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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編

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228 困惑(一)



 赤の応接間では、調査員たちがお茶を飲みながら、今回の調査に関する感想を述べていた。


「これまでとは全然違う」

「困ったことになった」

「想定外の状況ではある」


 行方不明になったインヴァネス大公の娘リリーナに関する調査は何度か行われたが、その結果は芳しくなかった。


 単純に人違いであればともかく、リリーナの偽物まで登場した。


 偽物を本物だと間違えてしまうと大変なことになってしまうため、ミレニアス王はかなりの警戒心を持っている。


 重臣たちも同じで、インヴァネス大公が現実的な判断をするのを待っていた。


 つまり、娘が生存している可能性を諦め、死亡したという事実を受け入れることを願っていた。


 十年以上の年月が経ち、ようやくインヴァネス大公が大きな決断をした。


 今回の調査によって本人ではないと確認された場合は、娘が生存している可能性を諦め死亡を確定させる。


 正式な埋葬地を選定し、墓地を定めることになった。


 ミレニアス王や重臣たちはようやくこの問題に決着がつくと安堵していた。


ところが、本物である可能性が高いと思えるような調査になった。


 このままでは、本物だと判断するのが妥当という報告をすることになる。


 しかし、それはミレニアス王や重臣たちにとって最悪な報告だった。


 なぜなら、ミレニアス王は確実に本人だと思えるような物的証拠がなければ、王族として迎えるのは難しいと考えている。


 調査結果の報告を本物としても、状況証拠しかないことを理由にしてミレニアス王は認めない。


 そうなれば、本物と信じ込んでいるインヴァネス大公が激怒するのは目に見えており、兄弟関係が最悪になるに決まっていた。


 そして、リリーナと思われる女性がエルグラードの国籍で、クルヴェリオン王太子の庇護下にあるということも、深く考慮しなければならないことだった。


「王族付きの侍女だからな……」

「レーベルオード伯爵家の養女になっている」

「かなりの庇護をしているのということは、エルグラードの干渉力が強いということだ」

「エルグラードの手先をミレニアス王家に迎え入れることになる」

「これから重要な交渉があるだけに大変だ」


 クルヴェリオン王太子の来訪は、ミレニアス王国の命運をかけた転機になると言われている。


 交渉が決裂すれば、エルグラードが大軍を投入した国境対策を強行するかもしれない。


 もしエルグラード軍が越境すれば侵略行為とみなされ、戦争に突入する可能性さえあった。


 ミレニアス王は溺愛する第三王女キフェラをエルグラード王太子妃、ゆくゆくは王妃にすることで、エルグラードとの強力な関係を末永く確保したいと考えていた。


「ただでさえキフェラ王女の件で問題になりそうだというのに……」


 ミレニアス王は溺愛する第三王女キフェラをエルグラード王太子妃、ゆくゆくは王妃にすることで、エルグラードとの強力な関係を末永く確保したがっている。


「インヴァネス大公の娘の調査をすることで機嫌を取っておくはずが、こんなことになるとは思わなかった」

「より問題が増えただけだ」


 突然、ドアが開けられた。


 びくりとした調査員の目に映ったのはインヴァネス大公の姿だった。


「密談の方はどうだ?」


 調査員たちは居心地が悪くなった。


「重要な話がある。先ほど、やはり本物だと思われるような事実が判明した」


 リーナは誰にも案内されることなく、母親の部屋や自分の部屋に行くことができた。


 ことをインヴァネス大公は話した。


「そして、ついに物的証拠が見つかりそうな証言が出た!」

「物的証拠が?」

「見つかったのではなく、見つかりそう?」

「どのようなことでしょうか?」

「リリーナの身分証の指輪の行方がわかった!」


 リリーナは身分証の指輪を常につけているように言われていた。


