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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第一章 召使編
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27 熱意の訴え

 リーナは仕事に励んだ。


 任された仕事についても一生懸命考えた。


 リーナの仕事は六カ所の掃除と巡回。


 召使いの基本給は十八万ギニーだが、リーナは査定で引かれ十六万ギニーのままだった。


 巡回が全てできるようになれば、召使いに相応しい仕事をしていると評価され、給料が十八万ギニーに増える可能性がある。


 リーナは早朝に掃除していたことを思い出し、元々の三カ所は早朝勤務で掃除ができないかと思った。


「セーラ様、早朝勤務をさせて下さい! そうすればもっと巡回ができます!」

「早朝勤務はできません」


 早朝時間における控えの間付き業務は侍女ではなく侍従の担当時間になる。


 早朝勤務で掃除をするには侍従側の許可が必要になるが、許可は出ない。


 セーラはそう説明した。


 だが、リーナは諦めなかった。


 イチゴ味のキャンディを食べて自らを励まし、奮い立たせた。


 侍女長に面会を希望した。


「侍女長、お願いです! 早朝勤務をさせてください! できるだけ早く借金を返済したいのです!」

「却下します。侍従側の許可が出ません」


 侍女長にも却下されたが、リーナはまだ諦めなかった。


 イチゴ味のキャンディを食べて勇気をふりしぼり、侍従の休憩室に行った。


「どうしても早朝勤務をしたいのです! 残業のせいで夕食や入浴に間に合わない時があります! 侍従長に面会するにはどうすればいいですか? 教えてください!」


 侍従は土下座するリーナに驚き、侍従長の元に連れて行ってくれた。


「侍従長、お願いです! 早朝勤務を許可して下さい!」


 リーナは土下座した。


「借金を返済するためには早朝勤務が必要です! 残業のせいで夕食や入浴に間に合わないのも困ります! どうかどうかお願いします!」


 リーナの訴えには熱意がこもっていた。


 理由もわかりやすい。


 わざわざ訴えに来るほど辛く追い込まれているのだろうと侍従長は思った。


 とはいえ、リーナが早朝勤務をするかどうかは侍従長には関係ない。


 侍女長側の権限だ。侍女長が駄目だというのであれば、駄目に決まっている。


 但し、掃除時間を早朝にすることに関しては考慮の余地があった。


 早朝に全ての控えの間を使用するようなことはまずもってない。


「緑の控えの間は急遽使用されることがあるので無理だ。それ以外は掃除時間を早朝に変更しても構わない」

「本当ですか?」


 リーナは驚いて上体を起こした。


「このことを侍女長に伝え、清掃部で変更するかどうかの検討をすればいい」

「はい! 寛大なご判断に心から感謝致します! ありがとうございました!」


 リーナは喜び、早速そのことを侍女長と清掃部長のメリーネに伝えた。





 数日後。


 青と黒の控えの間の二カ所については早朝勤務できることになった。


 夜間の仕事はできる限り男性が行うことになっている。


 女性であるリーナを夜に残業させるよりは、早朝勤務にした方がいいということになった。


 許可が出た!


 リーナは喜んだ。


 全てパスカルのおかげだと思った。


 イチゴのキャンディを食べると不安がなくなる。頑張ろうと思える。


 リーナの行動は他者から見れば勢いに任せただけ、無謀に思えたかもしれない。


 早朝からの勤務が増えただけ。むしろ、辛くなるかもしれない。


 だが、道は切り開かれた。


 リーナはまた早朝勤務をするようになった。





 早朝勤務は三時から。


 それより早いと深夜勤務になってしまう。


 三時以降でなければ、部屋の外を女性が歩いているのは違反ということだ。おかしいと思われ、警備に捕縛されてしまいかねない。


 リーナは三時ぴったりに部屋を出ると、青の控えの間へ急いだ。


 廊下を走ってはいけないことになっているが、この時間は基本的に誰にも会わない。


 一応は、急ぎ足だと言い訳できる程度の速さにした。


 青の控えの間のトイレ掃除を済ませる。未使用なので簡単だ。


 その後は黒の控えの間に行くのが常だったが、リーナはそれをやめることにした。


 周辺の巡回を優先することにしたのだ。


 これまでは空いている時間に一番から順番に巡回をしていた。


 だが、掃除時間毎に控えの間へ向かい、その後でまた巡回の続きに戻るのは効率が悪いと思った。


 そこで掃除する場所に合わせ、付近を巡回する。


 掃除をするために緑の控えの間に行く場合、巡回も緑の控えの間付近を集中して行うということだ。


 清掃部や食事に行く時もできるだけ担当するルートを通って巡回をしながら向かう。


 リーナは掃除と巡回を必死でこなした。





 そして、十七時。


 リーナの勤務時間はここまでだが、巡回が終わっていなければ残業だ。


 勿論、終わっていない。


 しかし、昨日よりも圧倒的に多くの場所を巡回できている。


 三枚目や四枚目の場所も一部だけ回っていた。


 三枚目と四枚目はまだポーラがしているため、無駄なメモになってしまうが、最終的には全部巡回する必要がある。


 二枚目を終えた時間は十八時過ぎだった。


 リーナは自分の考えた変更によって、二枚目までであれば相当な短縮が可能であることを確認した。


 目指すは巡回の制覇!


 三時間の勤務時間が増えたことを、最大限に活用しなければならない。


 リーナは業務ポストに書類を入れると夕食と入浴に向かい、早朝勤務に備えてすぐに寝ることにした。


 部屋には一人。話し相手もいない。睡眠を邪魔する音も灯りもない。


 リーナはすぐに夢の中へと入り込んだ。


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