265 甘い魅力
大体の荷物が片付いたところで、ミレニアスの侍女たちを下げ、リーナとメイベルは舞踏会用のドレスに着替えることにした。
「どうでしょうか?」
レーベルオード伯爵家から届いたティアラはいかにも名門貴族が所有している品と思えるような立派なもので、リーナは緊張していた。
「大丈夫よ。クラシカルなデザインがいかにも名門貴族らしいと思うわ」
ドアがノックされた。
「支度は済みましたか?」
現れたのは礼装姿のパスカルとエンゲルカーム卿だった。
「パスカル様、リーナ様の支度について最終確認をしていただきたく存じます。宝飾品ですが、こちらの品で大丈夫でしょうか?」
メイベルが伺いを立てると、パスカルはにっこりとほほ笑んだ。
「問題ありません。これはレーベルオードの格式の高さを感じさせるティアラです。妹を美しく仕上げてくれて感謝します。リーナ、行こうか」
パスカルはそう言うと、リーナに手を差し出した。
「お兄様、今夜はよろしくお願いいたします」
「大丈夫だよ。僕が守るからね」
パスカルはリーナの手を強く握りしめた。
「必ず僕を頼ってほしい。そうでないと、とても悲しくなってしまうよ」
「わかりました。お兄様を頼ります!」
「約束だからね?」
「はい!」
すごい……全然平気とは!
リーナとパスカルの様子を見ていたエンゲルカーム卿は内心驚いていた。
パスカルは若い貴族の女性に凄まじいほどの人気がある。
そのパスカルに優しく話しかけられると、大抵の女性はうっとりするか恥ずかしがってしまう。
懇願されるかのような口調だと、力が抜けて立っていられなくなるかもしれない。
離れて見ているだけで、パスカルの魅力にクラクラしてしまう女性もいる。
だというのに、リーナは全く動じず、元気よく答えていた。
さすが血のつながった妹だ。強い。頼もしい!
エンゲルカーム卿はリーナを高く評価した。
一方、
山盛りの砂糖菓子よりも甘いわ……。
パスカルの甘過ぎる雰囲気を感じ取ったメイベルは、心配過ぎて倒れそうな気分だった。





