので」
「そうですか……」
チューリップの花言葉は思いやり。
しかし、白いチューリップの花言葉は失われた愛。
「チューリップなら赤やピンクがいい」
フレデリックは、エゼルバードがチューリップの花言葉を気にしていると思った。
「白いチューリップの花言葉は失われた愛だ。不吉ではないか?」
「花言葉は一つではない。白いチューリップの花言葉には、新しい恋というのもある」
ロジャーがフォローするように言った。
「花言葉の起源を遡るのは難しい。国ごとに異なるのが普通であり、良いか悪いかの印象も違う。まだらがつくチューリップの花言葉は、疑惑の愛だ。オパールの遊色効果をまだらだと解釈すると悪い意味になる。考え出すときりがない」
「白いチューリップはダメだ。なぜこのような不吉な宝飾品があるのか理解できない」
それがフレデリックの見解だった。
「エゼルバードは花言葉を気にする方だ。なぜ、悩む? その必要はないはずだ。俺であればこの宝飾品は絶対に選ばない。エゼルバードも同じだろう?」
私はなぜ……悩んでいるのでしょうね?
いつもは悩まない。この宝飾品はダメだと言い、別のものを選ぶように言うだけ。
だというのに、そうしにくい何かがエゼルバードの中にあった。
「関係ない」
黙っていたセブンが口を開いた。
「エゼルバードは自分が気に入るかどうかが重要だと教えた。リーナが気に入ったのはこの宝飾品だ。白い石の宝飾品を贈ると考えるか、白いチューリップを贈ると考えるかの違いだろう?」
「エゼルバードの色は白だ。エゼルバードが贈るということであれば、白い宝石の品が相応しいと考えることもできる」
ロジャーもまた意見を出した。
エゼルバードがどう思うのか、どんな答えを出すのかに注目が集まった。





