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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編

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223 赤の応接間



「ここです」


 リーナは立ち止まったのは、玄関ホールの西側にある廊下を進んで三つ目の扉の前だった。


「確かにすぐだな」


 これだけ近ければ、十年以上前のことだとしても、覚えていてもおかしくない距離だとクオンは思った。


「ドアを開けてみてほしい。正解であれば、茶会の用意がしてある」


 リーナは怖くなった。


 扉を開けるだけだというのに、取っ手に手を伸ばしづらい。


「私が開ける」

「はい」


 クオンが豪華な金色の取っ手を引いて扉を開けた。


 赤を基調とした大広間、そして赤いソファセットや金の装飾が施された豪華なテーブルが置かれていた。


「ここが赤の応接間か?」

「そうだ! 赤の応接間だ! やはり、私の娘だった!」


 インヴァネス大公は高らかに宣言すると、リーナのそばに来て抱きしめた。


「これで証明できた! 誰が何と言おうと私の娘リリーナだ! この事実は覆せない!」

「リリーナ!」


 応接間の中で待っていたインヴァネス大公妃もリーナに駆け寄り、夫と交代してリーナを抱きしめた。


「おかえりなさい! ようやく戻ってきてくれたのね……とても長い時間が過ぎてしまったけれど、これからは一緒にいられるわ!」


 涙を流すインヴァネス大公妃に抱きしめられたリーナは驚いていた。


 自分はインヴァネス大公夫妻の娘ではない、もう調査は終わったと思っていた。


 この別邸に来るまでは。


 だが、今の状況は違う。インヴァネス大公夫妻の娘だと証明された。


 赤の応接間の位置を覚えていたことでそれが証明された。


 本当に? 私はインヴァネス大公夫妻の娘のリリーナなの?


 リーナの胸は喜びで溢れた。


 ようやく自分が何者なのかがわかった。隣国のミレニアスまで来たおかげで。


「クオン様……信じられません。でも、信じていいんですよね?」

「インヴァネス大公夫妻がそう言っている。その可能性が高いだろう」


 クオンは慎重に答えた。


 自分が信じていいと言えば、リーナは信じる。


 しかし、状況証拠だった。


 赤の応接間の場所を知っていたことは有力な証拠になる。


 だが、あらかじめ赤の応接間の場所を教わっていた、偶然当たった、エルグラード側が茶会の場所を調べておいたなどと疑われてしまう可能性がある。


 これまでの調査において、調査員はリーナを深く疑うような発言ばかりを繰り返していた。


 どんな証拠を見せても、認めたがらないかもしれない。


 クオンは警戒心を持たずにはいられなかった。


「クルヴェリオン王太子、曖昧な言動をする必要はない! 間違いなくリリーナだ!」

「そうですわ! 私たちの娘だと証明されました!」


 インヴァネス大公夫妻は確信していた。


「インヴァネス大公夫妻の判断ではそうだろう。だが、調査については調査員が判断するということだった」


 クオンは応接間の中にいる調査員たちに顔を向けた。


「これまでも証拠になりそうな証言があったというのに、調査員たちは否定的だった。中立で公正さを重んじなければならないというのに、偏見があるのではないか?」


 インヴァネス大公も調査員たちに顔を向けた。


「お前たちはどのように判断する? はっきりと言え!」

「インヴァネス大公殿下に申し上げます。調査の結果につきましては、話し合いをしたあとに決まることになっています。話し合いをしないことにはお答えできません」

「その通りです。まずは調査方法について問題がなかったかを話し合う必要があります」

「定められた手続き通りに進めなければ、正式な調査にはなりません」


 インヴァネス大公の眼光が鋭くなった。


 ミレニアスでは身分や階級が何よりも重視される。


 国王の命令による調査とはいえ、王族であるインヴァネス大公の怒りを買うべきではないことを調査員たちはわかっていた。


「ただ、有力な証拠だと感じました」

「赤の応接間に来ることができました」

「我々も驚いています」

「冷静な判断でなければ、王は納得しません。しばし、時間をいただきたく存じます」


 調査員たちの答えはインヴァネス大公夫妻を満足させるものではなかった。


 立会人になったフェリックスから、調査員たちは証拠があっても否定的、悪意を感じることさえあると聞いていたが、まさにその通りだと感じた。


 そして、調査員たちが明言を避けたのを見たクオンはやはりと思った。


 どんなに状況証拠を揃えても、調査員たちはそれでよしとはしない。


 調査員たちの役目は、リーナの証言を疑い、偽物ではないかと思える部分や理由を探し、ミレニアス王の意向に沿うような調査を進めることなのだと感じた。


 不穏な空気が漂っているのは、誰もが感じていた。


 フェリックスは父親の威圧的な態度に調査員たちが反感を募らせ、調査結果が余計に悪い方向に進むようなことになっては不味いと感じた。


「父上、ここにいる全員が、明らかになった事実に驚いています。心を落ち着けるための時間が必要でしょう。クルヴェリオン王太子やフレデリック王太子もいます。まずは茶会を開くべきです」


 インヴァネス大公は即答しなかった。


「……そうだな。客人を廊下でもてなすわけにはいかない」


 インヴァネス大公はフェリックスの提案を受け入れた。


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