 しかし、成長によってだんだんと指輪がきついと感じるようになった。


 父親が帰って来た時にそのことを伝え、サイズを増やしてもらおうと思ったが、それまでずっとはめているのはつらい。


 大事なもので絶対に盗まれないようにしなければならないと教えられていたため、リリーナは自分だけが知る秘密の場所に身分証の指輪を隠した。


 これで安心だと思って眠っている時に誘拐されてしまったため、本人は身分証の指輪を持っていない状態。


 しかも、リリーナしか知らない場所に隠されていたため、誰も何も知らない状態だったことをインヴァネス大公は説明した。


「昔使っていた家具の隙間に隠したらしい。その家具が残っているなら、指輪もあるかもしれない。確認してほしいと言われた」

「それは……」

「すごい情報です!」

「その家具はあるのでしょうか?」

「家具がなければどうしようもありませんが?」

「家具はある。離宮に引っ越した時に、リリーナの使っていた家具は全て運んだ。いつ戻っても使えるように、全ての品をリリーナの部屋に揃えておいた」


 リリーナは行方不明のまま見つからなかったが、リリーナの使用品は大切な思い出の品だけに処分していない。


 保存してある家具を調べれば、身分証の指輪が発見できるかもしれなかった。


「身分証の指輪があれば、間違いなく本人だ! 本人しか知らない隠し場所にあったわけだからな!」


 調査員たちは言葉を失った。


 やはり本物のようだという予感が強まったが、それによってミレニアス王とインヴァネス大公の関係が最悪になる予感も強まった。


「とにかく、家具の中に今も指輪があるのかどうかを確認するしかない。フェリックス、フレディ、クルヴェリオン王太子の代理人としてエゼルバード王子、調査員の代表者が立ち会えばいいだろう。そうすれば、正式な物的証拠として認められるはずだ!」


 調査員たちは顔を見合わせた。


「恐れながら申し上げます。エルグラード側の立会人はクルヴェリオン王太子では?」

「クルヴェリオン王太子だけが先に王都に行けると思うのか? クルヴェリオン王太子が了承しても、歓待の準備が整っていないミレニアスが困るだけではないか!」


 インヴァネス大公は全くもってわかっていないと思った。


「だからこそ、あえてエゼルバード王子を代理人にしてもらう。エゼルバード王子は留学経験者でフレディの友人だ。先行して王都の様子を見にきたということでうまくおさめられる。クルヴェリオン王太子、それでいいだろうか?」

「エゼルバードと話し合う必要がある。問題なければ構わない」

「フレディもいいか?」

「エゼルバードが王都に行くというのであれば構わない。だが、行かないというのであれば、ウィルかゼクスを行かせる」

「そう言うと思っていた」

「お待ちください」


 別の調査員が口を開いた。


「エルグラードからの外交団の王都到着日は日程通りに行わないと不味いと思われます」

「その通りです。先ぶれを出したとしても、エゼルバード王子殿下を歓待する用意を十分に整えられるかわかりません。ミレニアス王の判断を待つために、エゼルバード王子殿下にお待ちいただくことになるかもしれません」

「到着日は一か二日程度のずれです。それを考えると、何もわざわざ先行して王都に戻る意味はさほどないのでは?」

「その通りです。日程通りに到着し、王への調査結果を報告する際、その件も合わせて確認するということでも問題ないと思うのですが」

「ほう、そうなのか」


 インヴァネス大公は挑発的な表情になった。


「重要な証拠品を確保するためには少しでも急いだほうがいいと私は考えた。だが、王都についてからゆっくりと調べればいい。その上で指輪が見つかれば、証拠品として十分通用する、認めるというのだな? 到着するまでに用意された偽物ではないと判断するのだな?」


 調査員たちは黙り込んだ。


 まずは調査。その結果に従って話し合い、答えを出すことになっている。


 予想した結果から答えを出すことはできない。


 そして、どうしても本物の娘だと認めさせたいインヴァネス大公が物的証拠を捏造した可能性があるとも言えない。


 気まずい空気が流れた。


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